ここのところ、毎日、「小説家になろう」で『無職転生』を読んでいるのですが、いやー、おもしろい。いままでもおもしろいと思っていたし、そう書いてきたのだけれど、おもしろさの質が一段上に上がった気がします。 いま第六章の終わりまで来ているのですが、このエピソードで主人公は決定的に変化します。ネタバレなので書けませんが、ある登竜門をくぐり抜けるわけです。これがね、なかなか興味深い。 この小説を読んでいて強く思うのは、ひきこもりの妄想的な世界観と現実の世界とはやはり違っているのだということです。ひきこもりが想像する世界が「一部のパワーエリートがひたすらに弱者を虐げている」という単色のイメージで塗り込められているのに対し、現実の世界は、豊かで、残酷で、美しく、醜く、鮮やかで、繊細と、対立しあう概念の豊かなグラデーションのなかに存在しているわけです。