近年では映画監督としての活動が主である。漫画作品での代表作は『童夢』『AKIRA』など。ペンタッチに頼らない均一な線による緻密な描き込み、複雑な遠近感を持つ画面構成、また内容に関しても生活感のあるリアルな描写は、80年代以降の漫画界に大きな影響を与えた。
宮城県登米郡迫町(現在の登米市迫町)出身。中学時代に漫画家を志すが、高校時代は映画漬けの日々を送り一時漫画から離れる。ちなみに大友克洋の出身校、宮城県佐沼高等学校は石ノ森章太郎の出身校でもある。当時は映画を作りたいと思っていたが、一人立ちを考えて漫画を描き始める。
1973年、学者であり作家のプロスペル・メリメの『マテオ・ファルコーネ』を原作とした『銃声』で漫画家デビュー。初期の作品はアメリカン・ニューシネマの影響や、70年代の文化(ロック、ジャズ、ドラッグなど)を背景とした日常風景を淡々と描くものが多かった。70年代後半には緻密に描きこまれた背景や、美化されていないリアルな人物など大友らしい作風が確立されていた。当時よりニューウェーヴの作家と目され、一部の漫画読者からは知られた存在になっていた。またその斬新な作風は当時の漫画家志望者や既成の漫画家に大きな影響を与え、1979年の自選短編作品集『ショートピース』を刊行前後には作風を模倣する者が数多く出現した。
同1979年には未完の作品ではあるが、後の作品の前触れともいえるサイバーパンク風SF『Fire-Ball』を執筆。その後超能力者同士の対決を描いた『童夢』、架空の戦争を描いた矢作俊彦(小説家)との共作『気分はもう戦争』を発表。両作品は共にSF作品への文学賞「星雲賞」を受賞するなどSFファンから高い評価を受ける。さらに『童夢』は第4回日本SF大賞を受賞し、大友克洋の名前を漫画界のみならず知らしめることとなる。
1982年には世界戦争後の荒廃した近未来の日本の人工都市“ネオ東京”を舞台に、超能力を手にした少年が凶暴化してしまいネオ東京を恐怖と混乱に陥れるというSF作品『AKIRA』が週刊ヤングマガジンにて連載開始。本格的なサイバーパンクSFである本作は、大友自身の突飛な表現力で超能力や都市を徹底的に描写し大ヒットとなる。
『AKIRA』と同時期に石ノ森章太郎の漫画を原作としたアニメ映画『幻魔大戦』にキャラクターデザインで参加。その後いくつかの作品でデザインや絵コンテを手掛け、1987年の眉村卓の小説を原作としたオムニバスアニメ『迷宮物語』の一編「工事中止命令」でアニメーション監督デビュー。翌1988年に10億円というアニメ映画としては破格の製作費をかけて『AKIRA』を映画化。長編映画デビューをする。
この『AKIRA』は漫画同様、緻密な作画などはもとより、日本のアニメで一般的なアフレコではなくプレスコ(声を先に収録するアメリカで一般的な方式)の採用や、現代音楽で知られる集団『芸能山城組』を音楽で起用するなど、音響や音楽の演出でも拘りを見せている。日本での公開の後に海外でも劇場公開され大きな評判となる。これは「ジャパニメーション」と呼ばれる、日本国外における日本アニメムーブメントの先駆けとなった。『ジュラシック・パーク』などで知られる監督、スティーブン・スピルバーグは「わたしが作りたかったのは、こういう作品だったんだ」と発言したとされる。
1990年に『AKIRA』の連載を終了させた後は、主な活動を映画へと移す。『AKIRA』と同じく自身の漫画作品を原作としたオムニバスアニメ『MEMORIES』、機動戦士ガンダムの20周年記念イベント「ガンダムビッグバン宣言」にて上映された短編CGアニメ作品『GUNDAM Mission to the Rise』などを手掛ける。2004年には製作期間9年、そしてアニメ映画史上最大の製作費の24億円をかけた『スチームボーイ』を発表。興業収入では失敗してしまうが、『鉄腕アトム』を彷彿とさせる内容で話題となる。2007年には漆原友紀の『蟲師』をオダギリジョー、蒼井優、江角マキ子など豪華キャストで実写映画化。原作ファンや内容そのものに対しは酷評を受けるが、表現が難しい“蟲”を独特の映像美で描き切った。
ちなみに2005年にフランス政府から「芸術文化勲章シュバリエ」を授与されている。
2019年7月4日の「Anime Expo 2019」では一気に3つもの新規プロジェクトが発表された。
1つはAKIRAの新作アニメ化、もう1つは完全新作映画「ORBITAL ERA」の製作、最後の1つは表現者として世に出た1971年の漫画デビューから、全ての作品や発言を年代順に収録した完全版単行本の大全集を出版するプロジェクト「OTOMO THE COMPLETE WORKS」(大友克洋全集)の刊行発表だった。
この後1年以上何の音沙汰も無かったが、このうち全集についてはきちんと編纂作業が行われていたようで、2021年1月7日に公式Twitterがオープン、同年中に刊行開始予定として単行本未収録(かつ当時は国立国会図書館にも未収蔵)のデビュー作「銃声」の冒頭部分を用いたティザービジュアルが公開された。
刊行ペースは非常に緩やかではあるものの、2022年1月21日の配本第一弾となる第8巻『童夢』から始まり、主に2~3か月に2冊程度の割合で発売、2023年7月には、ビジュアルに使用されていた待望の第1巻の『銃声』が発刊され、大友克洋の習作を含めた初期単行本未収録作品はほぼ完全な形で単行本化を達成した。なお、銃声の単行本は国立国会図書館に2冊納められたため、2023年9月13日以降は東京本館のほかに京都関西館でも利用が可能となっており、掲載誌切り抜きのために未収蔵状態が続いていた「銃声」「親友」が国会図書館で読めない事は完全に過去のものとなった。
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掲示板
81 ななしのよっしん
2023/10/04(水) 01:55:34 ID: 9FSbMV9cym
ちょっと気になったのは最後の爺のアップで歯並びが良すぎてなんだか笑ってしまった
82 ななしのよっしん
2023/10/25(水) 21:47:14 ID: 2UcFxTeA3D
「AKIRA」大友克洋氏、Xにて新作マンガ制作を示唆するコメントと画像をポスト
https://
83 ななしのよっしん
2024/05/14(火) 03:36:34 ID: sKEGF0FUrB
少し不躾だけど、大友が日本の漫画の新時代を築けたのって本人の立体構造を想起できる視点やそれを写せる腕前、SFマインド、メビウス、ニューシネマみたいな新しい風の力もあると思うけど、「そこまで文章や脚本が巧みじゃない」からこそ、あの筋より雰囲気、キャラクターよりそれとそれを取り巻く写実という画風に辿り着いたという環境もある気もする。
実際、手塚治虫や石ノ森章太郎、白土三平や水木しげる、梶原一騎は絵も達者だが何より台詞回しが流麗で、文学的な叙事、叙情に溢れている。藤子不二雄や横山光輝の筋書きの巧みさは今でも褪せない。
そういう怪物の犇めく世界で彼らほど文学的な才が無い大友はだからこそ、彼らを超えたパースペクティブや空間に隠れる何かに対する言葉にならない「直感」を絵に描いていったのかなと
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最終更新:2025/01/11(土) 08:00
最終更新:2025/01/11(土) 08:00
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