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アニメーション制作の現場を学ぶ~株式会社スタジオKAI 見学レポート~

こんにちは。アナリティクスコンサルティングユニット コンサルタントの江良です。
ブレインパッドは、ビジネスへデータやAIを活用する支援を行っております。私たちはデータと真摯に向き合い、また実際のビジネスの現場を理解することも大事にしています。私たちが直接業務の現場に赴き、実際の業務内容・課題を伺い、理解を深めています。今回は、株式会社スタジオKAIに訪問させていただきました。本記事を通して、私たちが現場業務をどれだけ深く理解し、ビジネスに活かしているかを感じていただければ幸いです。

はじめに:株式会社スタジオKAI 概要

株式会社スタジオKAIは、2019年に設立されたアニメーション制作会社です。代表作にウマ娘 プリティーダービー Season 2や風都探偵、スーパーカブ、シャインポストなどがあり、美麗でリアルな動きのアニメーション(以下、アニメと記載)に力を入れられており、「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」や「シャインポスト」のダンスシーンが評価されています。

ディスカッション

今回は、大芝 賢二様、古谷 大輔様を中心に株式会社スタジオKAIの皆様にお話を伺いました。お二方にアニメ制作の現場業務を教えていただきながら、現場の課題のデータ・AI活用による解決の可能性を探っていきます。



大芝 賢二様
株式会社スタジオKAI 代表取締役社長。旭通信社(現ADKホールディングス)に入社。1999年第一企画と合併後のアサツー ディ・ケイ(現ADKホールディングス)で営業本部に所属。2012年営業担当執行役員、2014年取締役執行役員メディア・コンテンツセクター統括。2018年7月からADKマーケティング・ソリューションズの事業役員国内ネットワークセンター長を務め、2024年3月から現職。


古谷 大輔様
株式会社スタジオKAI取締役。株式会社手塚プロダクションを経て、株式会社ADKエモーションズに所属。株式会社 ADK エモーションズのコンテンツ事業本部 コンテンツ企画局、局長も務める。シャインポスト(制作統括)、風都探偵(プロデューサー)、ウマ娘 プリティーダービー Season 3(アニメーション制作統括)などを手掛ける。

今回、アニメ制作会社の主な業務とその課題についてディスカッションさせていただきました。

アニメ制作会社の主な業務とその課題

古谷様
「スタジオKAIのアニメ制作業務は主に①アニメ本編の制作と、②グッズ等に用いる版権イラスト制作の2つに分けられます。」
「①アニメ本編の制作は、以下3つの工程を経て、3ヶ月分の放送回を約2~3年かけて制作します。
1. プリプロダクション:アニメを企画し、脚本・デザイン・絵コンテを制作する
2. プロダクション:絵コンテをもとに設計するレイアウト、レイアウトをもとに原画や背景、CG素材を作成し、原画同士の間を埋める動画、彩色作業の仕上げの工程を経て、それら素材を撮影(合成)し1カットのアニメーションを作っていく
3. ポスプロダクション: 制作した1カットごとのアニメ素材を1本の映像として編集しその後音響(アフレコ・ダビング)作業を行い、最終的なアニメを作り上げる
現状、上記のアニメ制作現場ではさまざまな問題がありますが、作業の遅延に繋がるひとつの要因である絵コンテ工程と、動画工程のそれぞれの作業に大きな課題があると考えています。
まず、絵コンテ制作における課題は、脚本から絵コンテへの落とし込みに予想外の時間が掛かる点です。アニメ制作の起点である絵コンテは文字から映像の設計図を生み出す作業であり、頭を悩ませる工程です。すべての根幹になっているため、ここで遅延してしまうと、後の全工程の遅延に繋がります。
次に動画制作における課題は、動画作業自体が後ろの方の工程にあたる為、十分な作業時間が確保できず、結果的に成果物の安定した品質を保つことが難しい点にあります。動画の品質は、成果物のチェックと修正にどこまで時間をかけられるかに左右され、状況によっては品質の担保が難しくなるケースがあります。」

「②グッズ等に用いる版権イラスト制作の業務は、大きく以下の4段階で制作され、完成に約3ヶ月掛かります。
1. ラフ・レイアウト:キャラ・背景の構成を決める
2. 清書(原画):ラフをもとに線画を制作する(必要に応じて背景を描く)
3. 仕上げ:清書に対して彩色を行う
4. 撮影:彩色素材や背景を合成し、効果を入れる
各段階でチェックを入れ、キャラ・世界観の設定や依頼元の意図に沿ったイラストになっていない場合に都度修正が発生します。
しかし、版権イラスト制作はアニメ本編制作の合間に請け負っているため、制作工数が確保できず依頼を受けられないことが課題です。」

ディスカッションでいただいた課題の解決策に近いものとして、漫画編集者のようにアイデア出しや相談役を担うAIや、生成AIで制作されたアニメ作品などが既に登場しており、解決の可能性はあると考えます。しかし、そのまま活用すると現場のクリエイティビティを損なう可能性があります。そこで、現場の創作活動を阻害せず、むしろクリエイティビティを存分に発揮していただけるよう、AIやデータの活用を進めていきたいと考えます。

見学

制作スタジオ内の見学もさせていただきました。

ここのブースでは主にプロダクションの業務を行っています。
プロダクションは主にレイアウト、原画、動画、仕上げ、撮影の流れで構成されています。


「レイアウト」制作では、絵コンテをもとに画面内のキャラクター/背景の配置、カメラワーク、尺を指定します。以降、レイアウトをもとに作業が進むため、この工程は非常に重要であり、演出・作画監督による演技・演出意図のチェックや、作画の修正が行われます。


ここでは、制作したレイアウトを元に清書し、「原画」を制作します。また、原画はカットごとに要所のフレームのみ制作されるため、この後の「動画」制作に向け、原画と原画の間の動きの指示も書かれます。


原画の制作後は、原画と原画の間を埋める「動画」を制作し、動きがなめらかな映像にします。一話につき約7,000枚、複雑な動き/表現が要求される話数では約20,000枚の動画を制作することもあります。人手が必要なため、外注することもあります。

また、同時並行でレイアウトに基づいてシーンごとに「背景」を制作します。
動画制作の後は色彩設計に基づいて線画に色を付ける「仕上げ」、ここまで制作した動画・背景などを合成する「撮影」を行い、アニメとして形作ります。


プロダクション後のポストプロダクションでは、完成した映像と音声を同期させる作業や、音響効果(SE)、BGMの調整、さらにはテロップや特殊効果の追加などを行い、作品を視覚的・聴覚的に完成させます。


ここまで、実際の作業内容・風景をお見せいただき、いつも消費者として楽しんでいたアニメの裏側を見られて感動しました。また、何気なく見ているアニメ作品に非常に多くの工程があり、関与するクリエイターがそれぞれ多くのこだわりを詰め込んでいるのだと感じました。

おわりに

今回は、株式会社スタジオKAIにて、業務課題のディスカッション、アニメ制作の業務の見学をさせていただきました。ブレインパッドは、実際のビジネスの現場の業務・仕事を知ることが、新たなデータ活用の機会を見出す貴重な場になると信じて、とても大切にしています。また、外部の情報を得るだけでなく、さまざまな業界・企業様と協力しAIやデータ活用を通じた新たな価値を模索する取り組みも増やしていきたいと考えています。

大芝様・古谷様をはじめ、株式会社スタジオKAIの皆様、お忙しいところ貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました!


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www.brainpad.co.jp
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