此とは、此れ(これ)、此方(こなた)、此方(こっち)、といった近称の指示代名詞に使われる漢字である。
漢字として
- 意味
- これ、この、ここ、このように、ここに、というように、もっぱら近称の代名詞として用いられる。もともとの意味はよく分からない。ただ此を声符とする漢字には細小の意味があるので、それが原義ではないかといわれている。
- 代名詞としての用法は、〔詩経〕や〔書経〕にも見られ、中国戦国時代の金文(南疆鉦)にもあり古くからある。
- 字形
- 〔説文解字・巻二〕に「止まるなり。止に從ひ匕に從ふ。匕は相ひ比次(ならべる)なり」とあり、会意としている。〔説文〕は匕を比の意味であるとしている。ほかに匕は牝の字の匕と同じくマンコであり、此は雌の初文である説(〔六書疏証〕)、匕を声符とする形声説がある。
- 音訓
- 音読みはシ(漢音、呉音)、訓読みは、ここ、これ、この。
- 規格・区分
- 人名用漢字である。JIS X 0213第一水準。2004年に人名用漢字に採用された。
- 部首
- 此は〔説文解字〕では部首である。啙、㭰、些が属する。
- 声符
- 此を声符とする漢字には、姕、呰、㧗、茈、柴、祡、疵、眥、紫、訾、鈭、貲、雌、𧺼、觜、𩢑、𪕊、鴜、鮆などがある。
- 語彙
- 此岸・此君・此若・此中・此道
異体字
関連項目