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ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。
- 作者: フミコフミオ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/09/27
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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内容紹介
独自のリズム感と文体で中毒者続出!伝説の会社員ブロガー衝撃のデビュー作笑いあり、涙あり、学びあり、感動ありの新感覚本!
すべての会社員の気持ちを代弁してくれると鬼共感の嵐で超話題!
現代における「生きづらさの正体」に迫る!
「働くのがつらいが会社をやめるわけにもいかず悩んでいる」
「いつも悩みがモヤモヤして不安でしんどい」
「人間関係でへこんでしまい落ち込むことが多い」
「ストレス社会におしつぶされ本来の自分を出せずに他人に振り回されている気がする」
「このままの人生で本当にいいのか、いつも自問自答している」こんなお悩みをお持ちのあなたにおすすめ!
『はてなブログ』の人気ブロガー、フミコフミオさんのメジャーデビュー作。
ブログの人気エントリを集めたものではなくて、書下ろしで300ページ。もう、ブログをまとめたような「ブログ本」では、どんなにブログに人気があっても、売れない時代なんだろうなあ。芸能人のブログ本も、ほとんど見なくなりましたし。
僕もフミコさんのブログをずっと読んでいるのですが、この本を読みはじめて、ちょっと意外な感じがしたのです。
この本でのフミコさんは、ブログでの「困った同僚や上司ネタ」や、話題になった「給食業界ネタ」をかなり抑えていて、「普通の中年男性が、何を燃料に日常を生きているのか」が主なテーマになっています。
本書には、僕が生きているうえで思わず「きっつー」とつぶやいてしまった日々の出来事や怨恨、そしてそれらをどのようにやり過ごしたのか、ほぼそのまま書いた。僕が生きているうえで感じ、覚えたものなので、人によっては「自分はその点についてもっと深刻に考えてます。著者は軽く考えすぎ。何がきっつーですか! もしかしてバカなのですか」と批判的な感想を持たれるものもあれば、「ぷぷーっ! こんなのツラさに入らない」と笑われてしまうようなものもあるだろう。
フミコフミオさんの文章は面白い。独特のリズム感があって、癖になります。
ただ、正直に言うと、僕はフミコさんが書いているものを読んでいて、「なんだか引っかかる」というか、「素直に笑えない」ことが少なからずあるのです。
彼は、仕事をするフリすらせず、堂々とプロ野球チェックをしていた。この行動は、よく言えば暇を持て余している、悪く言えばサボっているということ。つまり今日炸裂予定の時限爆弾は存在しないということ。本日のようにプロ野球チェックをしている日はだいたい安全。だが、まだ安心はできない。爆弾テロの危険性はゼロではない。あれはいつだったろう、プロ野球情報をチェックしていても特大の時限爆弾が炸裂したことがある。午後5時57分、帰宅の2文字が頭にチラつきはじめたときに、それまで暇そうにしていた彼が「ちょっといいですか……」と声をかけてきたのである。「え? 今ですか?」あんたすげえ暇そうにしていたのになぜ今声をかけてくるのよ、嫌がらせですか、バカなんですかという意味を込めて僕は言った。もちろん彼には伝わらない。
「実は外出先から戻ってきて駐車する際、思い切り車の側面をコスってしまいました。申し訳ありません部長」と彼は告げた。
「会社に戻ってきたのはいつでしたっけ?」
「16時半です」
「現在の時刻は?」
「17時58分です」
「1時間半ありますね。その間、何をしていたのですか?」
「悩んでいました」
きっつー。
それから僕は、驚くべきことに「今日中に事故報告を総務にあげなければいけません」と僕が言うべきセリフを口にしたのである。プロ野球情報チェックと事故報告とどちらが重要なのか、そして、どちらが今やらなければならないことなのか、まったくわかっていない彼に僕は絶望した。
ああ、こういう人って、いるよなあ、ほんと、嫌がらせかって思うよ……
と、ひとしきり共感したあとで、僕は憂鬱になったのです。
僕自身もこんなふうに自分の失敗や頼み事をなかなか言い出せない。悪気はないつもりなのに、ギリギリの時間になってようやく勇気を振り絞って、電話したり報告したりするようなことがあったのを思い出したので。
そういうのは、結果的に相手に迷惑をかけるだけ、というのは、承知していたつもりなのに。
言われる側にとっては「きっつー」だし、「すぐに報告すべき」ですよね。でも、「なかなか言い出せない」ということが、僕にもあった。
フミコさんは、優しい人だと思うから、たぶんこういう問題児にも、その場で大声で責めることはなく、その鬱憤をブログで昇華しているのではなかろうか。
どっちの立場も、今の僕にはわかるような気がする。
だから、笑えない。
