11月刊のちくま学芸文庫『増補 アルコホリズムの社会学』(野口裕二著)より、信田さよ子氏による解説を公開します。多くのアルコール依存症者たちのカウンセリングを行ってきた信田氏にとって、本書は「バイブルのような存在」だといいます。それはなぜなのか、カウンセラーとしての自身の歩みを振り返りながら述べていただきました。ぜひご一読ください。 はじめに 本書は、私にとってバイブルのような存在である。 1970年代からずっとアルコール依存症にかかわり、その経験にもとづいてアディクション全般にカウンセリング対象を拡大してきた。さらにアメリカでアディクション援助の世界が生み出したさまざまな言葉(アダルト・チルドレンや共依存など)に軸足を置きながら、家族と家族の暴力の問題をターゲットにしてきた。 そんな私の分岐点は1995年にあった。現在まで続くカウンセリング機関を開設したのである。本書が刊行されたのが19