スコセッシ監督が明かす「ウルフ・オブ・ウォールストリート」完成への道
2013年12月30日 11:10
[映画.com ニュース] ゴールデングローブ賞2部門ノミネートを果たした「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で、レオナルド・ディカプリオと5度目のタッグを組んだマーティン・スコセッシ監督が製作の経緯を明かした。
スコセッシ監督は「私が参加したのは……確か、レオ(ナルド・ディカプリオ)から台本をもらったんだったと思うよ。それから、テリー(脚本のテレンス・ウィンター)に会った。彼とは確か、テレビシリーズの話から始まって、あれは『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』になったね」と振り返る。
実在した“ウォール街のオオカミ”、貯金ゼロから26歳で証券会社を設立し、斬新なアイデアと天才的な話術で巨万の富を得た株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの破天荒な人生の映画化を望んだのは、ディカプリオだった。執念で映画化権を買い付け、全幅の信頼を寄せるスコセッシに白羽の矢を立てたのだ。
だが、事は簡単には進まなかった。スコセッシ監督は「とにかく、この台本を読んだ。人から台本をもらった時には、必ずしもすぐに返事をするとは限らない」と続ける。「『キング・オブ・コメディ』では引き受けるまでに10年掛かったが、それぐらい時間が掛かることも珍しくはない。『レイジング・ブル』では、6年か7年。作品をどう手がけるか、スタイルを模索しなければならないからだ」。
念願のアカデミー賞監督賞受賞作「ディパーテッド」を撮り終えたばかりだったスコセッシ監督は、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」に向けての資金を集めようとするが、「スタジオはかなり消極的だった。私は『ディパーテッド』でも苦労したし、もっと手の掛かった作品も経験した。問題はスタジオを相手に(その作品が)戦うだけの価値があるかどうかだ。どちらがいいとか悪いとかではなく、スタジオ側が必要としているもの、我々フィルムメーカーがやりたいこと、マーケットにどんな作品を提供するのかを考えなければならなかった」と、困難な状況だったことを明かす。
そして同時期に、金融市場が崩壊する。「2008年の9月だった。それで、『シャッター アイランド』を作ることにしたんだ」と、明かす。その後、こん身の企画である「ヒューゴの不思議な発明」を製作。「それから何度も手をつけようとしたが、私は個人的な理由でどうしても『ヒューゴ』を優先して完成させたかったんだ」と語った。
「ヒューゴの不思議な発明」完成後、ついに「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の企画が結実する。「もう一度チャンスにめぐり合えたんだ。私はやっと、この題材にどうやってアプローチするか、その方法を見つけたと思った」と言う同作は、ディカプリオにとっても、スコセッシにとっても念願のプロジェクトだったことがうかがえる。そして、度肝を抜くエピソードがダイナミックに駆け抜ける作風は、これまでのスコセッシ作品とはまた違った様相を呈する。「私の他の作品とは違った観点で取り組めると思った」と言う手腕が、存分に発揮された野心作になっている。2014年1月31日から全国公開。