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NATROMの検索結果1 - 40 件 / 97件

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NATROMに関するエントリは97件あります。 医療社会medical などが関連タグです。 人気エントリには 『布マスクはないよりマシなのか? - NATROMのブログ』などがあります。
  • 布マスクはないよりマシなのか? - NATROMのブログ

    ■「子供のマスクは手作りを」 学校再開に向け文科省が呼びかけ - 毎日新聞という記事が出ていた。文部科学省が手作りマスクの普及を呼びかけたという。ただ、布マスクが新型コロナ感染症の予防に役立つかどうかは、微妙なところである。現時点では明確な結論は出せない。このエントリーでは、布マスクの感染予防効果を論じた研究、および現時点におけるWHOとCDCの見解を紹介し、その上で、私の個人的な見解を述べる。 布マスクの感染予防の研究、WHOとCDCの勧告 医療機関で働く医療従事者は、自らが感染することを予防するためにマスクを使用する。通常は、使い捨ての医療用マスクを使用するが、布製のマスクで代用可能かを検証したクラスターランダム化比較試験が行われた*1。論文によると布マスクについて行われた最初のランダム化比較試験で、私が調べた範囲内では布マスクの臨床における感染予防を評価した唯一のランダム化比較試験で

      布マスクはないよりマシなのか? - NATROMのブログ
    • 何も悪いことをしていなくても人々は病気になる - NATROMのブログ

      がんを治すことが証明された食事療法は、現時点では存在しない。がんになりにくい食事ならある程度はわかっていて、がんの患者さんについても、基本的にはそうした健康的な食事が推奨されている。詳しくは ■がん体験者の栄養と運動のガイドライン:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] を参照して欲しい。なにも特別なことはない。「健康的な体重へ減量し、その体重を維持しましょう」「野菜、果物、全粒穀物を多く含む食事パターンにしましょう」といったものだ。食べてはいけないものはない。当たり前だが、健康的な食事をしていてもがんになるときはなる。ましてや、がんを治す効果はない。 何度も書いてきたが、がんに対する厳格な食事療法は、効果が不明確なわりに副作用が大きい。単純に栄養の偏り(野菜ジュースを大量に飲むためほかの食事が摂取できない、など)が体力を落とす以外にも、自分の好きなものを食べられない、とい

        何も悪いことをしていなくても人々は病気になる - NATROMのブログ
      • ワクチンを接種しない人を批判してはいけない - NATROMのブログ

        新型コロナウイルスワクチンが、日本でも今年の2月から順次接種される予定だ。発症予防と重症化予防の効果は確かで、短期的な安全性も海外で数万人単位の臨床試験および千万人単位での実地での接種が済んでおりほぼ確認されている。重篤な副作用はあるが頻度は十分に小さく、害より利益が上回るのは明確だと私は判断し、順番が来た時点ですみやかに接種を受けるつもりである。 しかしながら、他者への感染予防効果については、効果は示唆されるものの、現時点では確実とは言えない*1。また、当然のことであるが1年以上を単位とした長期的な副作用の有無はまだわからない。ワクチンを接種するのをためらい、保留する人がいるのは当然のことだ。あるいは、どんなにまれであっても重篤な副作用が起きる可能性があるワクチンを接種したくない人もいるであろう。 どのような医療を受けるかを決める権利は本人にある*2。もちろん、ワクチンについてもそうだ。

          ワクチンを接種しない人を批判してはいけない - NATROMのブログ
        • 新しいニセ医学「新型コロナ否認主義」 - NATROMのブログ

          標準的な医学的知見を否定する名誉教授と市議会議員 日野市議会議員の池田としえ氏が、2020年6月8日に「新型コロナに迫る!」 *1と称して議会で質問をしたが、その内容に危惧を覚えたのでここで指摘する。端的に言えば、池田としえ氏は、YouTube等で徳島大学名誉教授・大橋眞氏が主張している「新型コロナウイルスは存在しない」というきわめて根拠に乏しい独自の説に基づいて質問を行った。動画*2を拝聴したところ、大橋眞氏の主張には問題点がいくつもあった。 池田としえ氏のfacebookより。「やはり、新型コロナウィルスは存在しない」。URL:http://archive.vn/SsLPH ほとんどの人がご承知であるが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は重症の肺炎を引き起こす。しかし、大橋眞氏は標準的な医学的知見を否定し、「PCR検査で測定しているのは、病原性のない常在性ウイルスである可能性

            新しいニセ医学「新型コロナ否認主義」 - NATROMのブログ
          • もし家族が肺炎になったら新型コロナの検査を要求するか? - NATROMのブログ

            COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス感染症)症例が福岡でも出ました。私の外来にも「新型コロナが心配」という患者さんがぼつぼつ受診しています。幸い、私の外来ではいまのところはどなたも肺炎にはなっておらず、現時点では検査は不要だとご説明し、ご納得を得られています。 たまに誤解している人もいらっしゃいますが、現在(2020年2月22日)では新型コロナの検査に、中国への渡航歴や感染者への接触歴は必須条件ではありません。そうした条件を満たしていなくても、入院を要する肺炎や医師が総合的に判断し新型コロナ感染症を疑う場合など、「昨今の国内外の発生状況を踏まえ、これらの地域に限定されることなく、医師が新型コロナウイルス感染症を疑う場合に、各自治体と相談の上で検査することになります」*1。 ネットでは「検査をしてくれない。要求しても断られる」という声を聞きます。自分や家族が病気のときに望む検査をして

