違法賭博で膨らんだ巨額の借金を返済するために、大谷翔平選手になりすまして、大谷選手の銀行口座から賭博の胴元に不正送金をした水原一平被告に、2月6日(日本時間2月7日)カリフォルニア州の連邦地裁で判決が下された。連邦検察の求刑通りの禁錮4年9ヶ月、賠償金約26億円という量刑だ。水原被告は判決に先立ち、判事に禁錮18ヶ月への減刑と情状酌量を手紙の中で訴えていたが、受け入れられなかった。

©時事通信

 なぜか? それは、手紙の内容についてジョン・ホルコム判事が言い切ったこの一言に答えがある。

「虚偽の陳述や重要な事実の抜け落ちで満ちている。全く信用できない」

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 ホルコム判事は、水原被告の訴えが検察側の調査結果と異なっていることを突いた。例えば、水原被告は低賃金でギリギリの生活を送っていると経済的な困窮を訴えていたが、銀行詐欺疑惑が発覚した2024年3月時点では銀行口座には20万ドル近い残高があったことから、ホルコム判事は指摘した。

「これは大きな額だと考える」

 また、大谷選手が水原被告に5桁のチップとポルシェを与えたり、水原被告と妻にファーストクラスのチケットを与えたりしていたことも検察側により指摘されたが、これは手紙の中で自身の待遇に対する不満をまくし立てた水原被告の主張とは食い違うものだった。水原被告の手紙は減刑効果を全然発揮せず、逆に、連邦検察の主張を強める方向へと向かってしまったのだ。

 ホルコム判事は何より、水原被告が盗んだ約26億円が巨額であることも重大視した。その巨額さについて判事は「ほとんどの人が一生かけて稼ぐ金額より多く、また、何度も何度も人生を送って稼ぐ金額よりも多い」と言及している。

 カリフォルニア州中部地区の連邦検事代理のジョセフ・マクナリー氏も、判決後、この量刑について「犯罪の重大さを反映し、強いメッセージを送るものだ。この事件で、大谷選手は金を盗まれ、利用された。彼は水原氏に食い物にされた。水原氏は嘘をつき、騙し、盗んだ。彼の行為は恥知らずだ」と断罪した。

 アメリカでも注目されていた裁判とあって、米メディアも速報したが、その中では、大谷選手が被害者である点も強調されている。

 地元のロサンゼルス・タイムズ紙も「疑いの余地はないが、大谷氏は真の被害者であり、被害を受けてきた。これからも被害を受け続けるだろう」と検察側が求刑文書の中で訴えたことに触れている。