『面倒なことはChatGPTにやらせよう』(カレーちゃん氏、からあげ氏著)を2回通読した。著者のひとり、からあげさんは、僕がキャラクターを認識できる数少ないブロガーだ(お会いしたことはない)。現在、データサイエンス研究者として大活躍している。なお、僕は勝手に彼をターミネーター2に出てくるサイバーダイン社の開発者ダイソンさんをイメージしている。人類の未来のために、凶悪なターミネーターを開発することのないことを祈るばかりである。僕はゴリゴリの文系の営業職の50歳のオッサンで、本書の推薦人である松尾教授とは真逆の人間である。もしかしたら本書のターゲットから外れている人物像かもしれない。そういう人物に本書がどう役に立つの?という視点でレビューになる。
本書を一語にたとえると「ブルドーザー」だ。ChatGPTへの抵抗感や不信感や偏見という壁をぶっ壊し、日常に即したツールとするまでの道を舗装するという意味だ。昨今、生成AIが大ブームである。数年前まで某感染症の感染者数をリアルタイムで報告していたテレビのワイドショーでも毎日のように「生成AIでこんなことができる!」「生成されたリアルな画像が現実と区別がつかない」などと内容のあるようでまったくないくだらない取り上げ方をしている。書店に立ち寄れば「ChatGPT」が表紙を飾る本を見かける。そんな世の中で生きている僕は、ガンマgtpだけでもヤバいのに、そのうえ生成AIを使わないとヤバいことになりそうだという危機感を持つようになった。
不安にかられて僕も著名人(あえて名は出さない)またはそのゴーストライターが執筆した「生成AIを使わないと損をする」「生成AIで世界はこう変わる」という本を何冊か読んだ。危機感を煽られただけで途中で読むのをやめてしまった。大変もやもやした。くだらないのが「AIに仕事を奪われる!」「こんな仕事は滅びる!」と繰り返される内容だ。人類が科学を発展させてきたのは、言い換えれば過酷な労働から決別するためである。技術の発展でなくなる仕事があるのはこれまでの歴史と一緒でしょ?仕事の在り方が変わるだけだ。
「ChatGPTとどう向き合えばいいの?」「ChatGPTを前に文系オジサンは最初に何をすればいいの?」本書はそういった不安を解消する内容となっている。かなりの頁数を割いて、どういった命令を与えれば、こういう答えが返ってくる、うまくいかないときはこうやってみてという実例が掲載されている。データを加工してグラフ作成やパワポの資料作成、顧客別の販促メールの作成法、簡単なブラウザアプリの作り方まで、ゴリゴリ文系の僕でもわかるくらいの、これ以上分かりやすく書けるのか?というレベルまで視点を下げてくれている。
<めちゃわかりやすい実例>
生成AIで世界はこう変わる系の書籍の大半は「AIすげー」「やべー」で思考停止してブラックボックスのように扱っているように見える。その方が危機感を煽れるからだ。けれども、本書はChatGPTの優秀さや便利さを嚙み砕いて、こうやって使うことで身近なツールになるよ、という優しい視点で書かれている。多くの文系中年おじさんは、生成AIはヤバいよ、といわれて、そっかヤバいんだな、で止まっている人間が多い。なぜか?それは「何をすればいいのか」「最初の一歩でどうすればいいのか」そして「それをすることで何が起こるのか」をわかりやすく解説する教材がなかったからだ。
そしてプライドの高い文系中年おじさんはChatGPTや生成AIを「質問を投げかけると人間っぽい答えをしてくれるツール」「文章から現実顔負けの画像を作成するツール」という限定・矮小化されたイメージで固定させてしまう。何を隠そう僕もその一人だった。だが本書を読んで、それらはChatGPTの一部にすぎないことがよくわかった。実際にはもっと自由度と汎用性の高い可能性を秘めたツールであることを《プロンプトと結果とうまくいかない場合のコツ》の繰り返しの実例で示している。素晴らしい。
タイトルにあるように今抱えている面倒なことを頭に浮かべながら読むとより効果的だろう。僕の場合、ほぼ同じような話に終始する会社上層部との打合せが死ぬほど面倒くさい。上層部が死んでくれたらいいのにと毎週思っているくらいだ。打合せ自体は変わり映えのしないものだが、その場に用意しなければならない資料を毎回作らなければならないのが面倒くさいのだ。死んでくれと思う。
だが、本書で紹介されているパワポ資料の作成法なら、同じデータからでも違うものが簡単に作成できるようになる。どんな内容を作ればいいのかという悩みからも解放される。「どんなの出来る?」とChatGPTへ尋ねるだけでいい(記述法はコツがあるけれども本書に紹介されている)。提案された候補から選んで実行すればよい。面倒クサさとはおさらばである。最高だ。
本書をガイドにChatGPTをとりあえず使ってみて、身の回りにある、クッソ面倒くさいことをChatGPTに投げてしまおう。それで浮いた時間と労力を別のまだデータが出そろっていない新しい仕事の企画作業や趣味や休憩に投資すれば、QOL向上につなげられるだろう。
『面倒なことはChatGPTにやらせよう』、身もふたもないタイトルだけれども、これ以上僕ら人間とChatGPTとの付き合い方を端的にあらわしている言葉はないだろう。面倒なことをAIにやらせる、そこにいたるまでの少しだけ面倒な道のりを平坦な道に整地してくれているのが本書である。なお、最新アプデに対応している。今まさに読むべき本だ(所要時間45分)