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乱射、放火…世界の「凶悪事件」の犯人は、なぜ「男性」ばかりなのか

そこには生物学的な理由がある

世界で注目される様々な凶悪事件。犯人はたいてい男性であるように見えるが、それはなぜなのか。『上級国民/下級国民』を上梓した橘玲氏が考察する。

目立つ「男性」の犯人

死者35人、負傷者33人という大惨事になった「京都アニメーション放火事件」の容疑者は41歳の男だ。5月に起きた川崎のスクールバス殺傷事件の犯人は51歳の男、大阪で6月に起きた警官拳銃強奪事件の犯人は33歳の男、8月に横浜の路上で起きた通り魔事件の犯人は46歳の男だ。ちなみに、川崎の事件の4日後に起きた農水省元事務次官長男刺殺事件の被害者も44歳の男だった。

今年に入って立てつづけに社会を震撼させたこれらの事件には明らかな共通点がある。事件を起こしたのが中年の男であることと、犯人たちが無職かそれに近い境遇にあり「孤立」していたことだ。これは、女性と交際していた形跡がないということでもある。

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8月になって、アメリカではたてつづけに銃の乱射事件が起きた。テキサス州エルパソのショッピングモールで20人以上が死亡した事件の犯人は21歳の白人の男、その翌日にオハイオ州デイトンで起きた乱射事件の犯人は24歳の白人の男だった。IS(イスラム国)の「聖戦士」も同じだが、日本とのちがいは、欧米のテロリストの多くが20代の「若い男」であることだ——。もっとも、相模原の障害者施設で入所者19人を刺殺した事件の犯人は当時26歳の男だった。

凄惨な事件が起きるたびにメディアは「犯人さがし」に躍起になり、「ひきこもり」や「精神疾患」がリスク要因として大きく取り上げられ、偏見を煽ってきた。しかし直近の事例を列挙するだけで明らかなように、真のリスク要因は「若い男」と「中年の男」だ。それに対して女性、子ども、高齢者は大量殺人を行なわない。「どのような犠牲を払っても二度とこのような事件を起こしてはならない」というのなら、真っ先に監視され排除されるべきなのが「20代~50代の男」であることは間違いない。

もちろん彼らのほとんどは犯罪とは無縁の平穏な生活を送っているが、なんらかの要因が加わると、突如として極端な行動に走る。犯人たちの共通点は、「無職」「非モテ」であることだ。

これを暴論と思うかもしれないが、すくなくとも男の子の親なら(ある程度は)同意するのではないだろうか。農水省元事務次官は、この不安によって長男を刺殺したのだから。

「世間に迷惑をかけない」ために親が子どもを殺すというこの悲惨な事件は、全国の親に「子育てに終わりはない」という残酷な事実を突きつけた。家を出て自立したと思っても、40代、あるいは50代になってから「無職」「非モテ」の息子が突然、戻ってくるかもしれないのだ。

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