「枝野幸男内閣」の波紋
4月上旬――政界に突如として浮上した「枝野幸男内閣」論が報じられ、ネット上でも大きな波紋を呼んだ。
現在の野党第一党、立憲民主党の代表である枝野幸男・衆議院議員が、菅内閣の退陣を求め、また退陣直後に衆院選を行わずに暫定的な「枝野内閣」を組閣することを提案したのだ。
案の定というべきか、これに対してネットでは「民主主義を無視するのか」「エイプリルフールはもう終わったぞ」「クーデター乙」など、激しい批判・非難が寄せられた。現職の政治家すらもSNSで驚き呆れているほどである。
発言の日付を見て、二度驚いた。 https://t.co/IwawGVZ9Xk
— 長島昭久@東京18区(武蔵野、府中、小金井市) Akihisa NAGASHIMA, MP (@nagashima21) April 3, 2021
表面的な内容を見るかぎりでは、ネットの反自民、反アベ・スガ系の人びとが叫ぶ「スガ政治を許さない」「スガやめろ」などのシュプレヒコールと大差なく見える。政治家としても、あまりセンスのよい発言であるとは思えず、多くの人が直感的に反発を覚えるのも無理からぬことかもしれない。
ただし、枝野議員を擁護するわけではないが、首相指名を受ける国会議員が与党の代表でなければならないという法的な縛りがあるわけではない。「野党議員が内閣総理大臣になる」ことは禁止されているわけでもなければ、民主主義を否定するものでもないし、ましてなんら違法性もない。歴史に鑑みれば、枝野議員の申し立て自体は、戦前までの「憲政の常道(失政によって内閣が倒れたなら、次の組閣は野党第一党に委ねられるという政治的な慣例)」という文脈を踏まえた発言として見ることも可能である。