こんなダメなやついるよね、きっつー!っていう言う側よりも、言われる側のほうに、自分をあてはめてしまう。
そういう「自責思考」みたいなのは、自分を苦しめるだけではあるし、40代後半になってようやく、そういう負のシンクロを自分の中でブロックできるようになってきたのです。
上司の酒の誘いを断ってパチンコ屋に行っていた後輩、というのも、僕はまさに「周りに気を遣ってお酒を飲むより、パチンコ台の前でボーっとしていたい」人間なので、「ああ、これを読んで、人間よりギャンブルを選ぶ最低のやつだ」って、みんな思っているんだろうなあ、と悲しくなりました。
同世代だけに、フミコさんが拠って立っている価値観というのは僕には理解できますし、それは、今の若者には「古い考え方」だと見なされるのかもしれません。
それでも、人は、これまでの自分の価値観を全部消して新しいOSに変えることはできないので、マイナーアップデートで適応していくしかない。
この本のなかで、僕がいちばん印象に残ったのは、フミコさんが「人の気持ちはわからない」ということについて書いている文章でした。
大人になった僕は、仕事上の人間関係で大きな問題が起きそうなときを別にすれば、「人の気持ちをわかるようになれ」と誰かを注意することはない。人の気持ちはわからないと信じているからだ。
実生活で「人の気持ちがわからない人間だ」と言われることは、ほぼなくなっている。だが、そのぶんというわけではないが、ツイッターやSNSで、どこの馬の骨ともわからない御仁から、「人の気持ちがわからないお前みたいな奴は死ねよ」と言われるようになった。発言主が、人の気持ちをわかっているように見えないのは、実に興味深い。面識のない人間から「死ね」「消えろ」「カス」と言われる、その恐怖。なんて冷酷で、世知辛い世の中だろう。アベノミクスのせいだろうか。令和という時代のせいだろうか。
「人の気持ちがわかる人間になれ」というのを、「人の気持ちの中身を理解しなさい」と誤解している人が多すぎる。人の気持ちのわかる人間とは、人はそれぞれ、異なる考え方や感じ方をするものだと理解しましょうねという意味である。僕に言わせれば、「人の気持ちをわかるようになれ」は、ただの処世術にすぎない。世の中をうまく渡っていくためには、平均的な考え方、感じ方に合わせて態度を決めていくほうが楽だし、早い。多くの場合、それでいい。だが、どんな人生であれ、どうしても譲れないときが必ずある。そういうとき、自分の考えていることや思っていること、感じたことが平均的なそれらと乖離しているとわかっていながら、自分を貫くのか、どうか。それだけのことなのである。
「そんなことはない。人の気持ちはわかる。その人の立場になってシミュレーションすればいい」などと言う人がいる。それは想像の産物で、その人の気持ちではない。言い方を換えれば、「こういう気持ちであってほしい」という願望が変質したものだ。僕はときどきこんな悪い質問で反撃する。
「通り魔や連続無差別殺人犯の気持ちがわかりますか?」
僕も「あなたは人の気持ちがわからない」と、よく言われる人間なので、この本でフミコさんのこれまでの経験や考え方を知って、なんとなく合点がいったような気がしたのです。
僕は、他者が自分の気持ちをわかってくれるという幻想を持っていない。「ああ、こいつは人間嫌いの哀れな人間。心が古い自転車のブレーキのようにすり減ってしまっている。だからキーキー猿のように騒々しいのか」という悲しい話ではない。多くの人と会う営業の仕事をしているうちにそういう幻想はなくなってしまったのだ。営業という仕事は、相手との会話から相手の求めているものを引き出すのが仕事。お互いにわかっていない相手との関係が日常で、わかってもらう仕事だからこそ、わかっていないという出発点を自分のなかで持つことが大事なのだ。
フミコさんは、長い間、「人の気持ちがわかる人間になりたい」と苦闘してきたのではなかろうか。
「人の気持ちがわかる沼」は、ひたすら深くて、底がない。
そこでおぼれかけた末に、こう考えるようになったのではないかなあ。
「気持ちがわかる」ことより、「落としどころをみつける」「状況や環境を改善する」ほうが人を生きやすくする。
もちろん、「あなたの気持ちはわかりますよ、という演技」が適切な場合もあります。
僕の経験に勝手にあてはめては失礼なのは、重々承知してはいるのですが。
その沼にハマったときの絶望感を想像することさえしない人たちが、処世術や他者を攻撃するための万能ワードとして口にする「あなたは人の気持ちがわからない」は、本当に薄っぺらい。
「人の気持ちがわからない沼」で、もがき苦しんだサバイバーだからこそ、「どうせお前には俺の気持ちなんてわからない」と嫌味を投げつけてくるだけで、自分でそこから脱出しようという努力さえしない人に、厳しい態度をとっている(ように見える)のかもしれない。
笑えた!面白かった!というより、生きるのがけっこう厄介だけれど、それを文章にすることで、なんとかやり過ごしている人が、ここにもいるんだな、と僕は思いながら読みました。
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