雑多ブログ（上海赴任のぼやき）

初めての大きな試合を前に、陽介は深夜のジムに一人残っていた。次の日、プロのバスケットボール選手としてのデビュー戦だ。練習の合間に感じる心のざわめきと、限界に挑む身体の疲れが入り混じり、頭の中がまとまらない。これまでの努力が本当に報われるのか、不安が胸を締め付ける。

「お前、どうするんだ？」コーチの言葉が蘇る。試合前の一週間、陽介は練習で何度もミスを犯し、悔しさを感じていた。その度にコーチは言った。「結果を恐れるな、君の成長を信じろ」と。

試合の舞台が近づくにつれて、その言葉の意味が分かるような気がしてきた。自分を信じること、そして何より自分の力を出し切ることが、勝利への唯一の道であることに気づいた。

ジムの明かりが煌々と灯り、ひんやりとした空気が体にまとわりつく。陽介はバスケットボールを持ち、リングに向かってシュートを放つ。ボールは空中で旋回し、音もなくネットを通り抜ける。その瞬間、心の中で何かが静かに決まった。

「明日は、やり切る。」

彼はリングに向かってもう一度シュートを放った。今度は少し力を抜いて、自然な流れでシュートを放つ。それがきれいに決まり、満足そうな表情を浮かべる。自分が、確かに前進している感覚があった。

その瞬間、携帯電話が鳴った。画面には、母の名前が表示されている。陽介は少し躊躇した後、電話を取った。

「陽介、お前、明日が試合だろ？頑張りなさい。お前がどれだけ努力してきたか、私は知っている。失敗しても、何度でも立ち上がりなさい。」

その言葉を聞いた瞬間、陽介の胸の奥が熱くなった。母はいつも、どんな時も彼の背中を押してくれた。自分の気持ちが固まった。明日、どんな結果が待っていようとも、自分がやるべきことをやりきる。それが大事だと、心の中で誓った。

練習が終わると、陽介はジムを後にした。外は冷たい風が吹き、夜空には無数の星が輝いていた。明日、彼はその星々に向かって、全力を尽くすつもりだった。