              もし家族が肺炎になったら新型コロナの検査を要求するか? - NATROMのブログ
            • 患者家族とのトラブル - NATROMのブログ

              埼玉県ふじみ野市において、訪問診療をしていた医師が患者の息子に散弾銃で撃たれ死亡するという事件が起きた。患者である母親が亡くなったことがきっかけになったという。事件については報道でしか存じ上げないし、これから新事実が出てくるかもしれない。この記事は、医療職と患者家族の関係の難しさの一端について知ってもらうのが目的であって、個別の事件において真相はこうだったのかもしれないといった推測ではない。 また、以下に述べる事例は、私の見聞きした経験をもとに改変したものであり、事実そのままではない。仮に当事者が目にしたとしてそれが自分たちのことであるとはわからないようにまで変えてある。ただし、問題の本質については伝わるはずだ。ご理解をいただきたい。 患者さんがよいケアを受け、病状が改善することをご家族が願うのは当然だ。ただ、その願いがきわめて強い患者家族がいらっしゃる。介護のためにご家族が仕事を辞め、ず

                患者家族とのトラブル - NATROMのブログ
              • 「血圧200を放っておいたが問題なかった」などと放言する医者を信じてはいけない! - NATROMのブログ

                プレジデント2022.10.14号で「信じてはいけない!健康診断、医者、クスリ 最新版・コロナ対応 病院に頼らない生き方」という特集が組まれ、養老孟司氏と和田秀樹氏の対談が掲載されました。その対談から和田氏の発言部分を引用したツイートが6000件以上のリツイート、1.6万件以上の「いいね」がされました。 これ、もう答え出てるじゃん。 プレジデント 2022.10.14号 和田秀樹氏 pic.twitter.com/AW5M7xfsCK— のりのりもふもふ (@SFtFQjTAUuQzPVF) October 6, 2022 引用された和田氏の発言は「財政破綻した夕張市が結果的に社会実験になりました。市民病院が廃院になって、19床の診療所だけになり、しかも無料バス廃止で通院に1000円かかるようになり、多くの人が医者にかかれなくなった。市民の健康状態は悪化するのかと思われたが、ほとんどの病気

                  「血圧200を放っておいたが問題なかった」などと放言する医者を信じてはいけない! - NATROMのブログ
                • 化学物質過敏症に関して厚労省見解と異なるパンフレットが自治体で紹介される理由 - NATROMのブログ

                  先日、maruさんが発表したnoteが注目を集めました。そのnoteでは、多くの自治体が提供する化学物質過敏症に関する情報が、厚生労働省の見解とは異なる「厚労省研究班のパンフレット」に基づいていることについて注意を喚起しています ■「化学物質過敏症」の伝え方 自治体掲載の「厚労省研究班のパンフレット」は厚労省の見解とは全然違う|maru ■[B! 医療] 「化学物質過敏症」の伝え方 自治体掲載の「厚労省研究班のパンフレット」は厚労省の見解とは全然違う|maru 化学物質過敏症の疾患概念については議論があるところで、医学界で広く認められている病名ではありません。化学物質過敏症という病名は、海外において化学物質と因果関係があるかどうか不明の症状まで化学物質のせいにしてインチキ医療を行う医療者たちに利用されてきました。たとえば、化学物質過敏症の第一人者とされているウィリアム・レイ医師は、ホメオパ

                    化学物質過敏症に関して厚労省見解と異なるパンフレットが自治体で紹介される理由 - NATROMのブログ
                  • 「ファーストペンギン」って海に突き落とされる奴じゃないんだ… - NATROMのブログ

                    最近、「ファーストペンギン」という言葉をよく聞く。ペンギンの群れの中で、天敵がいるかもしれない海の中に最初に飛び込む個体のことで、リスクをとって挑戦する勇敢な行為を称えるポジティブな意味合いを持つ。だが、私はファーストペンギンという言葉からは異なる意味を連想してしまうのだ。 イギリスの生物学者、リチャード・ドーキンスは、「利己的な遺伝子」という著作において、生存競争に勝って生き残る遺伝子の性質は利己的であることを論じている。個体レベルの行動は利己的なこともあれば利他的こともあるが、利己的な行動の一例として、ドーキンスは海に飛び込むのをためらうペンギンの例を挙げている。 南極のコウテイペンギンで報告されているひきょうな行動についてなら、おそらくだれでも[利己的な行動だと]ただちに同意できるであろう。このペンギンたちは、アザラシに食べられる危険があるため、水際に立ってとびこむのをためらっている

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                    • 「論座」の新型コロナ感染症の記事から学べること - NATROMのブログ

                      「論座」に新型コロナウイルス感染症を疑う症状を経験したジャーナリスト、佐藤章氏による記事が掲載された。患者さんの視点で気持ちの推移やPCR検査の経験を伝える良い記事である。 ■私はこうしてコロナの抗体を獲得した《前編》保健所は私に言った。「いくら言っても無駄ですよ」 - 佐藤章|論座 - 朝日新聞社の言論サイト ■私はこうしてコロナの抗体を獲得した《後編》PCR検査の意外な結果、そして… - 佐藤章|論座 - 朝日新聞社の言論サイト ただ、医学が専門ではない方が書いたため仕方のないこととは言え、いくつか医学的な誤りが散見される。誤解が広まると感染防御の点から弊害が生じることが懸念されるため、ここで指摘しておく。 症状出現から1回目の抗体検査まで ことの経過は3月29日の深夜12時前に38度の発熱から始まる。適切に家庭内隔離が行われた後、2日間は37度5分前後と微熱が続き、4月1日には平熱と

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                      • 世界はゆっくりと良くなっている 日本の年齢別がん死亡率の推移 - NATROMのブログ

