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ブックマーク / lleedd.com (9)

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 本を書くということ

    ここの所ずっと書籍の原稿に追われていたので、ブログを更新することができませんでした。しかし、ようやく書き終わりつつあります。完成間近ののタイトルは、「カーボン・アスリート  —美しい義足に描く夢」。この3年間ずっとやってきた義足デザインプロジェクトの活動記録です。 自分は文章がうまいとは決して思いませんが、多くの人が読みやすいと言ってくれます。しかしそもそも、文章の読みやすさとは何でしょうか。 小説家の平野啓一郎さんは、「小説を売ろうとすると結局はマーケティングの話にしかならないけれど、小説にデザインの発想を導入することで新しい書き方ができるのではないか。」と提言しています。純文学として読者に伝えたい重たいテーマには、今の読者はなかなかじっくりとつきあってくれなくなっているので、リーダビリティということ念頭に置いて小説をデザインしているそうです。 これは面白い考え方だと思いました。製品デ

    termin2
    termin2 2012/06/07
  • 山中俊治の「デザインの骨格」

    チタンという金属はとても貴重なものだと思われています。でも実は、地球の表面付近にある元素では9番目に多い元素で、銅の百倍ぐらいあるんだとか。チタンは金属の中でも特に非強度が高く(軽くて強い)、硬いのに折れにくく、酸にも強く、海辺にあっても錆びない、人の肌に触れてもアレルギーを起こさないなど、いわゆる生活用品や建材として最適の特性を備えた、金属の優等生です。にもかかわらずご存知のように、使われているのは高級時計やゴルフのヘッド、航空機の部品など、高級品や高機能部品ばかり。理由は高価だから。ふんだんにあるのになぜ高価なのでしょう。 問題は作るのが難しいということです。自然界には酸素をはじめ他の元素と非常に強固に結びついた状態で存在するため、引きはがして純チタンにしようとするとエネルギーを大量に使います。ようやく純チタンを手に入れても、硬くて粘りがあるので削るのも曲げるのも難しく、高熱では酸素や

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » Mac Book Airの解剖

    これをやったのは約1年前、Mac Book Air が発売されて間もない頃のことです。ある記事が賛否両論を巻き起こしていたので、自分の目で確かめてみたくなり、「骨」展の企画にもきっと役に立つと信じて、新品を分解しました。 実際に分解してみて、私はこのマシン内部のあまりの美しさに息をのみました。アルミのボディの内面は工芸品のような形状と質感に仕上げられており、ツールマーク(コンピュータ制御のマイクロドリルで削りだして製作された痕跡)が見事な紋様となっています。バッテリーはボディの内壁に合わせて曲面に成型され、ネジのタップも曲面に沿って斜めに切ってあるのです。無駄かどうかなどという次元ではなく、設計の常識から言うと信じられないような美意識が内部にも行き渡っていました。 すみません、少し専門的すぎました。まあ簡単に言うとおなかの中まできれいに磨いてあったんです。この設計思想が後のMac Book

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » いまさらながらiPhone 3Gのボディの秘密に気がつきました

    分解大好きお姉さんの万里子さんが、不要になったiPhone 3Gを分解しました。その結果、今更ではありますが、ひとつ発見がありましたので報告します。 上の写真は、3Gのプラスチックボディの内側です。よく見ると通常のプラスチック部品ではあまり見られないツールマーク(縞模様のような溝)が見られます。この溝は、ボディの内側をNC加工(コンピュータコントロールのドリルによる切削)した痕跡です。 ユニボディと言われるMacBook ProやAirは、アルミニウムの固まりから削って内面を作るので、ボディの内側全体がNC加工のツールマークに覆われています。これはiPADも同じです。しかし、プラスチックの部品の場合は、型に始めからかなり複雑な形状を作り込むことができるので、後から加工することは通常行われません。 にもかかわらず3Gのボディの内側は、全体の5分の一ぐらいの面積がツールマークで覆われていました

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ぐっばい。スティーブ・ジョブズ

    会いたいと思っていた人に、結局、会えないまま終わってしまった。悲しいのかどうかさえわからないが、確かな喪失感がある。 スタンフォードの卒業式での伝説的なスピーチは、iPodでいつも聞いていた。 Connecting dotsという美しい響きの言葉から始まる「過去から見れば、ばらばらにしか見えないことも、未来から振り返って見れば見事につながっている」という一節を聞いては、行き当たりばったりだった自分の若い頃を思い、それをつなげてみた。 「私は偉大なタイポグラフィーが偉大たる所以を学んだ…」というくだりに込められた繊細なものへの愛が好きだった。 「毎日今日が最後の日だと思って生きれば、ある日それは当になる」には笑った。 「君たちの時間は限られてる。人生を無駄にしては行けない…」以下の言葉にはいつも奮い立たされた。 こんなに何度も何度も聞いたスピーチは他にない。部分的に暗唱できるほどだ。このス

    termin2
    termin2 2012/02/07
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 幻のMac OS

