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yama+cafe

山頂まったり最長時間記録更新中。

厳冬期の西穂独標へ。【完結編】

2012-03-07 20:12:36 | 山登り
厳冬期の西穂独標へ。【その3】のつづきです。

『あーっ!!!!!』

隊長はその瞬間を最初から目撃していたわけで。
あとから聞いたところ。

頭から後ろにひっくりかえっていったそうです。

で、そのまんまコロンコロンと数回転。

自分がどうなってるかわからないけど、とにかく止まらなければ!!

何を考えてたかあんまり覚えてないんだけど、とにかく何かをつかもうと思ったことと、
ピッケル刺さなくちゃ!っていうことだけ。

ピッケルが刺さったのかアイゼンがひっかかったのかただのラッキーか、稜線から10mくらい落ちたとこで停止。

後ろから追いついた2人組のおじさんと隊長が『止まれー!!』って叫んでたのも
なんとなく聞こえていたような。

これ以上落ちないようにアイゼンをしっかりきかせてピッケルをさしたところで
一息ついて全身チェックしてみる。

落ちた斜面がたまたま岩がぼこぼこ露出してたので、つかむところがあったのはラッキーだったのかも。
ただ打ちどころが悪ければ、それは逆に最悪な条件にもつながるわけだけど。

息切れがしていたからすぐに動けずに、ちょっと休憩するー!なんて上に向かって叫ぶ余裕がまだあったのんき者。

おじさんや隊長にちょっと休んでからこっち側に戻れ!って言われたのが
まっすぐ上に登るのではなくて、ちょっと戻るかたちで斜めにちゃんとした平らな稜線へ戻る方法。

で、カラダが大丈夫そうだったので稜線へ向かって一歩一歩、慎重に登る。

次に落ちたら、こんどは止まらないかもしれないから。

あと5m!

あと3mだぞ!

あと1m!!

そんな感じで励まされながら、稜線到着。

隊長はものすごくホッとしたようです。当り前か。

もう一度全身チェック。

ウェアがえらいことになっていた。
パンツの右側のうしろがザックリと横に一直線に裂けていて、左後ろの腰のところもちょっと切れてた。

あとはジャケットのフードもザックリ。

でもこれだけで済んだ。

まさかの捻挫、骨折ゼロ。
それはもうはっきり自覚できるほどの間接の頑丈さ!
あっちこっちぶつけたとこ、おもにウェアがやぶけたとこはたぶんひどい痣はできてそうだけど
一年中あっちこっちぶつかって痣だらけなワタシは痣の痛みには割と無頓着なわけで。
(会社のデスクにぶつかったりコピー機に激突したり。。。)

あ、あと擦り傷とか流血もゼロ。

そうそう。カメラも無事だった。
カメラバッグのふたは開けっぱなしだったんだけども、ラッキーなことに落ちないで
普通に納まってくれてた。

水の入ったグラスをぶんぶんまわしてもこぼれないのと同じ感じ?

このとき、隊長がもう今日は帰ろう!って言ったんだけど。

え?なんで?

大丈夫だから行こうよ!!


冗談じゃない!という表情の隊長を説得してまさかの登山続行です。

これはもう無事だったから言えることだけど、落ちた本人はその光景を目にしていないので
怖さがまったく実感できていないんです。

ただコロコロしてただけだから。。。
マット運動の逆でんぐり返し的な?

落ちていく瞬間から目撃して稜線に戻ってきたワタシをつかむまで生きた心地がしなかったのは隊長のほう。



とにかくここから先は無理しない、無理だと思ったら引き返すという条件つきで再出発。



独標直下は岩が露出していて、アイゼンをひっかけないように慎重に慎重に。。。






秋に歩いた吊り尾根。
いまの季節に歩けるときは来ないような気がする。

怖すぎて、いつか!なんてとても思えない荘厳なアルプス。



で、隊長が写ってませんね?

なんでかというと。。。



そのときアタシはココにいました。



ちょっとひいてみましょうか?

独標直下の鎖が露出してるところ。



どうしてもどうしてもこの斜面が登れなかったんです。怖くて。
もうヘタレと罵られようと怖いものは怖い!

