http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0808/11/news013.html
ネットで話題のライフネット生命。掛金が今までの国産生保と比べて安いんだけど、どれほど凄いの?って話。
実はもっと安い医療保険がある
オリックス生命の医療保険CUREはライフネット生命よりも同条件下での掛金が安い。例えば30歳での掛金は
・オリックス生命:3,380円 (年払いだと39,560円でさらにお得)
・ライフネット生命:3,737円
条件:60日型1入院1万円。
手術給付金はオリックス20万円:ライフネット10万円。
通産支払い限度日数がオリックスは1000日:ライフネットは1095日。
死亡保険はライフネットが安い(けど、もっと安いところもある)
3000万円の死亡保険で30歳加入、保障期間30年間の掛金
・オリックス生命:7,680円
・ライフネット生命:7,174円
これは死んだらこれだけ出るって保険なので、掛金以外あまり気にすることがない。自殺は保険金出ないのが原則なので、ご注意を。
結論
上記の限られた例から掛金最安値を目指すなら、オリックス生命の医療保険とライフネット生命の死亡保障の組み合わせが良い?
(ライフネット生命と同様に、ネット販売メインでやっているSBIアクサ生命(現ネクスティア生命→2013年5月アクサダイレクト生命へ社名変更予定)なんてのもあったので調べてみると、30歳男性、3000万円の死亡保障、60歳まで継続という同条件で:7050円とライフネットよりも安く、リビングニーズ特約もついており、かつ解約返戻金まである(ライフネットはリビングニーズと解約返戻金が無い)保険も存在するってのを追記しておく。)
掛金の安さに騙される落とし穴
で、ここからが保険に入る上で一番大事なところ。
そもそも保険に入るのは、自分が支払うことの出来ないリスクに備えるために入る。例えば、小学生くらいの子供がいる状態で自分が死んだら、その子供が生活して行くことが出来なくなると不安があれば、その子が働けるくらいの歳になるまで、生活出来る分くらいのお金や学費を残してやりたいと考えるのが親心。なので、子供一人につき2000〜3000万円くらいの死亡保障は見積もっておきたい。これでぽっくり死んでも大丈夫。
本当の問題は死ぬに死ねない時
あっさり死んで保険金ゲットなら話は早いが、世の中にはもっと最悪の事態がある。つまり、事故などに巻き込まれて、生きているけど寝たきりでまるっきり動けず、働くことが出来なくなったにも関わらず、病院の入院などの費用がどんどん増えていく状態。つまり、収入0で支出だけが増え続ける状態。この状態に陥ると、死亡保障はまるっきり役に立たない。
統計によれば、一入院につき、日に約1〜1.5万円程度の出費がかかるらしい。これを自己負担で賄おうとするのは殆どの人にとっては至難の業。高額医療費は払い戻しが受けられますが、そもそも払い戻しよりも先に、お金の支払いがあるわけです。順番は逆になりません。ついで言えば、医療費がある程度払い戻しされても、寝たきりのあなたが稼がなければならなかったお金とやらは、あなたが寝ている間には当然稼げないわけです。つまり、あなたの働けない期間に相当する分の収入を賄うのが、入院や手術などにお金が出る医療保険であると言えるでしょう。(平成19年に制度が改正になって、社会保険庁の窓口に事前に高額療養費限度額適用認定証の申請をし、それを所定の医療機関の窓口へ提示すれば、高額医療費の支払いは負担限度額(平均的なサラリーマンなら約8万円~/月)を支払うだけで良くなった。が、例えば保険適用外の入院中の食費やらなんやらは別途自腹となるため、長期入院が続けば、個人で負担するのにはちょっと重い金額となる。)
で、その安い保険とやらは役に立つのかね?
ここで今回の安い保険の補償内容について見て行きます。内容を見れば、1入院につき1万円の60日型とあります。
これは、何らかの怪我、もしくは病気で入院した際に、1入院につき最大で60日まで保障される保険と言う意味です。で、この60日を1単位として、最大で1000日分まで保障されるというわけです。
決して、1入院が1000日分まで保障されているわけではありません。
これはどういうことかというと、例えばガンになって入院するとします。手術を受け、50日で退院したとします。この状態で保険金を請求すると50日分の入院費+手術金(10万円とします)で合わせて60万円があなたの口座に振り込まれます。で、一ヶ月くらい生活をしていたら、どうもまだ体の調子がおかしいってことで、再度病院で検査を受けると、ガンが再発していることが分かりました。当然すぐに入院します。再手術を行い今度は30日で退院しました。ここで再度保険金の請求をすると、今度は10万円しかもらえません。
理由は、契約内容に1入院につき最大60日と書いてあるからです。つまり、同じ病気や、最初の病気が原因で再入院した入院については、最大で60日しか保障されないのです。仮にあなたが、そのまま100日とか入院する羽目になっても、保険金が出るのは最初の60日分までです。
通産支払い限度日数1000日って何?