    もう15年ほど前になります。私たちはアップルの拠、クパチーノでインタフェース開発グループの人たちを前にプレゼンテーションを行っていました。その時に提案したのがこのDrawingBoardというMac OSのインターフェースデザインです。 提案メンバーは私と、猪股裕一さん、戸田ツトムさん、宮崎光弘さん、須永剛司さんの5人。プレゼンは大成功で、直ちに開発がスタート。 ご覧のように、あらゆるパーツが手書き風のOSインターフェースを提案したので、実装はとても手間のかかる作業でした。すべてのパーツをデザインするのにほぼ丸1年。一応私がプロジェクトのディレクターを務め、コンセプト段階では猪股さんや須永さんに協力いただき、ディティールに戸田さんと宮崎さんの手が入っています。 アップル・コンピュータ社との仕事はとても楽しいものでした。彼らのインターフェースデザインに対する情熱と誇りや、しっかりとした設

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 放射能のビジュアルイメージ

    まだ、地震で被害を受けた原発を押さえ込むための努力が続いていますが、報道を見ながら家族と話してみると、「放射能」という言葉が表す物の実体をイメージすることの難しさを改めて思いました。専門家でもなんでもないのですが、家族に説明するつもりで放射能についての私なりのビジュアルイメージを描いてみます。 「放射能」という不思議な言葉は、ラジオ・アクティビティの訳語として作られました。ラジオは「光の放射」を表す言葉、アクティビティは「能力」です。かつて、何やら目に見えない強い光を発する物質を発見した科学者達は、その物質たちの働きの総称として、ラジオ・アクティビティ(放射能力)と名付けました。その後、科学者達はこの「放射能力」のある物質を精製して一カ所に集めると、それが互いに影響し合ってものすごく強い光を出すことを突き止めました。これを利用した原子力発電では、その強力な見えない光でお湯を沸かして蒸気の力

    termin2
    termin2 2011/03/16
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ライブで絵を描くという事

    数年前、自分の画力がぐんと上昇したと感じた瞬間がありました。自分の個展の会場で、作品集「機能の写像」をぼちぼちと売っていたときのことです。 その日私は、展覧会まで来て買ってくれた人のために、の見返しにその場でサインとスケッチを添えることを思いつきました。感謝の気持ちを表そうとした事だったのですが、実際にやってみると、人の所有物となったに大勢の前でスケッチを描くのはとても緊張しました。失敗は許されないし。 緊張の中で、私は迷いを吹っ切るために、いつもとちがう間を取りました。紙の上にはっきり物の姿が見えるようになるまで集中力を高め、イメージを貯めてからラインを置くようにしたのです。結果は良好で、私の絵は格段に速くなり、何枚か描くうちに私はちょっとした新境地にいました。 絵を描くとき、うまく描けたと思えるまで人に見せたくないと思う人は多いでしょう。芸術には確かに人に邪魔されずに自分と向き合う

    termin2
    termin2 2010/09/05
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » まだら模様の数学原理

    チューリング・パターンという生物の体の模様の古典的な数学シミュレーションがあります。 まあ素人なりの理解で乱暴に説明すると、お互いに反応をおさえたり強くしたりする影響力を持つ二つの化学反応が同時に広がって行くときに、その広がりに周期的なムラができるというものです。波紋の重ね合わせやモアレにちょっと似た現象ですが、「お互いに影響し合う」ってところがみそで、その影響の度合いをうまく調整すると、ヒョウ柄やシマウマ柄、熱帯魚の模様などの様々なパターンが現れます。 「反応拡散波」っていうSFっぽい名前がついているこの現象についての理論はコンピュータサイエンスの父と呼ばれる英国の数学者、アラン・チューリングが1952年に発表しました。この人は20代の頃、まだコンピュータが存在しない1930年代に、何でも計算できる万能装置が存在しうる事を数学的に証明して、コンピュータの理論的基礎を築いた人です。戦時中、

    termin2
    termin2 2010/04/03
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