ピケティ本『21世紀の資本』は、この図11枚で理解できる
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トマ・ピケティの『21世紀の資本』が好評である。筆者は、kindle版の英語版を読んだが、山形浩生さんらの丁寧な日本語訳もある。ネットの上でpdf版を探せばある。この年末年始の休みに読むにはちょうどいい本だ。
『21世紀の資本』は反成長でも反インフレでもない
kindle版やpdf版で便利なのは、資料リンク(http://piketty.pse.ens.fr/en/capital21c2)を参照できることだ。そこには、本書に使われている図表が250枚以上もある。
本書は、分厚い学術書であるが、そのタイトルから、マルクスの資本論の再来を彷彿させる。しかし、ピケティ自身がいうとおり、本書はマルクス経済学ではなく、標準的な成長理論を使った、ごくふつうの経済学である。
本書は、政策提言を除けば、反成長でも反インフレでもなく、政治的な左も右もない。もし本書を政策提言のみを強調したりして、政治的な左の宣伝として引用していたら、あまり本書を読んでいないといえよう。
ただ、経済学といっても、データ満載の歴史書でもある。筆者は、歴史が好きであるが、従来の歴史書はデータが乏しく不満だった。ところが、本書は数量歴史書とも言うべき本であり、記述がデータに裏打ちされており、満足感が多い。かつて、Hargreavesの”The national debt”を読んで、データの豊富さに感動したが、欧米の歴史書でたびたび味わう感動だ。
本書のデータをよく見ると、資本主義は終わりだという、水野和夫氏の「資本主義の終焉と歴史の危機」が薄っぺらい資本主義批判の本に見えて、つまらなくなる。
水野氏は、100年デフレが続くとかいっていたが、アベノミクスでその主張は的外れだったことが示されている。資本主義が終わるというのは、利子率がゼロになっているということであるが、本書のデータでは、資本収益率は4~5%なので、資本主義は終わらない。
本コラムは、本書を読むにあたり、筆者が重要と思う表を11枚あげて、本書の概略がわかるようにしたものだ。
本書の目次は以下のとおりだ。
はじめに
第 I 部 所得と資本
第 1 章 所得と産出
第 2 章 経済成長――幻想と現実
第 II 部 資本/所得比率の動学
第 3 章 資本の変化
第 4 章 古いヨーロッパから新世界へ
第 5 章 長期的にみた資本/所得比率
第 6 章 21 世紀における資本と労働の分配
第 III 部 格差の構造
第 7 章 格差と集中――予備的な見通し
第 8 章 二つの世界
第 9 章 労働所得の格差
第 10 章 資本所有の格差
第 11 章 長期的に見た能力と相続
第 12 章 21 世紀における世界的な富の格差
第 IV 部 21 世紀の資本規制
第 13 章 21 世紀の社会国家
第 14 章 累進所得税再考
第 15 章 世界的な資本税
第 16 章 公的債務の問題
おわりに