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「闇営業」芸人とメディアに伝えたい「オレオレ詐欺」被害者家族のホンネ

謝罪よりも必要なことがあるはずだ

連日報道が続くお笑い芸人の「闇営業」問題。そのニュースを見るたびに、経営コンサルタントの竹内謙礼氏は、複雑な心境になったという。なぜなら、竹内氏の家族が、かつて特殊詐欺(振り込め詐欺、本稿では便宜的にオレオレ詐欺の表現も使用)の被害にあったから。
芸人たちを一方的に責めるニュースに対して違和感を覚える竹内氏が、被害者家族という立場からホンネを語った。

責められるべきは「騙された」人たちか

事務所を通さず、反社会的な人達から仕事を請け負ったことで、多くの芸人たちが謹慎処分や活動自粛となった。メディアの論調を見ると「なぜ闇営業なんかしたんだ」「仕事を受けた芸人が悪い」と、芸人本人たちへの責任論に終始している。しかし、多くの意見が特殊詐欺の被害者とは縁遠い人達の言葉ばかりで、実際に被害にあった人たちの視点で今回の事件が語られることはほとんどない。

私は経営コンサルタントという肩書ではあるが、実はオレオレ詐欺の被害にあった母親の息子という立場でもある。2012年の年末、母親は巧妙な手口にひっかかり老後のために貯めた200万円を特殊詐欺の集団に持っていかれてしまった。

Photo by iStock

この手口に関しては、当時、怒りに任せてブログにも書かせてもらったので、もし、興味がある人がいたら一読してもらいたい。

・母親がオレオレ詐欺の被害者になりました。

この辛い事件後、オレオレ詐欺のニュースが幾度となくメディアに取り上げられたが、気になることはほとんどなかった。過去の話だし、犯人は捕まるわけでもないので、自分の中では風化していく記憶のひとつでしかなかった。

しかし、今回の闇営業事件に関しては、心の中でザワザワとする気持ちがあった。問題になっている特殊詐欺の集団と、うちの母親を騙したオレオレ詐欺の集団とでは別の犯人であることは明らかだったが、なぜか報道が流れるたびにイラッとする気持ちが湧いて出てきてしまうところがあった。

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そんな気持ちになるのは、おそらく流れたお金の行き先がイメージしやすいからだと思う。「母親が一生懸命貯めたお金が、宮迫さんの高級腕時計になったのか」「母親の老後の生活費に充てるはずのお金が、ガリットチュウの福島さんの生活費になったのか」と、勝手ながら想像してしまうことが、余計に気持ちにひっかかってしまうところがあった。

しかし、闇営業を犯した芸人たちに対して、恨みや憎しみがあるというわけではない。むしろ、私の母親と同じ被害者であり、謹慎処分は可哀そうだという気持ちのほうが強い。

「相手が反社会の人だと分からなかったのか」「会社に黙って仕事を受けるほうが悪い」と、芸人たちを責めるニュースが出れば出るほど、母親がオレオレ詐欺にあった際に、「騙されたお前の母親が悪い」「あなたのお母さんはボケてたんじゃないか」と言われたときのことを思い出してしまい、直視できないところがあった。

被害者の立場から言わせてもらえれば、悪いのは特殊詐欺をやった輩であって、そこで芸を披露した芸人たちではないという思いのほうが強い。今、メディアと一緒になって闇営業をした芸人たちを責める人達は、オレオレ詐欺の被害者である私たち家族から見れば、「騙されたほうが悪い」と攻めている人と同じにしか見えない。

もちろん、金銭を受け取ったと嘘をついたことや、脇の甘さがあった彼らにも非はある。しかし、根本的なところでいえば、彼らもうちの母親と同じで騙された人たちなのである。

これはオレオレ詐欺の被害にあったことがある人の視点と、そうでない人の視点の永遠に噛みあうことのない考え方の相違といえる。だが、被害者の家族から言わせてもらえれば、闇営業をやった芸人たちを責め続けることは、オレオレ詐欺の被害者を責めて傷つけていることと、そんなに大差はないというのは理解してもらいたい。

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