                        日本において、がんは死因順位の第1位である。がんにかかる人やがんで死ぬ人をゼロにすることはできないが、医学は進歩し、予防法も治療法も改善している。全世界でも日本でも、年齢別がん死亡率や年齢調整がん死亡率は徐々に減少している。ここでは日本の年齢別がん死亡率の推移をグラフで紹介しよう。引用はすべて■Cancer Over Timeから。 日本の小児のがん死亡率は減少している すべてのがんの死亡率でみると、日本の小児(0歳~14歳)のがん死亡率は、男女ともに1970年ごろをピークに、以降は減少し続けている。小児には白血病やリンパ腫などの血液系の悪性腫瘍が多い。これらのがんに対する化学療法(抗がん剤治療)は大きく進歩している。 日本の0~14歳の全がん粗死亡率(10万人年あたり)の推移、男女 日本のAYA世代のがん死亡率は減少している AYA世代とはAdolescent and Young Adu

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                        • 興和のイベルメクチン臨床試験は失敗ではない - NATROMのブログ

                          イベルメクチンはもともとは寄生虫に対する薬だったが、試験管内で抗ウイルス効果が確認され、新型コロナに効果があると期待する医療者もいた。興和株式会社が新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチンの第3相試験を行っていたが、このたび、主要評価項目に統計的有意差が認められなかったとの発表があった。 ■興和/新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「K-237」(イベルメクチン)の第Ⅲ相臨床試験結果に関するお知らせ 軽症の新型コロナ患者約1000人を対象に、イベルメクチン0.3~0.4 mg/kgを1日1回3日間経口投与した群とプラセボ投与群とにランダムにわけ、168時間(7日間)経過するまでに臨床症状が改善傾向にいたる時間を二重盲検下で評価した。興和の発表によれば、実薬群およびプラセボ群いずれの群でも投与開始4日前後で軽症化し、有意差は認められなかった。 医学界に与えるインパクトは小さい。本試

                            興和のイベルメクチン臨床試験は失敗ではない - NATROMのブログ
                          • 「コロラド先生」のツイッターアカウント凍結と過去の発言について - NATROMのブログ

                            積極的にHPVワクチンや新型コロナウイルス感染症について情報を発信していた「コロラド先生」*1のツイッターアカウントが凍結されたようである。異邦人氏のツイートを引用する。 コロナについて科学的見地から徹頭徹尾データに基づき素晴らしい発信を続けていたコロラド先生(@BB45_Colorado)のアカウントが、あろう事か凍結されてしまったようで閉口せざるを得ない。余りにも理不尽で暗澹たる気持ちにさせられる。コロナ死者数を嘲笑う人間が野放しでコレか。— 異邦人 (@Narodovlastiye) May 24, 2021 「徹頭徹尾データに基づき素晴らしい発信」をしていたかどうかについては大いに疑問だが、アカウント凍結は私にとって残念なことである。というのも、BB45_Colorado氏は過去にHPVワクチンについてきわめて問題のある発言をしていたが、その検証が困難になったからだ。わかっている範

                              「コロラド先生」のツイッターアカウント凍結と過去の発言について - NATROMのブログ
                            • 「治療する必要のないがんもある」 NATROM先生に聞く、がん検診の副作用と過剰診断の不利益 - CancerWith Blog

                              CancerWithでは、ピンクリボン月間に合わせて記事を公開しました。そこでは、「早期発見」「早期治療」の問題を腫瘍内科医の勝俣範之先生に詳しく伺いました。おかげさまで、SNSを通して多くの方に反応をいただき、患者の皆さまの熱量を感じることができました。 本記事では、以前より「過剰診断」の問題をブログやSNSで積極的に発信されている内科医名取宏(なとろむ)先生にインタビューを実施し、早期発見を訴え続けること、そして過剰診断の問題を深掘ります。 過剰診断って何? 患者にとっての不利益とは 検診したくなる医療者の視点 無下に断れない理由も 最もコスパがいいのは「規定の年齢になって検診を受ける」こと。自覚症状がない限り気にしない やり始めたらキリがない「がんの不確実性」 がん検診の「副作用」への理解が広まらない理由。ワクチンとの違い 次の記事 過剰診断って何? 患者にとっての不利益とは 二宮み

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                              • イソジンうがいで新型コロナの重症化予防という話はどうなったか追いかけてみた - NATROMのブログ

                                2020年8月の会見「うそみたいな本当の話」 新型コロナウイルス感染症の第四波の真っ最中で、とくに大阪府は厳しい状況だ。大阪と言えば、昨年2020年8月に大阪府吉村洋文知事が会見で「うそみたいな本当の話をさせていただきたい。ポビドンヨードを使ったうがい薬、目の前に複数種類ありますが、このうがい薬を使って、うがいをすることでコロナの陽性者が減っていく」と述べた。また、接待を伴う飲食店の従業員や医療介護者・介護従事者などに「ポビドンヨードうがい薬によるうがいを励行」を勧めた*1。ポビドンヨードを使ったうがい薬の代表的な商品がイソジンうがい薬である。会見はテレビで放送され、うがい薬の売り切れが続出したという。 ポビドンヨードに新型コロナウイルスを不活化する作用があるのは事実だ。ただ、それは試験管内、実験室内の話で、実地臨床の場において感染予防効果や重症化予防効果があるかどうかは別問題である。本記

                                  イソジンうがいで新型コロナの重症化予防という話はどうなったか追いかけてみた - NATROMのブログ
                                • 新型コロナに対するイベルメクチンのケースシリーズを発表してほしい - NATROMのブログ

