「PayPayだけが正しかった」。あるメガバンクの幹部はライバルの快進撃を横目に嘆息する。

 キャッシュレス決済で格別な存在感を放つPayPay。利用者数は2024年12月に6700万人を突破し、QRコード決済のシェアで約7割を握る。決済取扱高(GMV)は連結で年間12兆円を超え、営業黒字も達成。この速さで育つフィンテック企業は世界でも珍しい。

 PayPayが登場したのは18年で、実はQRコード決済では後発に当たる。しかし手数料を一時的に無料にして加盟店の開拓を優先して、「どぶ板営業」も展開し、巨額のポイント還元策も連打。加盟店と利用者の両方を一気に増やした。決済事業は薄利多売である。当初は巨額の赤字にまみれても、市場を“面”で押さえた者が最後は勝つ。

■連載「キャッシュレス乱戦」ラインアップ(予定)
・爆走PayPay、シェア7割 銀行・クレカも経済圏に(今回)
・PayPay、クレカ強化が難路 楽天G、三井住友FGと三つどもえ
・富士そば、導入3割りで足踏み 手数料負担に小規模事業者は悲鳴
・一蘭、訪日客対応でキャッシュレス化を一気に 80店ほぼ網羅
・三井住友Oliveが挑む総合金融、クレカ防戦からの「1人勝ち」
・1000兆円の法人決済を狙え 縮むクレカの生きる道
・逆境のSuicaもQR、個人送金対応へ 反攻10年プランの全体像
・はなまるうどん、店頭・商品改革で試行錯誤 決済データ戦略利用
・ユナイテッドアローズ、ターゲット絞り商品提案 生データの強み

 PayPayの独走は当分続きそうだ。クレジットカードなどを含むキャッシュレス決済のうち、およそ6回に1回はPayPay。シティグループ証券の鶴尾充伸アナリストは「1人当たりの利用頻度が高いアプリに育っており、他社の追い上げは容易でない」と評する。

 PayPayがけん引し、日本のキャッシュレス決済比率は一気に上昇。政府目標の4割を1年前倒しでほぼ達成した。しかし、PayPay副社長の安田正道氏は「欧米は6割前後、中国や韓国は8~9割。我々はまだ伸びしろがある」と攻めの構えを崩さない。

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