チャーマーズの「意識する心」の論議を反駁というか批判してゆくかたちで著者なりの解釈を提示する、刺激的な小冊。 基本的にはチャーマーズの問題設定が間違っているという主張で、論理的にチャーマーズの論議をこてんぱんにのしてゆく。 要するに意識の問題の時に「わたし」とか言うけど、それはあなたにとっての「わたし」であって、わたしにとっての「わたし」ではない、という言葉の問題があるということである。だから「わたしの意識」という問題設定がそもそも怪しいぞ、となるわけだ。 ゾンビの主張においては、チャーマーズと同じ主張をしつつもゾンビは不可能だという逆の結論に達したシューメイカーの論議を紹介しながら、この論議はあまりに幼いとバッサリ切り捨てている。 結局は、そもそも意識の実在性を主張できない以上は、それについてなにも言うことができないのである。「わたしの意識」と呟いた瞬間、実は他者に説明不能なそれを、つか