                                  イベルメクチンに対する「熱狂」 一部の界隈で新型コロナウイルス感染症に対する抗寄生虫薬「イベルメクチン」への期待が高まっている。熱狂的であるとすら言える。「海外ではイベルメクチンが大きな成果を上げているのに日本で使用が制限されているのはけしからん」といった具合だ。反ワクチンや陰謀論(「安価なイベルメクチンで新型コロナが予防・治療できるとワクチンをはじめとした高価な薬が売れないので巨大な利権が妨害しているんだよ!!」)とつながっていることもあり危惧を覚える。 現時点ではイベルメクチンが新型コロナに効くことを示す良質な証拠はない。日本だけではなく、海外でも主な公的機関は臨床試験以外でのイベルメクチンの使用を推奨していないが、ごく当然のことである。「ワクチンは受け入れられたのに実績のあるイベルメクチンが受け入れらないのは不公平」という類の反論もあるが、イベルメクチンの偉大な実績は寄生虫疾患に対す

                                    新型コロナに対するイベルメクチンのケースシリーズを発表してほしい - NATROMのブログ
                                  • 「擬陽性(疑陽性)」と「偽陽性」は違います - NATROMのブログ

                                    新型コロナウイルス感染症に関連して検査の性能が話題になっています。本当は感染していないのに検査で誤って陽性という結果が得られることを「偽陽性」といいます。英語では"false positive"。この"false positive"を「擬陽性(疑陽性)」と呼ぶことがありますが誤りです。どちらも読み方が「ぎようせい」なのでうっかり間違いやすいですが、「偽陽性」と「擬陽性(疑陽性)」は、異なる用語です。漢字変換候補に「擬陽性」が先に上がることもあり、誤用の一因になっているようです*1。私は偽陽性を入力するときは「にせようせい」から変換するようにしています*2。 「擬陽性(疑陽性)」という医学用語もちゃんとあります。陽性とも陰性とも言い切れない、陽性に近い反応なので陽性を疑う、というのが擬陽性(疑陽性)です。具体的な例がわかりやすいでしょう。結核に対する免疫能を評価するためのツベルクリン反応検査

                                      「擬陽性(疑陽性)」と「偽陽性」は違います - NATROMのブログ
                                    • 和田秀樹先生、検診を受けていないほうが肺がん死が少ない研究ってどの研究ですか? - NATROMのブログ

                                      先日、『80歳の壁』など多くの著作で知られる医師の和田秀樹先生とX(元Twitter)で対話させていただく機会がありました。高血圧による脳出血のリスクや和田先生が自身のクリニックで提供している高額な医療のエビデンスについて質問いたしました。■和田秀樹氏に答えていただきたい3つの質問にまとめています。和田先生からは「これまでのやりとりを公開して、このような短いバージョンでない形で反論させていただきます」とのお返事をいただきました。まことにありがとうございます。約1か月間が経ちますが、いまだに「短いバージョンでない形での反論」がありません。もちろん、医学的正確さを心掛けれるならばそんなに早くは反論できないということもあると承知しています。不正確でもいい文章なら気軽に量産できます。私には信じがたいことですが、医学的に不正確な内容の本を大量に出版する医師もいます。読者の健康と命を印税に替えているよ

                                        和田秀樹先生、検診を受けていないほうが肺がん死が少ない研究ってどの研究ですか? - NATROMのブログ
                                      • 和田秀樹氏に答えていただきたい3つの質問 - NATROMのブログ

                                        和田秀樹氏は『80歳の壁』など、多くの著作で知られる医師です。毎日新聞医療プレミアの『「老い」に負けない ~健康寿命を延ばす新常識~』において、「私自身が200以上の血圧を何年も放っておいて平気だったように、今は血圧が200以上でもまず血管が破れることはない」と書いておられました*1。 高血圧は脳出血の介入可能な最大のリスク因子です*2。最適治療目標など細かい議論はあるものの、基本的には、血圧を下げる治療が、脳出血をはじめとした脳血管障害(脳卒中)や心筋梗塞を代表とする心血管疾患を減らすことについて専門家の間で議論はありません。和田秀樹氏自身が「200以上の血圧を何年も放っておいて平気だった」のが事実だとして*3、一般読者が「収縮期200mmHg以上の血圧を何年も放置しても平気なのだ。放置してよい」と解釈しうる文章を書くのは医師として不適切だと私は考えます。 そう考えたのは私だけではなかっ

                                          和田秀樹氏に答えていただきたい3つの質問 - NATROMのブログ
                                        • 「宝くじの誤り」 - NATROMのブログ

                                          「宝くじの誤り」とは、「中には大きな利益を得る人もいるかもしれない」という理由で利益が害よりも大きいことが証明されていない医療行為を容認する考え方を表すために私が提案したい言葉である。医療行為には不確実性がある。公的に推奨されている医療行為でも利益はなく害だけを被る人もいるが、集団全体では害よりも利益が大きいとされている。害よりも利益が大きいと十分に証明されていなかったり、逆に利益よりも害が大きいと証明された医療行為は推奨はされていない。 宝くじを購入する行為の金額の期待値はマイナス*1であり、宝くじを買った集団全体では損の方が利益より大きい。しかし、少数ながら、きわめて大きな利益を得る人もいる。宝くじを買う人たちのほとんどはそうしたことを承知の上で宝くじを買うのだろう。ならば、集団においては害が大きくてもきわめて大きな利益を得る可能性があるなら、推奨されていない医療行為を受ける自由だって

                                            「宝くじの誤り」 - NATROMのブログ
                                          • シックハウス症候群と化学物質過敏症は異なる - NATROMのブログ

