「4度目の逮捕」〜なぜ繰り返すのか
女優の三田佳子さんの次男、高橋祐也容疑者が覚せい剤使用容疑で逮捕された。これで4度目の逮捕になる。
このニュースを聞いて、ほとんどの人は「またか」と思ったことだろう。そして、呆れた人も多いだろう。なぜ覚せい剤使用は、こうも繰り返されるのか。
答えは簡単。覚せい剤とはそのような薬物だからだ。
一度使ったら、なかなかやめられない。やめたくてもやめられない。言うまでもなく、これは薬物の依存性ゆえであり、だからこそ法律で禁止されている。
使用初期には大きな快感が得られるため、それを求めて乱用するのだが、依存が進むと徐々にそのような快感もなくなっていく。それでもやめられない。
また、生活が破綻しても、心身の異常を来してもやめることができない。それが依存性のある薬物の恐ろしいところだ。
では、一旦、薬物に手を出すと、死ぬまでやめられないのだろうか。
そんなことはない。きちんとした治療を受ければ、薬物依存を克服することはできるし、現に多くの人がそうしている。
刑罰だけの効果はナシ
しかし、逮捕したり、刑務所に入れたりするだけでは、薬物依存は治らない。
「懲らしめたら治るだろう」というのは、素人考えであり、懲らしめても依存症には効果がない。それは、本人の反省が足りないからではない。
刑罰に治療効果がないことは、数多くの研究が示している。つまり、刑罰には依存症に効果がないというエビデンスがたくさんある1。
もちろん、刑罰によって反省する者もいれば、反省しない者もいる。しかし、反省したところで、依存症は治らないのである。
簡単に言えば、依存症と関連するのは、大脳辺縁系という脳の奥深い部位である。ここに報酬系と呼ばれる神経回路があり、それはわれわれの快感の中枢である。
一方、反省するのは理性の働きであるから、これは脳の前頭前野に関連している。理性の働きはよく筋肉に例えられる。それはある瞬間には強い力を発揮できても、その力を持続することは困難である。また、ストレスや抑うつ状態のときなどは、理性の力は弱まってしまう。
刑務所を出たばかりのときは反省し、「やり直そう」「二度と薬物には手を出さない」と誓っても、山あり谷ありの人生のなかで、理性の力が弱まってしまうときは必ずある。そのときに、大脳辺縁系からの「悪魔のささやき」に負けてしまうのである。
われわれだって、落ち込んだときや寂しいときに深酒をしてしまったり、ダイエットに失敗したりするのと同じである。
もちろん、日本の法律では覚せい剤の使用は犯罪であるため、法律に従って処罰されるのは法治国家として当然のことだ。
しかし、刑罰だけでは効果がないという科学的エビデンスを知れば、刑罰に加えてほかの対処が必要であるというのは自明のことである。
それが、治療である。