「迷惑です。」大きな赤字でそう書かれた紙が入り口に貼られていたのは、池袋暴走死傷事故を起こした旧通産省工業技術院の飯塚幸三・元院長(88)の自宅マンションだ。管理会社・管理組合の署名で取材を禁じる貼り紙を記者が確認していると、ガラス越しに、あの元院長が現われた──。 2019年4月、飯塚元院長が運転する乗用車が暴走し、松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)が死亡、9人が重軽傷を負った。飯塚元院長は当初から「ブレーキを踏んだが利かなかった」と説明。5月に退院した際には、サングラスにマスク姿で両手に杖を持つ姿が報じられ、任意のまま捜査が進められた。 数々の要職を歴任した「上級国民」だから逮捕されない──。そんな批判が止まないなか、事故から7か月が過ぎた11月12日、警視庁は飯塚元院長を自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで書類送検。起訴を求める「厳重処分」の意見もつけたという。