がんばれば行けそうな気がしたんだけど、登ったら降りないといけないわけで。
その下りを想像するとどうにも。。。

しかも先にここで敗退したおばさまが岩の上に座って連れのおじさまが降りてくるのを
待ってるわけなんだけど、外した右手グローブが何かの拍子に手から離れて
そのまま風にとばされて奈落の底へ。

すごい勢いで。。。

もうそれを見た瞬間に、恐怖が襲ってきたわけで。

脚がもし少しでも滑ったらアタシが奈落の底かも(゜д゜lll)

鎖が独標までつづいてればよかったんだけど、あと数メートルのところで完全に埋もれてなくなってて
夏にきたときには鎖なんてなくっていいのにな~って思ったようなところで
雪山には必要なんだ!って思い知らされたところ。

鎖がなかったらここからの下りも怖かったと思う。



ちなみにピンクのやじるし方面が落ちたと思われるところ。

山頂で写真を撮ってる隊長が見えるけど、そんな姿は撮ってあげられない。
待ってるだけでせいいっぱいだから。
両手をフリーにしてカメラをバッグから出す余裕はぜんぜんナシ!



ここで待ってるときが一番カラダが冷えたんだけど、Black Diamondのソロイストロブスターががんばってくれて
このときまではぜんぜん大丈夫だった。

ここで初めて右手人差し指がしびれてきてグローブのなかで指マッサージをしてた。



ここらへんまで来るともう安心。
天気予報も当たって、風もそんなに強くなくなり気温も上がってきた。

それでもバラクラバはまだ凍ったまんまだったけど。

最高の景色のなかにいるんだけど、もう写真を撮るのもめんどくさい。

登山中のごっついグローブしたまま一眼レフって無理があるのかも。


滑落じゃありません。



小屋の目の前のところで、ワタシはオシリソリで楽しく雪まみれになってきたんだけど
隊長は今更の滑落停止訓練してました。

小屋に戻って、また西穂ラーメンをいただきます♪
量が少なくて、隊長的には3杯は食べないと腹八分目にもならないそうで。

お味のわりにはとても高いので、ワタシの分をわけてあげて1杯半で我慢してもらいます。



ちなみ山荘外あたりの気温はマイナス5.5℃くらいとありえないくらいの好条件だったこの日。
それでも登れないどころか転がり落ちた自分の情けなさを思うと悔しくなる。

山荘からの下りはウソみたいに優しいフカフカ雪の樹林帯。



だいぶガスがかかってきたけど、まだまだキレイなアルプスの山々。



途中でボッカしながら登っていく小屋のひととすれちがう。
ちょっとお話させてもらったけど、小屋にいたひととは全く正反対の感じのいいおにいさんでした(^∀^)







そんなわけで無事に下山してまいりました。

この写真だとわからないけど後ろ姿はすごいことになってるボロボロアウターのくっきー♪

いろんな反省点を一緒に連れて帰ってきたわけだけど。

本当に初めての雪山として選ぶ山でなかったかもしれない。
順当に天狗岳とか硫黄岳とか、素直にみなさんおすすめエリアから行くべきだったと反省。

あと体力のなさが露呈。
隊長は腕力と雪面に蹴りこむ脚の強さで技術の無さをカバーできたけど、なんにもないワタシは
夏山のように勢いではクリアできなかった。

これからも雪山にきたいならば、技術もどうにかしないといけないんだけど
それ以前の体力をつけないと!と反省しました。

そんなわけで幽霊ではなく、ちゃんと生きてるくっきーが西穂初心者レポをお送りしました(^∀^)

おしまい。


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27 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ROCKY)
2012-03-07 20:41:13
冗談じゃあなくて・・・・
思いっきり10mも滑落したんだぁ?
無事で なによりです。
このレポート読んだら・・・・
独標リベンジ怖くなっちゃうな・・・・・。
ポリポリr(^^;)
でも・・・この眺望は たまりませんなぁ。
こんな天気の時に 登りたいな・・・。
返信する
勲章が一つ出来ましたね!! (インレッド)
2012-03-07 20:51:46
今晩は。
良い天気に恵まれましたね、お陰さまで
素晴らしい冬のアルプス堪能しました。

骨折も無く、凍傷にもならないで、ラッキー
でした。これを経験にまた一つ度胸が付きま
したね。私は凍傷も足の骨折と胸の骨折も経
しました。単独ですから足を骨折しても、一人
で降り無いと死ぬ訳ですから。太った足を引き
ずりながら必死で山を降りました。それも山を
やる人の勲章と思っています(一人よがりですが)。
返信する
ふおーっ! (cyu2)
2012-03-07 21:02:46
緊張したよーーーー!
無事なのは解っていても、本当に良かった良かった!!
身体のどこも怪我なくて良かった!生きててよかったよー!

