世界最大級の商用車グループであるダイムラー・トラックが、傘下のトラックレンタル会社を金融部門に統合した。同部門は純粋な金融プロバイダーから、”TaaS”(サービスとしてのトラック)を提供するトラックの「フルサービス」プロバイダーに転換する。
併せて2025年中にメルセデス・ベンツの最新の長距離輸送用BEV大型トラック「eアクトロス600」をレンタルフリートに追加することも発表され、商用車メーカーにとって電動化とTaaS実現の両面からレンタルソリューションが重要になっている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
ダイムラーが「トラック・アズ・ア・サービス」提供へ
欧州のトラック業界は電動化を中心に市場環境が激変しているが、ダイナミックな市場の変化に応じて柔軟な輸送ソリューションを実現するため、レンタル事業が力強い成長を見せている。
三菱ふそうやメルセデス・ベンツなどのブランドを傘下に持ち、世界最大級の商用車グループとなっているダイムラー・トラックは、メーカー系列のレンタルブランドとして「チャーターウェイ」を展開しており、商用車を1日から3年という単位で柔軟にレンタル可能だ(ドイツ国内の場合)。
トラックではメルセデス・ベンツの大型トラック「アクトロス」、建設用トラック「アロクス」、低床・特装シャシー「エコニック」、中型トラック「アテーゴ」と、バッテリーEV(BEV)の「eアクトロス」「eエコニック」に加えて、FUSO(三菱ふそうの欧州ブランド)の小型トラック「キャンター」及びそのBEVバージョンとなる「eキャンター」など、チャーターウェイを通じて幅広い車両を提供している。
台数にすると6000台という規模のフリートとなり、メーカー系列のレンタル会社としてはドイツで最大だ。系列だけあって新型車の導入も早く、メルセデス・ベンツの新たな電動フラッグシップトラックとなる「eアクトロス600」も2025年中に100台が追加されるという。
そのチャーターウェイだが、2025年1月16日にダイムラーの金融部門であるDTFS(ダイムラー・トラック・ファイナンシャル・サービシズ)に統合されたことが発表された。
こうした事業統合の背景にあるのがダイムラーが実現を目指している”TaaS”=トラック・アズ・ア・サービスだ。
急成長が予想されるTaaS
TaaS、つまり「サービスとしてのトラック」とは、デジタルプラットフォームなど最先端のテクノロジーを活用することで、必要な時に必要な分だけ輸送用トラックをレンタルして利用するサービスのことだ。
変動が多い物流の需要に対して、運送会社はTaaSを利用することで柔軟に輸送リソースを拡張でき、全体の業務効率を改善するなど物流部門の革命になると期待されている。フォーチューン誌の予測によると世界のTaaS市場規模は2030年までに4000億ドル(62兆円)を超えるそうだ。
さらに、バッテリーEVや燃料電池電気自動車(FCEV)は、車両価格の高さやインフラなどの課題を抱えており、現状ではレンタル/リース市場が主戦場となっている。
商用車メーカーにとっては、TaaSの実現と脱炭素化の両面からトラックレンタルが非常に重要なソリューションとされているのだ。
事業統合とTaaSについて、DTFSのCEOを務めるシュテファン・ウンガー氏はプレスリリースにおいて次のように強調している。
「チャーターウェイのレンタルビジネスをDTFSのサービスに統合したことは、弊社が純粋な金融サービスプロバイダーから、トラックに関する『フルサービス』のプロバイダーへ進化するという戦略転換を表しています。
これにより私たちは包括的なTaaSソリューションを実現し、車両そのものだけでなく車両保険と自動車税、メンテナンス、修理、様々なデジタルサービスなど、トラックの運行に必要な全てを提供できます。契約を一つにまとめ簡略化することでフリート管理が容易になり、トータルコストの低減が可能になります」。