2010.05.02 書評・創造への繋がり 11 『俳句への道』 /評者 深澤直人(デザイナー) 『俳句への道』 高浜虚子 著(岩波文庫 630円) 評者 深澤直人(デザイナー) 「客観写生とデザイン」 その人の言った「俳句はありのままの現象を詠うもの」という一言は、私にとって衝撃的であった。そして、それはデザイン観を大きく変えるきっかけとなった。私は俳句をやらないし、あまり理解もしていない。それまで俳句は、作者が心情や哲学、理想や時事などをもとに創作して詠いあげる、自己表現の詩であると誤解していた。つまり、心情が先で現象は心情に合わせたものであると思っていた。 その言葉を聞いた頃、私はデザインは主観的表現であるのか、あるいは自己の作品の客観的選択であるのか、というようなことを漠然と考えていた。個性や感情は意図的に表現せずとも感じ取れるものではないかと。そして、意図的な自己表現は醜いの