私は黒斑山で練習しようと思って生まれて初めてピッケル持ってって、優しい山だから使う場所はなかったんだけど、
トーミの頭辺りでは「滑落停止訓練って言ったってさ、落ちようと思って落ちるんじゃないんだから、落ちたら止まる訳ないやん・・・」
と思い訓練すらしてきませんでした^_^;
西穂の稜線で止まったくっきーさんはある意味奇跡&既に身についていたのかも?

それから。
山頂直下であと少しが怖くて登れない、っていうの、なんかとても嬉しかった。
私もそういうのよくあるからすごく解る、誰がなんと言ったって、その一歩がでないんだってば!て言うときあるもん!
そういうこと、強がらず、すごく正直にちゃんと書いてて・・・。
素直でカワイイね、くっきーさん(*^_^*)
きっと今度行った時は「あれ?なんで前回はここ怖かったんだ?」って言ってる自分になるよ、絶対♪

と、そういうことでアウター探しですね(笑)
こんなに頑張ったんだから、ご褒美に買っちゃいましょ♪

返信する
お疲れさん! (矢車草)
2012-03-07 21:41:47
もう くっきーさん、ドキドキしちゃったじゃないですか!
でも、とにかく手も足もついてて帰ってこれて
本当に良かった、良かった(涙)

そうだねェ、独標なら・・・って私も思っていたけれど
行ってみて、これは初心者が来るところじゃないなって思ったんだ。
私達はくっきーさんが滑落した手前でアンザイレンしましたもん。
とにかく無事で良かった、これ以上姉さんに心配させないでね!

はっきり言って硫黄も天狗もそんなに簡単では無いです。
岩と氷がミックスなので危ないところがいっぱいあるからね。
やっぱり初めはちゃんと色々教えてもらったほうがいいと思うよん。
八ヶ岳はすごく風が強いので それで体力が奪われるし、
今年は寒かったから凍傷になった人が多かったんだって師匠が言ってました。

あとね、ピッケルを肩からかけるのはNG。
転がった時に凶器に変わります。自分を刺す道具に!
私達も初めの時、肩からかけるものとばかり思って(本にも書いてあるしね)準備していったら
師匠に駄目と言われちゃったんだよね。

と偉そうなことばかり書いちゃったけれど
これは老婆心・・・やっぱり無理しないで無事に帰って来てほしいから。

そうそう、師匠は滑落停止を教えてくれません。
なぜなら、本当に滑落したら絶対に止まることなんて出来ないからだそうです。
その代わり、ちゃんと歩けるように教えてくれるの。

独標の手前 怖かったでしょう!
私も怖かったというか 登るの大変だったもん、体が重くて必死だった。
無理しないで待ってて正解、下りのほうが難しいからね。

とまぁ、色々書いちゃったけれど 今度お喋りしましょう!

また、くっきーさんが新しいお買い物探ししてる~って思っていたけれど、
こういう訳だったんだね!
私もこの2年冬のアウター探してるんだけど
欲しいものが無かったり、高くて買えなかったりで・・・
初めの頃惰性で買った重たくて嫌いなモ〇ベ〇を仕方なく着てます。
私も新しいのほしいのよね~。

とにかく 怪我しないで無事に帰ってきてくれてありがとう♪
また 一緒に遊びましょう
返信する
びっくり!&良かった! (mikko)
2012-03-08 00:59:46
びっくりしました~
ともかくご無事で良かった。。。
ウェア探している理由があったのですね。
手痛い出費になりますが、無事だった事への
感謝&頑張ったご褒美かな。
私なんか夏の独標でも山頂手前のひと登りが怖かったのに~
あんなに怖そうなところまで行けたくっきーさんは凄いです。
そして滑落した場所を見たらヒャ~としました。
10mで止まってよかったですね。
これからも気をつけて山を楽しんで下さい。
返信する
Unknown (きょこ)
2012-03-08 08:15:10
くっきーさん、ご無事で本当に良かったです(ToT)

