「その任は日経BP社の社員たちにやってもらうことになるでしょう。日経BPはグループ内で赤字の半分を抱え、永田町にあった自社ビルも売却し、希望退職を実施したほど苦境に立っている。すでに日経BPの編集者、広告担当者10名近くが、日経本社に"逆出向"しています。これはいわば先発部隊で、今後、順次、BPから逆出向組が来て、電子版のスタッフになるのでしょう」
(日経新聞OB)
そうは言っても、すでに24時間リアルタイムの電子版はスタートした。当面は少ない人数で仕事に当たらざるを得ず、予想以上にハードな業務に現場からは悲鳴が上がっている。
「24時間、夜中でも発信しなければならないうえ、何回も記事やタイトルを更新するから大変です。しかも、紙幅に制限のある紙の新聞と違って、電子版では文字量を気にせずに書けるので、上から『いくらでも好きに書け』と言われています。でも、こんなに電子版の記事作成に時間が取られたら、取材に行く時間もなくなってしまう」(日経新聞中堅記者)
この日経の新事業、低迷する新聞業界の起爆剤になるのだろうか。元毎日新聞記者でITジャーナリストの佐々木俊尚氏の見方は厳しい。
「電子版だけで月額4000円という金額は、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の年間89ドル(約9000円)と比較すれば、かなりの高額です。
しかもWSJが主なターゲットにしているのは、紙の読者と異なり、国外も含めた英語圏に住む人口14億人です。その中で経済情報が欲しい100万人が89ドルを払って電子版を読んでいる。
ところが、日本の人口は1億2000万人で英語圏の10分の1しかいないわけです。日経はスクープにも力を入れるそうですが、日経のスクープとは、会社の合併か人事情報でしょう。
年間5万円払ってまで、それを早く知りたい人は、そうはいないと思います」
大物記者はもういらない
新事業を確固たる収入源にする「産みの苦しみ」は、日経に限らず、困難を伴う。そこで現在、新聞各社が注力しているのが、大幅なコストカットである。日経でも「国内出張もなかなか行けなくなった」「コピーは紙がもったいないので両面使うように推奨されている」という声が聞かれた。
以下、各社の状況を順に見ていこう。
朝日新聞
「冬のボーナスは30%のカットだったし、来年度からは給与体系を抜本的に見直すということが、つい先日、会社側から提示されたばかり。それによると会社は月額平均10%弱のカットを考えているようです。
現在、我が社は5000人体制ですが、4月からは5%の人員削減で、早期退職を募集するという話もある。正式な通知はまだですが、この2年間で500人ほど削減し4500人にまで減らすのが会社の方針と聞きます」(中堅記者)