                                            「化学物質過敏症」という疾患概念は公的には認められておらず、盲検法による負荷テストでは化学物質曝露と症状の関連は確認できません。化学物質過敏症とされる患者さんの症状が誘発される原因は化学物質ではないことが示唆されます。こうした化学物質過敏症の疾患概念に懐疑的な記事を書くと、「そうは言っても私は化学物質によって体調が悪化した」という声が寄せられます。 化学物質によって体調が悪化する患者さんの存在は否定していません。新築した家の建築材料や壁紙から出る化学物質(揮発性有機化合物)によって生じるシックハウス症候群はその典型的な事例です。お酒の強さに個人差があるように、特定の化学物質に対する耐性に個人差があることは当然のことです。Aさんには問題ない濃度の化学物質でもBさんには症状を引き起こすかもしれません。なお、化学物質だけではなくダニや真菌もシックハウス症候群の原因になります。 海外ではオフィスビ

                                              シックハウス症候群と化学物質過敏症は異なる - NATROMのブログ
                                            • 撤回された論文は根拠にならない - NATROMのブログ

                                              2023年8月からX(旧Twitter)にて、元杏林大学保健学部准教授の平岡厚さんと対話を続けています。HPVワクチンは安全で効果的というのが世界中の専門家のコンセンサスですが、平岡さんはHPVワクチンの深刻な副反応・薬害が相当規模で存在すると主張しています。 HPVワクチン接種の有無にかかわらず血液脳関門の異常で害が起きるのは当然 平岡さんが提示する仮説の一つは「日常的に抗体値を高くさせられている人は、血液脳関門に異常が生じた場合、通常なら中枢神経系に入らない物質が侵入して悪さをするのでは」というものです*1。しかし、私のみるところでは平岡仮説はとくに根拠がない思い付きに過ぎないように思われました。 「日常的に抗体値を高く」するのはHPVワクチンだけでなく、他のワクチンだって同じです。B型肝炎ワクチンはHBs抗体価を高くしますし、麻疹ワクチンは麻疹ウイルス抗体価を高くします。なんならワク

                                                撤回された論文は根拠にならない - NATROMのブログ
                                              • 因果関係も不明なのに「ワクチンの副反応が出やすい素因」を特定できるはずがない - NATROMのブログ

                                                2023年8月からX(旧Twitter)にて、元杏林大学保健学部准教授の平岡厚さんと対話を続けています。平岡さんは「HPVワクチンの深刻な副反応・薬害としての自己免疫性脳症が、相当規模で存在していると推測」しておられます。具体的にはワクチン接種者の「数千人に1人」が「POTS, CRPS, ME/CFS, 繊維筋痛症などの症状が入れかわり立ちかわり現れ、認知障害なども絡む」症状を呈するとしています。 平岡さんの主張の一つに、「接種を受けると副反応が出やすい素因」を持つ人をワクチン接種対象から外すことで問題解決が可能になるというものがあります。 →接種を受けると副反応が出やすい素因を持つ人がいることが分かるので、そういう人を接種対象から外す方向で、問題解決が可能になるのではと思います。私は、「HPVワクチンを接種すると重篤な副反応が出やすい素因を持つ人が接種を受けたことに起因する現象が起きて

                                                  因果関係も不明なのに「ワクチンの副反応が出やすい素因」を特定できるはずがない - NATROMのブログ
                                                • ABO式血液型の遺伝様式をめぐる2つの仮説 - NATROMのブログ

                                                  オーストリアのカール・ラントシュタイナーによってABO式血液型が発見され、輸血医学の基礎が築かれたことは有名だ。1930年にラントシュタイナーはノーベル医学・生理学賞を受賞した。輸血の歴史については ■「血液は生理食塩水で代用できるから輸血は必要ない…」そんな荒唐無稽なデマの裏事情を医師が解説 動物の血を輸血した昔から、人の血を安全に輸血できるようになった今まで | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) に書いた。輸血とは直接は関係ないが、ABO式血液型の遺伝様式が決定された歴史も興味深い。私は、もう20年以上も前、大学院生のころにはじめて知ったのだが、じつにエレガントに問題を解決しており、いつかこの話を書きたいと思っていた。数式がたくさん出てくるこの話は難解だが、個人ブログだし、少しぐらい難しくてもいいだろう。細かい数式はわからなくてもなんとなく雰囲気を感じていただ

                                                    ABO式血液型の遺伝様式をめぐる2つの仮説 - NATROMのブログ
                                                  • 『週刊現代』のジレンマ - NATROMのブログ

                                                    以前、マスコミからのインタビューに対する報酬について話題になった(■「孤独のグルメ」久住先生が報酬・校正無しの取材を断った件で浮上した、『無償による真実性』という原則とそれに対する疑問の声 - Togetter)。私も、ときにメディアから取材やインタビューの依頼を受けるが、報酬は発生したりしなかったりする。これまでの経験では、週刊誌系メディアでは報酬が発生するのに対し、新聞系メディアでは発生しないことが多い。 無報酬を原則とする言い分も理解はできる。あくまで私の経験の範囲内だが、平均すると、無報酬のメディアのほうが質の高い記事が多い。謝礼を払うと、謝礼目的の有象無象の情報が集まりやすいという面はあろう。週刊誌の医療記事では、「お前はいったい何の専門家だ」と問い詰めたくなるような「常連」のコメンテイターが記事の質を下げている。記事を書く方にとっては都合のよい「専門家」のコメントが得られ、コメ

                                                      『週刊現代』のジレンマ - NATROMのブログ
                                                    • 「低気圧の体調不良には五苓散が効く」のか? - NATROMのブログ

