AI基盤と先端半導体技術開発の補正予算
経済産業省は2024年度度補正予算で、AI基盤モデル・先端半導体技術の開発事業に9,916億円、先端半導体の国内生産拠点整備に4,714億円を計上しました。
デジタル経済の中核を担う半導体技術の支援が、日本産業界にどのような影響を与えるのか、その概要と背景、今後の展望について取り上げたいと思います。
AI基盤と先端半導体に関する補正予算の概要
経済産業省が発表した令和6年度補正予算案では、AI基盤モデルおよび先端半導体技術開発、ならびに国内生産拠点の整備に計1.5兆円が充てられます。
AI基盤モデル・先端半導体技術開発事業
予算額:9,916億円(一部GX関連で1,576億円含む)
目的:ポスト5G(次世代通信システム)の中核技術や、次世代半導体設計・製造技術の開発を推進し、デジタル化と脱炭素社会の両立を目指す。
先端半導体の国内生産拠点整備
予算額:4,714億円
目的:半導体の安定供給を確保し、産業基盤の強化と戦略的自律性を高める。
これらの施策は、地政学的リスクの高まりや、世界的な半導体不足問題を背景に、日本が技術開発と供給力強化で競争力を確保する狙いがあります。
AI基盤モデルと先端半導体技術開発事業
ポスト5G情報通信システムの開発
ポスト5Gは、現行の5Gを超えた「超低遅延」や「多数同時接続」機能を持ち、工場の自動化や自動運転など多岐にわたる産業での利用が見込まれています。
<技術開発支援内容>
・情報通信ネットワークの中核技術
・生成AIに関する基盤モデルの開発
・ロボティクス分野への応用
先端半導体の技術開発
半導体の設計・製造技術、次世代半導体製造に必要な実装技術や微細化技術についても支援を強化していく方針です。
<主な取り組み>
・国内技術優位性を確保する基盤技術の開発
・国際連携による次世代半導体技術開発
・人材育成や事業戦略の調査
先端半導体の国内生産拠点整備
半導体は、産業の「コメ」とも言われるほど重要な位置づけです。地政学的リスクや供給網の分断リスクが高まる中、国内での安定生産が必要不可欠となっています。
事業概要と支援内容
経済産業省は「5G促進法」に基づき、認定を受けた事業者に対して最大1/2の資金補助を行います。
これからの取組みを通じて、以下の目標を掲げています。
・2030年に国内先端ロジック半導体の合計売上高:1.5兆円超
・国内メモリ生産の世界シェア:25%
今後の展望
日本政府が巨額の補正予算を投じる背景には、AIや半導体において、国際競争への対応です。米国やEUも半導体技術に巨額投資を行っており、国内技術基盤の強化は喫緊の課題です。
今回の補正予算を通じて、以下の取り組みの成果を目指しています。
・次世代技術(ポスト5G、生成AI)での優位性確立
・国内半導体生産拠点の強化と供給リスクの回避
・産業全体への波及効果による経済成長の加速
2024年度の補正予算は、日本がAI基盤モデルや半導体技術開発において、製造業、自動車産業、医療機器など幅広い分野での競争力を高める基盤として期待されます。また、先端半導体の国内生産拠点整備により、地政学的リスクに対応しつつ、国内産業の強靱化も期待されます。
先端半導体の政策的な取り組みについては、今後も注視していきたいと思います。