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「CLASSY.」炎上騒動の背景に女性ファッション誌と出版業界の厳しい環境

2025.03.12 2025.03.12 15:43 企業
「CLASSY.」炎上騒動の背景に女性ファッション誌と出版業界の厳しい環境の画像1
「CLASSY.」公式Instagramアカウントより

 女性向けファッション誌「CLASSY.(クラッシィ)」(4月号/光文社)が掲載した、オペ看護師を主人公とする着回しコーディネートの企画に批判が寄せられている問題で、11日、同誌は「誠に不適切で配慮に欠けるものでした。医療に従事する関係者の皆様、読者の皆様に謹んでお詫び申し上げます」とする謝罪コメントを発表した。ファッション雑誌関係者は「他の大手出版社の女性ファッション誌では考えられない企画」というが、背景にはファッション誌をはじめとする雑誌、そして出版業界全体の不況があるという見方もある。なぜ、大手出版社の代表的なファッション誌でこのような問題が起きたのか。また、現在の雑誌業界、出版業界を取り巻く環境はどうなっているのか。業界関係者の見解も交えて追ってみたい。

 1984年に創刊された「CLASSY.」は40年以上の歴史を持つ女性ファッション誌。主に20~30代をターゲットとし、発行部数は6万4267部(2024年10~12月 日本雑誌協会・印刷証明付き部数)。ファッションやアイテム、ライフスタイルなどに関する幅広い情報を発信しており、編集長はその方向性についてウェブサイトのインタビュー取材で次のように語っている。

「過去の『CLASSY.』では『本命彼女になって玉の輿に乗る』という価値観がありましたが、現代の女性は、自分らしさを大事にしたい、自分で選びたい、という考え方が強くなっています」(24年7月1日付「THE GOAL」記事より)

「現代の20代女性たちは昔に比べ多くの悩みを抱えており、特に結婚に関する悩みが多いことに気づきました。だからこそ結婚をテーマに掲げ、読者に寄り添い、彼女たちの悩みや希望を反映した雑誌を作りたいと考えています」(同)

想像力が欠けていた面

 今回問題となっている「CLASSY.」の特集は、「ドロドロ病院内不倫を卒業して、新たな恋に踏み出さなきゃ!? オペ看護師が主人公!スカートしばりの3月着回しDIARY」というタイトルのもの。特集を読んだファッション雑誌関係者はいう。

「かつて光文社は『JJ』という雑誌で一大ブームを生み出しましたが、ファッション誌の業界内では『CLASSY.』はどちらかというと『男性からのモテ』を意識する雑誌という位置づけで、今のファッション誌界のトレンドとは逆であり、やや異質な存在といえます。現在、大手出版社のファッション誌はどこも記事の内容や表現については非常にチェックが厳しくなっており、たとえば『カレ』『フェミニン』という言葉は性別を限定するとして避けられたり、『この口紅は秘密兵器』『シークレットウェポン』といった言葉もウクライナ戦争が起きているなかで不謹慎だとして避けたりします。

 そうした業界内の動きを踏まえると、今回の『CLASSY.』の企画は医療従事者の方々にどのように受け止められるのか、特定の職業、しかも日々医療の現場で強い緊張感の下で業務にあたっているエッセンシャルワーカーの女性と不倫を結びつけることによって、その方々がどのように感じるのかということについて、想像力が欠けていた面があったと感じます。また、『こういう設定って面白そうじゃん』というノリに任せて、『多分、医師と看護師って、こうなんじゃないか』という想像に任せて掲載まで進められてしまったという印象を受けます」

 別のファッション雑誌関係者はいう。

「今回の特集に対して男性目線だという指摘がありますが、どのような目線に立つのかというのはビジネス的な戦略も関係してくるため個別メディアが判断することであり、男性目線であること自体が悪いというわけでは必ずしもないでしょう。そして、今回の特集が批判されている理由は、もっと本質的な部分にあるような気がします。

 雑誌はそのファンのためのものでもあり、発行元が雑誌を買ってもらうために、その雑誌のファンにウケそうな紙面づくりをするというのは自然の流れですが、現在ではネットニュースやSNSの普及によって、お金を出して雑誌を買う人や、その雑誌の記事を読もうと考えていない人の目にも記事が触れてしまうようになったということも、今回のような騒動が生じる要因の一つにあると考えられます。その意味では、雑誌に限らずメディアにとってコンテンツを制作して発信していくという行為の難しさが、ますます高まってきています」

雑誌というビジネスモデルが直面する現実

 今回のような問題が起きる大きな背景としては、出版業界全体を取り巻く出版不況もあるのではないかという見方も聞かれる。

「雑誌全体の販売減少は今さら触れるまでもありませんが、雑誌に出稿される広告も減少傾向で、過去10年で雑誌広告費は概ね半減しています。そのため発行元は外部のライターやフォトグラファーなどに支払うギャラを減額したりしていますが、撮影のためのスタジオ代やデザイナー、印刷代なども合計すると1ページあたり数十万円くらいはかかってしまいます。なので発行元はとにかくコスト削減に頭を悩ませなければならないなか、手間が少なく手っ取り早くつくれそうな企画が通りやすくなりがちです。

 また、着回しコーデ的な企画というのは普通のオフィスで働く女性というような主人公の設定では面白みに欠け、過去にあらゆる設定がやりつくされて“ネタ枯れ”状態なので、これまであまり扱われていなかった職業がアイディアと出されると、『それ、いいじゃん』と採用されてしまいがちな面もあるでしょう。

 月刊のファッション誌の場合、発売の2カ月前に企画を立て、出演者、編集者、ライター、フォトグラファー、デザイナーなど多くの人が関与して紙面をつくり、印刷工場で印刷して、製本して重くなった雑誌をトラックで日本中の店舗に配送しなければならず、瞬時に世界中に情報が伝わるインターネットがこれだけ普及した今、雑誌というビジネスモデルがこれからも生き残っていくというのは、非常に難しいでしょう。それは、実際に雑誌の世界に身を置いている多くの人が感じていることでもあります」(出版社関係者)

(文=Business Journal編集部)

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