第二部「大正デモクラシー」圧殺の構図 電網木村書店 Web無料公開 2004.1.5 第八章 関東大震災に便乗した治安対策 2 正力自身も『悪戦苦闘』のなかで、つぎのように弁明している。 「朝鮮人来襲の虚報には警視庁も失敗しました。警視庁当局者として誠に面目なき次第です」 これだけを読むと、いかにも素直なわび方のように聞こえるが、本当に単なる「失敗」だったのだろうか。以下では、わたし自身が旧著『読売新聞・日本テレビ・グループ研究』執筆に当たって参考にした資料に加えて、それ以後に出版された新資料をも紹介する。いくつかの重要な指摘を要約しながら、正力と虐殺事件の関係の真相にせまってみる。 興味深いことには、ほかならぬ正力が「ワンマン」として君臨していた当時の一九六〇年に、読売新聞社が発行した『日本の歴史』第一二巻には、「朝鮮人暴動説」の出所が、近衛第一師団から関東戒厳令司令官への報告の内容とし