「メキシコとカナダに25%の関税を考えている。(導入は)2月1日になると思う」
1月20日夕、米国の首都ワシントンにあるホワイトハウス。正午の就任式で第47代大統領となったトランプ氏は大統領令に署名しながら、記者団の取材に応じ、こう予告した。
就任式の演説では、「全ての関税、税金、歳入を徴収する『外国歳入庁』を設立する」と語り、従来の「初日に関税を発動する」との発言に比べて、抑制的と受け止められて安堵感が広がっていた。しかし数時間後にトランプ氏自身の口から改めて関税へのこだわりが語られると、日経平均株価は大きく上下した。
選挙期間中は、企業に親和的な「プロビジネス」なイメージを押し出し、経済政策にたけているとして勝利したトランプ氏。その期待から投開票日の2024年11月5日以降、株価は上昇傾向にあるが、浮き沈みも激しい。トランプ氏の関税への執着が重しになっている。米国の主要貿易国であるメキシコとカナダへの関税が現実となれば、米経済への打撃が懸念されて株価は大きく落ち込むだろう。
踏み絵を踏む取り巻きたち
それでもトランプ氏の関税への本気度は衰えていないと見られている。1月6日、同氏はSNSに「私の関税が縮小されるなど間違っている。フェイクニュースの一例だ」と書き込んだ。米紙ワシントン・ポストは新政権チーム内で、あらゆる国からの輸入品を対象にした「ユニバーサル関税」について、安全保障など重要な分野に絞る検討をしていると報じたことに対し、否定した。
財務長官人事でも、関税へのこだわりが鮮明になった。24年11月22日、スコット・ベッセント氏を指名すると発表すると、ウォール街出身で経済に悪影響を及ぼす関税には慎重という安心感から株価は上昇した。しかし、トランプ氏が25日、「メキシコとカナダに25%の関税を、中国に10%の追加関税を課す」と表明して冷や水を浴びせた。
また、起業家イーロン・マスク氏らがベッセント氏より、実業家のハワード・ラトニック氏がふさわしいと押し出していた。対抗するようにベッセント氏は保守系メディアに関税を強く推進する内容を投稿した。米国野村証券の雨宮愛知氏は、「閣僚は関税に賛成している人ばかり。ベッセント氏は関税を恐れてはならないという意見に変化しており、関税が入閣の『踏み絵』になっている」と見る。
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