                                                      要約:「低気圧の体調不良」という病態は存在する。「低気圧の体調不良には五苓散が効くという研究」はあるが質は高くない。とは言え、実地臨床では五苓散のような漢方薬は有用である。 ちょちょんまゲさんから、「低気圧の体調不良には五苓散が効くという研究」について評価してほしいというご要望があった。 NATROMさん、お時間が許し、気が向いたらで結構ですので、こちらにある「低気圧の体調不良には五苓散が効くという研究があり」についてご評価をお聞かせ願えませんでしょうか。よろしくお願いいたします。https://t.co/SnxJXkvXjH— ちょちょんまゲ (@chochonmage) December 5, 2020 もともとは、■水素水や血液クレンジングなど『疑似科学』を科学的に評価している明治大学のウェブサイト Gijika がなかなか良い仕事していると話題にというTogetterまとめについた

                                                        「低気圧の体調不良には五苓散が効く」のか? - NATROMのブログ
                                                      • 食塩さんと名取宏(NATROM)との会話。主に甲状腺がんの過剰診断について。 - NATROMのブログ

                                                        Twitterにおいて、食塩(tableSalt0117)さんと議論になりました。お返事が長くなり、またTwitterの仕様上、やり取りがわかりにくくなりますので、詳細にはついてここでお答えいたします。まずは、食塩さんと名取宏(NATROM)の会話をTogetterでまとめました。漏れがないようにはしていますが、もし、漏れがありましたらご指摘ください。 ■食塩さんと名取宏の対話。主に過剰診断について。 - Togetter 以下、斜体は食塩さんのご発言からの引用です。食塩さんは、ここのコメント欄でもTwitterでも、どちらでお返事をなさってもかまいません。また、食塩さん以外の方でも、ご質問がある方は、コメント欄に書き込んでくださってかまいません(できればコメント欄のほうがありがたいです)。他の方々にも参考になるように、重要な部分は強調いたしました。 >「エビデンスはある」とおっしゃるんで

                                                          食塩さんと名取宏(NATROM)との会話。主に甲状腺がんの過剰診断について。 - NATROMのブログ
                                                        • 裁判事例から学ぶ健康情報の読み方 - NATROMのブログ

                                                          はじめに サプリメントや健康食品を摂取している患者さんはたくさんいらっしゃいます。サプリメントや健康食品は肝障害などの副作用がまれながら生じることもある上に、多くは効果があるかどうかわかっていませんので、臨床医としてはあまりお勧めできません。一方で、安心感が得られるといったメリットもありますので、臨床の現場ではあまりに高価でないものは消極的に容認されているといったところです。 サプリメント・健康食品は医薬品ではありませんので、効果効能を謳って販売することは法律に触れます。しかし、あからさまに効果効能を謳うことなく、しかしあたかも効果効能があるかのように消費者に誤認させる宣伝方法がしばしば使われています。そうした宣伝に対して、専門家が「科学的に効能が実証されたとは言えない」とメディアで注意を促すことは有用だと私は考えます。 ところが、ある企業が販売している飲料水(仮に「A飲料水」としましょう

                                                            裁判事例から学ぶ健康情報の読み方 - NATROMのブログ
                                                          • 過剰診断が多いほど検診から恩恵を受けたと感じる人が多くなる「ポピュラリティパラドクス」 - NATROMのブログ

                                                            乳がん検診はがん死を減らすが過剰診断も生じる マンモグラフィーによる乳がん検診は乳がん死を減らす一方で過剰診断も生じる。つまり検診がなければ生涯無症状で乳がんと診断されなかったはずの人も乳がんだと診断してしまう。乳がん検診は複数のランダム化比較試験が行われており、過剰診断の割合はおおむねわかっている。以前、ある研究に基づいた『■検診で乳がんが発見された人が100人いたとして』という記事において、検診で乳がんと診断された人のうち過剰診断は約29%だという数字を紹介した。検診のおかげで乳がん死を免れる人は約3%、検診で乳がんが発見されても乳がんで亡くなる人も約3%、残りの約65%は検診を受けなくてもいずれ症状が出て乳がんと診断されるが、診断されてから治療しても乳がん死しない人である*1。 この記事の感想に「私は運よく検診で乳がん死を免れた3%であったのだろう」というものがあった。この感想を述べ

                                                              過剰診断が多いほど検診から恩恵を受けたと感じる人が多くなる「ポピュラリティパラドクス」 - NATROMのブログ
                                                            • HPVワクチンが子宮頸がんを増やすというニセ情報を検証してみた - NATROMのブログ

                                                              子宮頸がんの原因の大多数はHPV(ヒトパピローマウイルス)の慢性感染であり*1、HPVワクチンによってHPVの感染を防ぐことで子宮頸がんを予防することが期待できる。もちろんワクチンである以上、100%の安全性は保障できず、頻度はともかくとしてHPVワクチンが重篤な副作用を引き起している可能性は否定できない。ニセ医学に頼らなくてもワクチンの害について議論することはできるのだが、一部のというか、多くの「反HPVワクチン」論者は完全にニセ医学側に立っている。不幸なことだ。 彼らの定番の「デマ」の一つが「HPVワクチンは子宮頸がんを減らすどころかむしろ増やしている」という主張だ*2。一般の人たちだけではなく、科学コミュニケーションや 科学ジャーナリズム論を大学で教えている先生も「釣られている」*3。何らかの対抗言論が必要だと考えた次第だ。 HPVワクチンがHPVの感染を防ぐこと、および、前がん病変

                                                                HPVワクチンが子宮頸がんを増やすというニセ情報を検証してみた - NATROMのブログ
                                                              • 米CDCのインフルエンザ流行状況のグラフが興味深い - NATROMのブログ

