公共と競争は対立軸でとらえらることが多い。通信、保育などはその代表例だろう。
通信は1984年に日本電信電話公社が民営化し、NTTが誕生した。それまで独占事業だった大きな理由は公共性だ。公共性の高い通信インフラを維持することが必要だった。同じようなことが保育事業にも言える。民間企業は撤退のリスクがあるなどの理由で、株式会社の参入を認めていない自治体もある。
だが、公共と競争は決して対立するものではないことを示す事例がいくつも現れてきた。2006年から携帯電話事業に参入したソフトバンク。孫正義社長は公共性の1つである通信ネットワークの改善を訴え続けてきた。客観的なデータが少ないため、他社より優れているかはわからないが、少なくも他社にそん色がなくなってきたのは確かだ。
保育事業でも事例がある。民間保育最大手のJPホールディングスは保育所の数を増やしている。既に100カ所ほどを運営し、2013年度は20カ所新設する予定だ。待機児童の解消という社会的課題の解決という意味では公共性が高い。株式会社の参入によって保育の質が低下したとの声は聞こえてこない。

こうした中で見逃せないのは、公共と競争の溝が大きかった分野だ。その溝がなくなると民間企業に大きなブルーオーシャン(新市場)が広がっている。
ソフトバンクが様々な指標でNTTグループを上回り始めた。2014年3月期の営業利益はNTTドコモを上回る公算が大きい。時価総額でも4月以降、何度もNTTを上回った。
逆転の主な理由はスピードとコストだろう。この2つは競争が少ない事業者が不得手とする分野だ。ソフトバンクは割賦方式による販売など他社に先駆けたサービスを導入。ここ数年は急増しているが、5年単位で見れば設備投資額は他社より少ない。
一方、NTTグループは国内メーカーとの関係などしがらみがあり、設備投資や端末ラインナップもなかなかしぼりこめなかった。「何でもあり」のソフトバンクからすれば、しがらみの多い「優等生」のNTTグループは戦いやすい。

【お申し込み初月無料】有料会員なら…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号13年分のバックナンバーが読み放題