このレポ見て、頭をガツンと殴られたみたいな衝撃を受けました。
西穂がどのくらい難しいか知らない私は、一つ前のレポまで
わー綺麗、独標までなら行ってみたいなぁなんて簡単に考えてました。
危険な箇所も、行けば何とかなるだろとか、気をつけていれば大丈夫とか
心のどこかでそんなおごりのようなものがあったんです。
運転でも免許取り立てより数ヶ月たった頃が一番危ないって言いますが、
山も同じなんですね。

くっきーさんはとっさの判断が的確だったんで止まれたけど、どんくさい私が
もし同じ状況になったら、何もできなかったと思います。。

率直に、ありのまま起きたことや思ったこと書いていただきありがとうございました!
すごく臨場感あって、私も隊長さんの気持ちがよーくわかるし、
くっきーさんの悔しさも伝わってきました(x_x)
じつはまだアイゼンピッケル使う登山までカバーする保険には入ってないので、
入り直さなきゃと思いつつダラダラ過ぎてましたが、検討し直すいい機会になりました。
返信する
よかった(^-^) (はなねこ)
2012-03-08 08:57:30
くっきーさん こんにちは。

お天気に恵まれて最高の完結編かなと思って開いたら
まさかの展開で
こうしてレポができているわけだから 無事なのはわかっていても
ハラハラドキドキしました。
ご無事で何よりでしたね。
しかも無傷でなんて奇跡としか言いようがない。
その瞬間の隊長さんの心中 お察しします。
でも、こんなに明るいくっきーさんだから救われているのかも
冬山の怖さを知って、また一歩進みましたね。
なんて、えらそうに言ってごめんなさい。私は無理です。

素適なアウターが買えるといいですね♪
返信する
ROCKYさん♪ (くっきー)
2012-03-08 22:11:09
こんばんは~♪
怖くならないでください(*^_^*)
天気のいい日にこんなとこでこけるのは
きっとワタシくらいだから。。。

ROCKYさんは矢車草さんから山のベテランって
聞いてますもん。
大丈夫ですよ♪
はじめて自分の目で冬のアルプスを間近に見られたのは
とってもうれしかったです。
返信する
インレッドさん♪ (くっきー)
2012-03-08 22:16:57
こんばんは~♪
わー♪お叱りを受けてもしかたない無謀な山登りだったのに
勲章なんて言っていただいていいんでしょうか!
>私は凍傷も足の骨折と胸の骨折も経験しました。
さすがです(゜□゜lll)
その状態であきらめずに無事に帰ってくる根性が必要ですね。
とりあえずもっとちゃんと体力をつけようと思います。
毎晩の腹筋を日課に。。。
返信する
cyu2さん♪ (くっきー)
2012-03-08 22:28:06
こんばんは~♪
心配させてごめんなさい(T_T)
そして無謀登山でお叱りを受けるの覚悟だったのに
やさしくしてくれてありがとうございます(*^_^*)

>ある意味奇跡&既に身についていたのかも?
いやもう、ほんとに奇跡です!
あと数メートル落ちたら岩がなくなってつかまるとこなくて
スピードも加速して。。。
想像すると、ほんとに怖いです。

あの山頂直下はほんとに怖かったです。
先にあきらめて座りこんでいたおばさまのグローブが
飛んでったときは自分のカラダが転がっていくのを
見たような気がしました。
で、素手になってしまったおばさまも大変だったんだけど。

あきらめることは悔しいけど、無理をして事故につながれば
二度と登ることはできないし、無事に帰りさえすれば
いつでもまた登るチャンスはあるし。
そんなことを見にしみて感じました。

でも悔しいんだけど(゜∀゜)
バカですね。

アウター探しの沼にはまってます。
もちろんワタシも個人輸入で!
国内でなんて夢のようなお値段で手が出せません~。
サイズ気をつけないとですね!!
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