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創業70年の名門・船井電機、最期の日を詳細レポート! そのとき従業員は

なぜ倒産 運命の分かれ道 ⑪

帝国データバンク 情報統括部

時代の変化に応じてビジネスモデルを変えられなかった企業は、円安、資源高、人件費の高騰などに見舞われ、たちまち資金繰りに窮することになり、様々な形での倒産が急増している。

60年にわたって「倒産」の現実を取材・分析しつづけてきた日本最高のエキスパート集団が、2021~2024年の
最新の倒産事例をレポートした『なぜ倒産 運命の分かれ道』から連載形式で紹介する。

2024年10月24日 船井電機、最期の1日

液晶テレビなどの製造販売をしていた船井電機が、2024年10月24日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。船井電機といえば、前身は東証1部にも上場していた家電メーカー。昭和世代には懐かしいテレビデオなどの製造も行っていた。後に主戦場を海外に定め、北米市場を中心に事業を展開。米国大手ディスカウントストア向けOEMの液晶テレビを中軸に、北米では日本のテレビメーカーとしてトップシェアに輝いていた。

そんな大手家電メーカーが「破産する」との一報をつかみ、現地確認に向かった。

門扉が閉ざされた船井電機大阪本社

午後0時半

現地に到着。船井電機の本社は大東市中垣内にある。車の往来が常に多い大阪外環状線沿いに、約3400坪の広大な敷地に白を基調とした社屋が目を引く。正門前に商号が記載された看板がある。

一般的に破産の場合、こうした看板や正面玄関に貼り紙(通知書)が掲示されるケースが多い。船井電機の場合は正門前に警備室があることから、貼り出すなら正門前の看板付近だろうと思ったが、その時点で貼り紙はない。敷地内を見ても、従業員は普通に歩いており、「いま、まさに倒産した」という雰囲気は感じられない。

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そのため、いったん周囲の状況を確認するべく、会社の敷地を一周ぐるりと回ってみることにした。6分ほど歩き、敷地の北側に到着。こちらは閑静な住宅街に面しており、船井電機本社の勝手口のような古びた出入り口がある程度だった。建物内の照明もついてはいたが、異様な静けさが気になった。お昼時ということもあるだろうが、工場が活発に動いているような雰囲気はまったく感じられない。

次に敷地の西側に向かった。住宅街をすり抜けて8分程歩くと裏門があった。そのすぐ向こう側には綺麗なビルがそびえ立っており、最上階にはガラス張りの大会議室のようなものが見える。食堂だろうか。

「仮に破産ということになれば、従業員が一堂に集められるはずだから、この大会議室の様子には注意が必要だ」と心に刻む。

再度正門に戻ろうとした際に、船井電機の本社建物と同様の白を基調とした綺麗な3階建ての建物を発見した。1階エントランス前には、「船井電機株式会社 別館」との記載があった。しかし、そのビルの駐車場は鎖で施錠されており、駐車はできない。全体的な雰囲気としても使用されている気配はなく、寂寞としていた。

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