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日産・西川前CEOが初証言…ゴーン事件は「クーデター」ではなかった

混乱をいま振り返る

日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が2010年度から17年度の報酬計約91億円を開示しなかったとされる金融商品取引法違反の事件で、共犯に問われた同社元代表取締役のグレッグ・ケリー被告の判決公判が3日、東京地裁で開かれ、下津健司裁判長はケリー被告に対して懲役6ヵ月、執行猶予3年(求刑は懲役2年)の有罪判決を言い渡した。

下津裁判長は、報酬隠しがあったとされる8年分のうち7年分はケリー氏に報酬隠しの認識はなかったとして無罪とし、残りの1年分だけ有罪とした。また、裁判で争点となっていたゴーン被告に開示すべき「未払い報酬」があったか否かについては、存在したことを認定した。

 

「ゴーン事件」とは何だったか?

いわゆる「ゴーン事件」を簡単に振り返ろう。東京地検特捜部は2018年11月19日、ルノーCEOで日産自動車会長だったゴーン氏を、有価証券報告書に自身の役員報酬を虚偽記載したとして金融商品取引法違反の疑いで逮捕した。当時、日産代表取締役だったケリー氏もそれに関与したとして逮捕された。

さらに特捜部は18年12月21日、個人的に所有する金融商品の損失を一時的に日産に付け替え、かつ信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に日産の資金を送金したとしてゴーン氏を会社法違反容疑(特別背任)で逮捕。続けてオマーンにも会社資金を不正に支出していたとして逮捕した。結局、ゴーン氏は金商法違反と特別背任で計4度逮捕され、そのすべてにおいて起訴された。

しかし、ゴーン氏は保釈されていた19年12月29日に日本から不法に出国、レバノンに海外逃亡したことでゴーン氏の公判は開かれていない。

事件当時、日産社長兼CEOだった西川廣人氏が、ケリー氏の有罪判決を受けて筆者の単独インタビューに応じた。日産社長退任後、西川氏がメディアのインタビューに応じるのは初めてだ。

以下は西川氏と筆者の一問一答である。

「クーデター」ではあり得ない

——ゴーン事件とは、日産とルノーの経営統合を進めようと考えていたゴーン氏を引きずり下ろすための一種のクーデターだったのではないか、と言われています。

西川:クーデターではなく、ゴーン事件の本質はゴーン元会長自身が不正行為を行っていたことに尽きる、とはっきり申し上げておきたいと思います。

私が日産CEOだった2018年当時は、ルノーとの経営統合への圧力など難題が多く、また2014年からゴーン氏主導で進められた日産とルノーの開発・生産・物流などの機能の一本化が現場に余分な負荷をかけていた時期でもあり、ゴーン氏の経営手法に対して日産社内での不安や不満が高まっていたことは事実です。

たとえば、購買機能の統合はコスト削減などの面で成果が出ており、両社ともに納得感がありました。しかし他の分野の機能統合については、仕事の実態は両社が別々にやっているのに、ゴーン氏が無理やり組織を統合して一人の責任者の下にレポートライン(指揮命令系統)を一本化し、現場から不満の声が出ていました。

筆者の取材に答える西川氏

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