第一生命保険の元営業職員が顧客に渡した手書きの借用証のコピー。被害弁護団が報道機関に公開した=2020年11月17日、三上剛輝撮影 第一生命保険の営業職員だった女性(89)が顧客24人から計19億円超を不正に集めていた問題は、被害額の大きさに驚かされるだけではなく、顧客の信頼を得ていった経緯など不可解な点が多い。謎に迫ろうと取材を進めると、地元で「女帝」と呼ばれるほど政財界に食い込んだ元職員の異様な影響力が浮かび上がってきた。 2016年2月末、山口県周南市の神社の境内にある会場で、とあるパーティーが開かれた。詰めかけたのは市長経験者や金融機関幹部ら大勢の地元有力者だ。それほどの面々を集めた主役は、政財界の重鎮ではなく、第一生命の営業職員(当時)。彼女の勤続50周年を祝う会だった。「選挙応援にも精力的で、地元の政財界で有名」だった元職員の人脈を見せつけるような場だったと、出席した地元議員は