性教育を問う(1)
子どもや若者への性暴力が社会問題となる中、現在の日本の教育では、子どもたちが性に関する十分な知識が得られないと訴える声があがっている。小中学校の学習指導要領には性交に関する記述はなく、「性交を教えてはいけない」と考える教員は多い。一方、世界では人権尊重を基盤に、性交を含めて幅広く性を学ぶ「包括的性教育」が広がる。識者らは「自分の体も相手の体も大事にできるようになる」として、日本での実施を求めている。(塩入彩、島崎周、杉原里美)
講演まで、あと1週間に迫った日のことだった。
全国各地の学校で性教育の講演をする埼玉医科大助教で産婦人科医の高橋幸子さん(48)は今年2月、関東地方の公立中学校から性教育の講演をキャンセルしたいとの連絡を受けた。
講演は中学3年生向けで、半年前から日程を決めて調整を進めていた。学校側の窓口の教員からは「(生徒たちに)これまで性教育をやっておらず、急にいろいろ教えたら混乱するから」と説明された。
思い当たったのは、事前に送った当日のスライドだ。
スライドには、性交を描いた…