ちょっと長くなるわよ。
1960年代の米国では黒人に対する人種差別を火種にした暴動がいくつも起こってたのね。その中でも有名なのがカリフォルニア州ワッツ市(今ではLAに吸収)で起きた「ワッツ暴動」なんだけど、とある黒人青年とその家族の逮捕をきっかけに暴動になって放火や略奪が起こって大変な状況になってたの。
当時人気のR&B系ラジオ局のDJで Magnificent Montague って人がいたの。彼が炎に包まれたワッツの姿を見て放ったのが後に彼のキャッチフレーズになる「Burn, baby, burn!」なの。カジュアルな呼びかけとしての「baby」なんだけど、通常なら親しい間柄で使われる物ってのはわかるわよね? 自分より若い人、特に若い女性に対して使われたりします。
暴動の中で放火によって燃え盛るワッツの街に向かって「baby」って変だと思うかもだけど、そこがミソで、日本語にすると「燃えろ!燃えちまえ!」的なニュアンスが出るのよ。皮肉を込めて猛火を擬人化して「応援」してるみたいな感じね。
この人のこのキャッチフレーズは瞬く間にメディアに取り上げられて広まったの。セリフに使われたり歌の歌詞になったりして国民の意識の中に根を張ったって言う感じかしら。
話は飛んで2008年、米国大統領選の最中の共和党全国大会でメリーランド副知事だった Michael Steele って人が「Burn, baby, burn!」をモジった「Drill, baby, drill!」ってスローガンを提唱したのよ。アラスカを始めとする米国領での化石燃料の掘削を推奨するメッセージね。
トランプはこれを今回の演説で借用しているの。米国人にとって「Burn, baby, burn!」が余りにも親しみのあるフレーズだから、その型を使った今回のフレーズも耳なじみが良いし、キャッチ―で覚えやすいのね。
baby の意味だけを聞いたのに~って感じかしら? 長くなってごめんなさい。