                                                                米CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は季節性インフルエンザの流行状況のレポートを毎週更新している。定期的にウォッチしているがなかなか興味深い。 ■Weekly U.S. Influenza Surveillance Report | CDC インフルエンザの流行状況を正確に把握できる単一の指標はなく、さまざまな指標が公開されているが、今回はその一つである「全死亡者数に占めるインフルエンザおよび肺炎による死亡者数の割合」に注目しよう。たとえばある週の全死亡者数が6万人、インフルエンザによる死亡が1500人、肺炎による死亡が4500人だと、全死亡者数に占めるインフルエンザおよび肺炎による死亡者数の割合は、(1500+4500)/60000 = 10%になる。 死亡率(一定期間の間の人口当たりの死亡数)を計算するには総人口の情報が必要だが、死亡者数の割合だと死亡統計だけから算出できる。肺炎に

                                                                  米CDCのインフルエンザ流行状況のグラフが興味深い - NATROMのブログ
                                                                • 抗がん剤を否定する自称医師のツイートへの注意喚起 - NATROMのブログ

                                                                  抗がん剤治療は臨床的に効果が確認された標準治療である ある自称医師が術後補助化学療法(がん組織を外科的に切除した後の抗がん剤治療)を否定するツイートしており、現時点でリツイートは1600件を超え、いいねも7000件を超えています*1。ですが、かの自称医師のツイートは誤りです。いくつものがんで、術後補助化学療法ががんの再発を減らすことが臨床試験で確認されており、世界的に標準治療となっています。たまに「抗がん剤治療が行われるのは日本だけ」というデマを散見しますが、たとえば"adjuvant chemotherapy"(術後補助化学療法)で検索してください。いまは自動翻訳の精度も上がったので騙される人は減っていると思います。 自称医師のツイートは「がんの手術後に微小な取り残しがあるといけないと医師は抗がん剤を勧めるが、がん細胞はふだんから1日5000個はできているのだから全員に抗がん剤を使わなけ

                                                                    抗がん剤を否定する自称医師のツイートへの注意喚起 - NATROMのブログ
                                                                  • 「がん死亡数が増え続けているのは先進国では日本だけ」は誤り - NATROMのブログ

                                                                    がんに関する不正確な情報の一つに「がん死亡数が増え続けているのは先進国では日本だけ」「がん死亡数は欧米では減っているが日本だけ増加し続けている」というものがある。「抗がん剤は害しかない」「がん検診は無駄だ」「残留農薬や添加物が多い食事が原因だ」とかいったニセ医学的な主張と同時に言われていることもしばしばだ*1。 日本のがん死亡数増加の主因は高齢化である。他の要因が変わらなくても高齢者の人口が増えれば、がんで死亡する人の数は増える。生活習慣や公衆衛生、医療環境が改善され、他の病気でなかなか死ななくなる一方で少子化が進み、人口全体が高齢化すると、相対的にがんの死亡数や粗死亡率*2は増える。 一方、高齢化の影響を補正した年齢調整死亡率は、他の先進国と同じく、日本でも減少している。ただ、「がん死亡数が増え続けているのは先進国では日本だけ」というデマに対抗して高齢化の影響を持ちだすと、「他の先進国で

                                                                      「がん死亡数が増え続けているのは先進国では日本だけ」は誤り - NATROMのブログ
                                                                    • ワクチン接種割合からワクチンの効果を評価するときに気をつけること - NATROMのブログ

                                                                      新型コロナによる重症者や死亡者中に占めるワクチン接種者の割合についての報道が増えてきた。たとえば、 ■その数字がワクチン接種を促すか──6月に死亡した米コロナ患者の「ワクチン未接種率」が明らかに(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース という記事によれば、「(アメリカ合衆国)国内で6月に新型コロナウイルスによって死亡した人の99.2%はワクチンを接種していなかった」とある。もちろん99.2%という数字だけではあまり意味がなく、比較の対照が必要だ。仮に死亡しなかった人でも99.2%がワクチンを接種していなかったとしたら、新型コロナによる死亡とワクチン接種には関連があるとは言えない。 記事では「18歳以上のアメリカ人成人の67%が少なくとも1度目のワクチンを打ち終えており、58%が2度目の接種も終えた」という数字も紹介してある。集団中においてワクチン未接種者の割合は30%強であるのに対

                                                                        ワクチン接種割合からワクチンの効果を評価するときに気をつけること - NATROMのブログ
                                                                      • PCR検査は感染症の診断に広く使われている - NATROMのブログ

                                                                        ニセ科学によく見られる特徴の一つに「標準的な学説の一つを否定するに留まらず科学の広範囲な分野を否定する」というものがある。そしてしばしば、ニセ科学の信奉者はそのことに無自覚だ。たとえば、千島学説は、別名を腸内造血説と呼ばれ、「造血の場は骨髄ではなく腸である」だとするニセ科学だが、つきつめると千島学説は現代生物学のほぼすべてを否定していることになる。しかし、千島学説支持者はそのことをわかっていない。 単に造血の場は腸である、というだけではなく、赤血球は造血幹細胞が細胞分裂・分化してできるのではなく消化された食べ物が変化して生じる、というのが千島学説の中心的な主張だ。食べ物から赤血球ができるとして、いったいヘモグロビンはどこから現れるのか?定説ではヘモグロビンの遺伝情報はDNAにコードされており、mRNAへ転写され、ポリペプチドに翻訳される(高校生物学で習ったように記憶している)。もちろん、食

                                                                          PCR検査は感染症の診断に広く使われている - NATROMのブログ
                                                                        • 「過剰診断とは治療不要の病気を診断すること」と説明しないほうがいいかもしれない - NATROMのブログ

