なぜ「無気力な生徒」が増えたのか…“低偏差値高校”から見える日本の教育の「大きな問題点」
文部科学省によれば高校への進学率は98.9%にも及んでおり、進学が準義務化していると言える高校教育。しかし高校間での偏差値の序列が形成されているため、高偏差値高校と低偏差値高校では学習指導の状況に雲泥の差があり、後者では悲惨な現場を経験してきた教師も少なくないという。
なかでも、6月25日にTwitter(現在、X)へ投稿された、ある高校教師による下記のツイートは、5.4万いいね(8月2日現在)を獲得し、注目を集めた。
《学力の低い高校で教えてて何が辛いって、生徒が「知的好奇心」を全く持ってないこと。彼らの「面白い」は「瞬間的・感覚的に笑える」ということでしかない。習ったことがつながるとか、考えてみれば奥深いとか、苦労して分かる楽しさとか、そういうのが全然ない。勉強の面白さが一切伝わらない。》
法政大学キャリアデザイン学部教授の児美川孝一郎氏によると、1980年代のいわゆる「低偏差値校」の生徒は、授業態度が悪く、非行に走るような「ヤンキー」だったのに対し、最近の「低偏差値校」では学習意欲がなく活力がない生徒が増えているという(以下、「」内は児美川氏のコメント)。
【前編】『「低偏差値高校」にヤンキーはいない…40年前からガラッと変わった「悲惨な実態」』
高校で重荷となってしまう、小中学校の負の遺産
しかし、知的好奇心や学習意欲が低い高校生が生まれてしまうのは、高校の教育現場の問題というよりも、小中学校時代の教育現場の問題が大きいと児美川氏は指摘する。
「基本的に義務教育は、自動的に学年が上がっていくため、留年の心配がない反面、どこかの単元でつまづくと学習内容が定着されないまま進級してしまうというデメリットがあります。つまりその学年時点で獲得しておくべき内容が身に着いていないので、進級、進学しても次の学習内容が理解できないということがよく起こるのです。
そうなると、学ぶことで得られる成功体験も乏しいものとなり、“きっとうまくいく”“自分ならやれるはず”と考え行動できる自己認識能力である『自己効力感』が醸成されません。結果、勉強への興味も薄くなり、知的好奇心が芽生えない子どもに育ってしまうのだと考えられます」