民間調査では「20代の半数近く」が倍速視聴経験者
映画やドラマなどの動画を初見で「倍速視聴」「10秒飛ばし」する習慣が広がっている。倍速視聴とは動画を1.5倍速、2倍速といった早送りで観ること。10秒飛ばしとは、冗長なシーンを文字通り飛ばす目的で10秒後にスキップすること。いずれも時短視聴ニーズを叶えるもので、各種の定額制動画配信サービスほか、YouTubeやABEMAといった無料動画配信メディアの多くにも実装されている機能だ。
筆者は2021年3月、「『映画を早送りで観る人たち』の出現が示す、恐ろしい未来」という記事を執筆し、倍速視聴と10秒飛ばしの背景として、【1】配信サービスの出現によって安価に観られる作品が増えたこと、【2】コスパ(コストパフォーマンス)を求める人が増えたこと、【3】セリフですべてを説明する映像作品が増えたこと――の3点を挙げた。同記事には大きな反響があったため、その後6本の深掘り記事を執筆。肯定派・容認派・反対派にそれぞれによる活発な議論を喚起した。
#1 映画やドラマを観て「わかんなかった」という感想が増えた理由
#2 『逃げ恥』『シン・エヴァ』…「リテラシーが低い人を差別しない」作品が時代を制する
#3 『オタク』になりたい若者たち。倍速でも映画やドラマの『本数をこなす』理由
#4 失敗したくない若者たち。映画も倍速試聴する「タイパ至上主義」の裏にあるもの
#5 「インターネット=社会」若者の間で広がる「セカイ系」の世界観
#6 若者のあいだで「批評」と「スポーツ観戦」が不人気な理由
倍速視聴と10秒飛ばしは年齢が若ければ若いほど習慣化されている。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが2021年3月に発表した「動画の倍速視聴に関する調査」によれば、20代から60代の男女全体で倍速視聴の経験がある人は34.4%、その中では20代男性が最も多く54.5%、次に多かったのは20代女性の43.3%。20代全体では、49.1%が倍速視聴経験者だった。
若者はなぜ、倍速視聴と10秒飛ばしを行うのか。その理由を探るべく、筆者は2021年12月、青山学院大学に在籍する2年生から4年生を対象にアンケートを実施した(※)。本記事ではその集計結果と彼らの視聴実態をリポートする。
青学生の「9割近く」が倍速視聴経験者
アンケートの結果によると、倍速視聴を「よくする」「ときどきする」は66.5%、3人に2人は普段から動画を早送りで観ている。「あまりしない」も含めれば87.6%、実に9割近くが倍速視聴経験者だ。
先のクロス・マーケティングの調査では「20代全体の49.1%が倍速視聴経験者」だったので、それよりもかなり高い。青学のアンケート回答者(2〜4年生)はおおむね20歳前後、つまり「20代全体」の下限なので、「年齢が若いほど倍速視聴経験率が高い」傾向はありそうだ。