                                                                          がん検診の文脈で広く受け入れられている過剰診断の定義は「治療しなくても症状を起こしたり、死亡の原因になったりしない病気を診断すること」である。この定義では、治療が必要かどうかには触れられていないが、治療しなくても症状や死亡の原因にはならないのだから、当然、治療は不要だ。そのため、「過剰診断とは治療が必要ではない病気を診断すること」と説明されるときがある。この説明でも間違ってはいないが、ときに誤解を招きうる。 有効ながん検診でも、がんや前がん病変と診断された中には一定の割合で過剰診断が含まれる。たとえばマンモグラフィーによる乳がん検診では、検診で発見・診断されたがんの15~30%が過剰診断、つまり、治療しなくても症状や死亡の原因にはならないものだ*1。しかし、実際には検診で診断された乳がんはほぼ全例治療されてしまう。なぜなら、診断した時点ではどの乳がんが過剰診断かどうか、区別できないからだ。

                                                                            「過剰診断とは治療不要の病気を診断すること」と説明しないほうがいいかもしれない - NATROMのブログ
                                                                          • 書評『「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論』 - NATROMのブログ

                                                                            「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論 (単行本) 献本御礼。タイトルの通り、色覚についての自然科学、および、「色覚異常」*1と社会との関わりについて書かれた本だ。サイエンスの部分(第2部)も興味深いが*2、その部分の書評は他の方に任せて、社会との関わり、とくに医師が関わる部分について述べる。 かつて学校で先天性色覚異常の検査が行われていた。私も小学生のころ学校で色覚検査を受けたことがある。2003年に学校での色覚検査は学校健診の必須項目から削除されたそうだが、検査に使う石原式色覚異常検査表を見たことがある人は多いだろう。その後、私は医学部に入学したが、当時、色覚異常でも受験資格があったどうかは記憶にない。当事者でなければ気にせずにいられたわけだ。医学部では眼科学は学ぶが色覚異常はさほど深くは学ばない。むしろ遺伝学に関連して、ヒトの伴性遺伝の例として学んだことをよく覚

                                                                              書評『「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論』 - NATROMのブログ
                                                                            • 「線虫がん検査」の感度・特異度は過大評価されている - NATROMのブログ

                                                                              上部消化管内視鏡やCT検査など、がんの検査には一定の苦痛やリスクを伴うものが多いです。もし、微量の血液や尿でがん検査ができれば素晴らしいことです。すでに商業化されている検査法の一つに尿1滴で15種類のがんリスクがわかると称されているがん線虫検査(N-NOSE)があります。 線虫ががん患者の尿に反応すること自体は事実だとみなしていいでしょう。科学的には興味深い現象で、研究が進むことを願っています。ですが、臨床の現場におけるがん検査の使用に耐えうるほどの性能があるかどうかはわかっていません。とくに、がん検診、つまり無症状の人たちを対象に使用するのは時期尚早です。 まず第一に、がん線虫検査を受けると、受けない場合と比較して、がん死亡率が減少するかどうか検証されていません。付け加えて、がん検診を受けるような集団における検査の性能もわかっていません。検査の性能は、感度や特異度で表されます。感度はがん

                                                                                「線虫がん検査」の感度・特異度は過大評価されている - NATROMのブログ
                                                                              • yunishio on Twitter: "「化学物質過敏症の権威がホメオパシーの有力者だから、化学物質過敏症はニセ科学」とご高説を賜ったNATROMさんのお言葉と思えば十年一日の観があるな。🙄 →「グラフ捏造はニセ医学…そうだとして、「産婦人科学はニセ科学」はさすがに雑… https://t.co/V30uwioVQ9"

                                                                                「化学物質過敏症の権威がホメオパシーの有力者だから、化学物質過敏症はニセ科学」とご高説を賜ったNATROMさんのお言葉と思えば十年一日の観があるな。🙄 →「グラフ捏造はニセ医学…そうだとして、「産婦人科学はニセ科学」はさすがに雑… https://t.co/V30uwioVQ9

                                                                                  yunishio on Twitter: "「化学物質過敏症の権威がホメオパシーの有力者だから、化学物質過敏症はニセ科学」とご高説を賜ったNATROMさんのお言葉と思えば十年一日の観があるな。🙄 →「グラフ捏造はニセ医学…そうだとして、「産婦人科学はニセ科学」はさすがに雑… https://t.co/V30uwioVQ9"
                                                                                • 新薬に対する熱狂の弊害 - NATROMのブログ

                                                                                  新型コロナウイルス感染症に対する治療薬の評価がぼちぼち出つつある。トランプ大統領が推したことでも注目を集めたヒドロキシクロロキンはもともとは抗マラリア薬で、自己免疫性疾患にも使用されている。安価な経口薬で、使用実績が多く副作用の情報も把握されており、ヒドロキシクロロキンが新型コロナに効くなら大きな助けになったはずだが、残念ながら最近は旗色が悪い。 最近の報告だと、軽度から中等度の新型コロナウイルス感染症に対し、標準ケア、標準ケア+ヒドロキシクロロキン、標準ケア+ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシンの3群を比較した、オープンラベル(非盲検)、ランダム化比較試験において、15日目の患者の臨床状態に有意差は見られなかった*1。参加者の合計は665人、それぞれの群は217~227人。アジスロマイシンは抗菌薬の一種で、併用するとウイルス減少に効果的だったという小規模な先行研究があった。 もちろんこ

                                                                                    新薬に対する熱狂の弊害 - NATROMのブログ

                                                                                  新着記事