強度の近視などで特別なレンズを使っても、追加料金なし。昨年には、軽量で耳や鼻が疲れにくい『エア・フレーム』を、レンズ代込み4990円という低価格で販売し、大ヒットさせたメガネチェーン『JINS』。'01年に創業され、店舗数は全国約70店舗、販売本数は業界2位と快進撃を続けるが、田中仁社長(47歳)の人生は波瀾万丈だ。
挑戦
中学の時、偏差値が同じレベルの同級生がいたんですね。その彼が何を思ったか「県の最難関校に行く」、しかも「滑り止めは受けない」と言うんです。先生にも「オマエには無理だ」と言われていたのですが、彼は猛勉強をして合格した。それが、後の私の人生に大きく影響したんです。


高校卒業後、'81年から前橋信用金庫(現・しののめ信用金庫)に勤務。'86年に転職し、'88年に服飾雑貨メーカーのジェイアイエヌを設立。
'01年に「JINS」チェーンを興してメガネ業界へ参入し、'06年、ヘラクレス市場に上場。
現在は同社ホームページでの販売促進にも力を入れる
起業家精神
チャレンジって、きっと体質なんですよ。チャレンジ体質の人は修羅場に突っ込んで行けますが、そうでない人はやる前から「自分には無理」と思ってしまう。それだけの差だと、中学の時にわかったんです。
縁
高校卒業後、地元・群馬の信用金庫に勤め、5年目に生活雑貨の企画・卸をしている取引先に転職しました。その1年後、同じ分野で起業し、サイフやエプロンなどを工場に作ってもらい、全国の小売店に卸し始めたんです。
父と子
父も商売をしていたので、もともと独立心がありました。ところが、父からは手厳しい教えを受けた。どんな工業製品でも、同じ商品を大量に発注するほうが、一個あたりの値段は安く作れますよね。
いわゆる・スケールメリット・です。だから父を保証人にお金を借りて、スケールメリットを活かした商売をしようと勝手に思っていたんです。しかし、父は「お前と心中するつもりはない」と連帯保証人になってくれませんでした。
今思うと、父の判断は正しいですね。リスクをとるのはいいんですが、連帯保証人が必要なほどの借金を抱えて失敗したら、再起不能になる。そして100%失敗しない商品などないんですよ。
夜の街
その後、安くて機能性に富んだエプロンを卸して大ヒットさせたのですが、人は余裕があると慢心するんですね。群馬の前橋で夜の街に入り浸っている間に業績が悪化し、スタッフに聞くと、もうエプロンに先はないと言う。
そんななか、状況が悪いからこそ、取引先の雑貨屋さんが「こんなバッグがほしい」と言ったのを「ふーん」では済ませませんでした。すぐ「安く作るなら中国だ!」と、単身、工場に乗り込みました。当時は商社を経由するのが当然だったのですが・・・その商品は大ヒットしましたよ。
座右の銘
以来、私は「人間万事、塞翁が馬」と思っています(笑)。あと「いつも適度にリスクをとり続けよう」とも思っています。意識的に、自分を崖っぷちに追い込むわけです。