通産支払い限度日数は他の病気や怪我で入院した場合には、別の1入院と見なされるので、その場合はさらに60日間の入院保障がうけられるということです。で、この保障日数の合計が1000日と言うわけです。また、同じ病気が原因での入院でも、最後の退院から180日以上の期間が開いていれば保障される規定になっている場合が多いです。つまり、胃がんで60日入院し、それから1ヶ月後に再発で入院しても保険金は出ませんが、約半年(180日)以上経ってから再度胃がんで入院した場合には、その入院は別の1入院としてカウントされ、そこから60日分の入院は保障されます。また、胃がんで60日入院し、退院した一ヶ月後に、交通事故で入院した場合には、これは別の怪我や病気としてみなされるので、保険金が支払われます。これが60日型保険の罠です。
結局、60日型保険って役に立たない糞保険
60日型保険が役に立たない糞保険である理由は簡単です。同じ病気や怪我で寝たきりになった場合、最大で60日分しか保障されないからです。最大で60日分しか保障されないのでしたら、
60日 x 1万円 + 10万円(手術金)= 70万円
しか保障されないと言うことになります。言い変えれば、
貯金が70万円以上ある人は、この保険に入る意味がない
ということになります(これは、
ライフネット生命の副社長ですら自身のまとめの中で同意しております)。よって、ライフネット生命やオリックス生命の保険の医療保険は、安いけど糞です。少なくとも貯金が70万円以上ある人にとっては糞です。
ただ、死亡保障は自分に子供がいる場合には便利です。これが安いのは嬉しいことです。独身の人にはまるっきり無意味な保障ですので、入ることは絶対にオススメしません。無駄金です。
役に立つ保険って何よ?
役に立つ保険ってのは、自分が払えない金額に備えることが出来る商品です。一入院60日型の保険は役に立ちませんが、一入院1000日型といった保険は役に立ちます。何故なら、1000日間病院で寝たきりになっていても、それは保障されるからです。1000日入院するのに1000万円かかるとして、あなたは1000万円の貯金を持っているでしょうか?普通の人はそこまで蓄えがないでしょう。ですが、月々ちょっとのお金でそのリスクに備えることは出来ます。
仮に明日から1年間寝たきりになったらどうしよう?
と考えた時に、そのリスクに対処出来る商品は保険として価値があります。そのリスクに対処出来ない商品は、そもそも保険として価値があるどころか、あなたの貴重なお金を奪う詐欺商品です。そんな商品にお金を出すよりも、その分のお金を毎月銀行に貯蓄し、まとまったら投資に回したほうが遥かに豊かな生活が保障されることでしょう。
願わくば、目先の掛金の安さで保険を決めるのではなく、自分のお金を無駄にしない保険の入り方をして欲しいものです。
最後に
60日型の入院保障にお金を出すくらいなら、(都・道・府・県民)共済に入りましょう。毎月4000円程度で死亡保障(2000万円程度)と入院保障(180日型で5000円とかが多い)が付いて来て遥かにお得です。また、小さな子供がいる家庭の人は、必要な補償額をしっかりと計算して、まっとうな保険に入りましょう。
流れ的には、
結婚後子供がいない状態は共済で。
↓
子供が出来たら、保障の厚い通常の保険へ加入。
が望ましいかと思われます。とはいえ、若くて健康なうちではないと良い保険には入れませんので、ご注意を。年齢を重ねれば重ねる程、掛金と保障内容に優れた保険には入りにくくなります。特に病気で入院してしまうと、それ以降は良い保険には入れません。仮に嘘をついて入ったとしても、それは告知義務違反に当たり、いざ病気や怪我で入院した場合、保険金をもらうどころか、その場で契約を解除されてしまいます。下手すると保険金詐欺で訴訟対象になるかもしれませんので、健康で掛金が安い若いうちに、早めに保険を検討されることをお勧めします。
間違っても誰でも入れますという保険には入らないでください。誰でも入れる=誰にも支払われない保険です。
アメリカのAIUグループ会長の有名な台詞に『新規契約を3件取るよりも、1件も保険金を支払うな!』というのがあります。保険会社の中には、そういう会社があるって言うことも忘れないでください。
アメリカの酷い保険会社の実態についてはマイケル・ムーア監督の『シッコ』を見れば早いのですが、日本で一時期騒がれた保険会社の不払い問題を見ると、実情がアメリカの保険事情と殆ど変わりなく(例えば交通事故で死んだのに、子供の頃の喘息を告知していなかったと言う理由で死亡保険金支払いを拒否といった例もある)、アメリカの例が笑えない状態となっています。
↓これとか酷過ぎる
帝王切開をしたらライフネット生命に入れないと言われた
これで仮に小児喘息とか患ったのを書き忘れたら死亡保険もらえなかったなんてことになったら、加入者浮かばれないよね。
以下、追加参照記事
↓単純な条件比較でより分かりやすいかも。
ライフネット生命と共済との掛金比較
ガン保険が役に立たないことについて
損保系医療保険の落とし穴
学資保険とか
蛇足的補足記事
さらに追記
保険会社をなくせば毎年18兆円の家計費削減(経済効果)が可能
そもそも保険会社は利益を出さなければならないので、都道府県でやっている共済と比べると部が悪い。なので、いっそのこと国の社会保障に組み込んでしまうのはどうだろうか?と考えている。保険のセールスに言われて入っただけで、実際には自分の必要の無い保障に入っている人も多そうだし。そうした無駄を無くすだけで、上記のリンクの単純計算で毎年18兆円の経済効果が期待出来る。国の定額給付金の予算が2兆円なのだが、実にその9倍の経済効果が期待出来る。
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シッコ
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生命保険はだれのものか―消費者が知るべきこと、業界が正すべきこと
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生命保険の「罠」 (講談社+α新書)
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あなたの「生命保険」払いすぎ!