意外なところが「アナログ」な上海の地下鉄
「交通強国の建設」は中国共産党が掲げる壮大な目標だ。
中国で最後の蒸気機関車が姿を消したのは2005年のこと。その後の10年で高速鉄道が全国を網羅し、総延長距離は2万5000キロにも達した。日本の新幹線の8倍超、実に世界一を誇る距離である。いまや「交通輸送の供給不足は解決し、中国は名実ともに交通強国になった」と中国は自認するようになった。

都市の地下鉄も急速な発展を見せた。
いまでこそ上海の地下鉄は総営業距離を644km(2018年3月)にまで路線を伸ばし、市民生活は格段に向上した。東京の地下鉄網の1.5倍(東京メトロ320km、東京都営地下鉄109km)といえば、その規模がイメージできるだろう。
しかし、そんな市民の足となる上海の地下鉄だが、まず改札口からして空港さながらのセキュリティチェックを受けなければならないことをご存じだろうか。“強行突破”する人も少なくはないのだが、乗客はみな手荷物をX線検査装置に通すことになっている。
そんな最新鋭のエントランスとは対照的に、改札そのものはアナログなレボルバー式の回転棒(以下写真)である。たまにタイミングを間違えて荷物が引っかかっている人を目にするので、日本のように最新鋭の機械式にしたほうが顧客の利便性が高まるのではないか。

ホームのゴミ箱を「トイレ替わり」にする人たち…
そんな地下鉄で日本人が最もカルチャーショックを受けるのが、ホームでたまに目にするゴミ箱をトイレ替わりにする子連れの姿だろう。
駅によってはトイレを設置したホームもあるが、それでもピクトグラムの表札をかかげてトイレの位置を教えてくれるほど、駅のホームは親切ではないことが背景にあるのかもしれない……。駅にトイレがあるのか、どこにあるのかが曖昧な中で、泣く子を抱えた親たちがやむなくゴミ箱を使っているわけだ。
このあたり、日本ではピクトグラムの表札が掲げられているのが当たり前のように思われているが、それがいかに顧客のことを考えた「おもてなし」であるのかと実感させられたりする。