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中国株の銘柄選び

香港市場の主要銘柄:香港鉄路(3) 海外売上比率5割超、香港の鉄道会社だけど海外で稼ぐ

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。


▼参考

中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本


KCR合併後は海外事業の開拓を加速


2007年に九広鉄路(KRC)の運営権を取得して事実上の香港の鉄道運営における独占事業者となった香港鉄路ですが、香港事業を中核事業に位置づけつつも、新たな成長エンジンとして香港域外での事業開拓も加速させていきます。


海外事業は主に現地での鉄道事業や不動産事業ですが、いまでは売上高全体に占める海外比率は香港を上回る規模にまで成長。22年の海外売上比率は55%に達しています。

資料:香港鉄路決算報告書


香港鉄路は、香港での鉄道事業の経験やノウハウを生かし、中国本土をはじめ欧州や豪州で鉄道のオペレーター事業を展開。欧州では出資比率100%の子会社が運営を担うケースが多く、中国では主に49%出資の合弁事業というケースが多いようです。特に中国での運営事業の認可は政治的な要因が大きくなりますが、香港鉄路の親会社は香港特別行政区政府であることから、契約獲得にあたって有利な立場にあります。


2024年1月現在、中国本土では、北京(4号線、大興線、14号線、16号線、17号線)、深セン(4号線、13号線)、杭州(鉄1号線、5号線)の各都市で地下鉄を運営。マカオでは2019年にマカオ唯一の鉄道である澳門軽軌鉄路(ライトレール)のタイパ線が開業しました。2023年12月にはマカオ半島側の媽閣(Barra)まで延伸し、移動の利便性が大きく向上しました。 


2019年に開業したマカオのタイパ線 出所:澳門軽軌HP


英国、スウェーデン、豪州でも事業を展開


欧州では、英国とスウェーデンの2カ国で鉄道運営事業を展開。英国では2022年に開通したロンドンのエリザベス線を運行するほか、英国南部でサービスを展開するサウス・ウェスタン・レールウェイに30%出資しています。


ロンドンのエリザベス線 出所:MTR Elizabeth line


スウェーデンでは、首都ストックホルムの地下鉄や通勤電車を運営するほか、ストックホルムと工業都市ヨーテボリ(イエテボリ)を結ぶMTRX、ストックホルムとメールダーレンの主要都市を結ぶMalartagを運営し、乗客数でスウェーデン最大の鉄道運営事業者となっています。


豪州では、メルボルンで60%出資する子会社が通勤電車を運行するほか、シドニーでは地下鉄ノースウエスト線を運行。2019年に開業し、豪州で初の無人運転として注目を集めた路線です。同じくシドニーの地下鉄シティ&サウスウエスト線も、2024年開業を目指して準備が進められています。


 

香港鉄路は中国、欧州、豪州でも事業を展開する 出所:香港鉄路決算報告書


日本企業では、JR東日本が2017年に海外オペレーターと共同で英ウエストミッドランズトレインズ社(WM社)の運営を開始した例がありますが、香港鉄路の海外展開は一歩も二歩も先を進んでいます。香港鉄路のこうした海外での豊富な実績が、新たな鉄道運営権の入札で優位に働き、香港鉄路に新たな収益をもたらしているのです。


次回も香港鉄路の続きです。お楽しみに。


まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄


今回紹介した銘柄は、2000年に香港証券取引所メインボードに上場した香港の鉄道運営会社、香港鉄路(00066)です。


 【香港の鉄道運営会社】香港で地下鉄や空港線、ライトレールなどを運行する。中国本土(北京、深セン、杭州)や欧州(英国、スウェーデン)、豪州でも地下鉄・鉄道事業に参画する。07年に九広鉄路を吸収。香港の公共旅客輸送シェアは49.6%(23年1-5月)。沿線の不動産開発や駅構内・周辺施設の店舗賃貸収入も収益の柱。香港での22年の総利用客数は延べ15億1800万人で平日の平均で445万人。香港と広州を結ぶ「広深港高速鉄道」の香港区間も運営する。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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