あまり人に話したことはないけれど、ぼくは小さな島の生まれだ。高校に上がるまで、そこで暮らしてきた。今日は少し、思い出話をしてみようと思う。 正直いって、柄のいい島ではなかった。街の半分が釣り人用の民宿で、あとは売春宿を中心とした小さな歓楽街で占められていた。ぼくが育ったのは、歓楽街の中でもさらに小さな界隈、わいせつ魚拓屋の界隈に生まれ、育った。 あなたは、わいせつ魚拓というものを知っているだろうか。まったく文字通りのもので、女性の秘所に墨を塗りつけ、半紙に写しとるのだ。あるいは最近のわいせつ物の企画などで見ることがあるかもしれない。けれど、ぼくの島のわいせつ魚拓には歴史があった。少なくとも村の古老たちはそう言う。島が今のような形になるずっと前、ふざけた釣り人たちが女を買ってふざけて魚拓をとるずっと前からあったのだと。 その証拠か、村の作った観光案内にも載っていないけれど、わいせつ魚拓の神事