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中等教育学校

中高一貫教育を行う学校

中等教育学校(ちゅうとうきょういくがっこう 英語:Secondary school)は、中等教育の前期(中学校などにおける教育)と後期(高等学校などにおける教育)を一貫して施すシステムをとる学校であり、日本では中高一貫教育とされる。前期課程(中学校に相当)と後期課程(高等学校に相当)からなる。略して中等(ちゅうとう)。

東京都立立川国際中等教育学校
イギリスのイートン校
ドイツザクセン州Grimmaのギムナジウム

各国にて相当する学校としては、イギリスパブリックスクールドイツ連邦共和国およびオーストリア共和国ギムナジウムオランダVWO(大学準備中等教育)およびHAVO(高等一般教育)などが挙げられる。

ドイツのギムナジウム、オーストリアのAHS、オランダのVWOおよびHAVOへの進学率・在籍率は、該当年齢の約30%に達する。参考までに日本の国立・私立の中学校の在籍率は全中学生の約8%、南関東の中高一貫校受験参加率は約20%(公立中高一貫校および私立中高一貫校の入学試験参加者数の合計)である[1]

日本の中等教育学校

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在学者数 令和元年 (2019)[2]
国立 公立 私立 総計
2,951 22,390 6,812 32,153

日本における中等教育学校は、小学校に続く学校とされ、修業年限卒業までに教育を受ける期間)は6年である。小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育(前期中等教育)ならびに高度な普通教育(後期中等教育)および専門教育を一貫して施すことを目的とする[3]中学校高等学校(高校)を合わせた年限に相当する6年間の一貫教育を行う学校として、1998年(平成10年)6月の学校教育法改正により、新たに定められた学校種である。

学校教育法第一条に定められる一条校である。

校種名にある「中等教育」とは、日本においては、中学校と高等学校の段階で行う教育が主に該当する。

前期・後期課程

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前期課程(第1~3学年)の3年間は中学校(前期中等教育)相当であり、義務教育の就学先でもある。前期課程を修了すると義務教育の課程を修了したものとして、他の高等学校高等専門学校(高専)、専修学校高等課程(高等専修学校)などの後期中等教育への入学資格が得られる。

後期課程(第4~6学年)の3年間は高等学校(後期中等教育)相当である。後期課程を修了して卒業すると中等教育を修了したものとして、大学(短期大学を含む)など高等教育への入学資格が得られる。

前期・後期課程を一貫した6年制の完全中高一貫校、後期課程からの入学者も募集する併設型中高一貫教育校がある。

現状

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公立の中等教育学校では、学校教育法施行規則の規定で入学の際に学力検査を行わないものとされている。選抜には、調査書・作文・面接・適性検査・抽選などが行われる。競争率は非常に高い。

中等教育学校の一般教員は原則として中学校と高等学校の両方の教員免許状を持つことになっている[4]が、「当分の間」はどちらか一方の免許状でも可能となっている[5]

2019年現在、国立4校、公立32校、私立18校がある[6]

沿革

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従来から私立の中学校・高等学校の併設校にはカリキュラムを大幅に調整した中高一貫教育を行う学校が多かった[7]が、1998年6月の学校教育法改正により、中学校から高等学校に相当する教育を一貫して施すために単一の学校として設置することが可能になった(それまでの中高一貫教育は、中学校と高等学校のそれぞれが最低1校ずつ必要であった)。

公立では1999年度(平成11年度)の五ヶ瀬中等教育学校、私立では2000年度(平成12年度)の創世中等教育学校、国立では2000年度(平成12年度)の東京大学教育学部附属中等教育学校、奈良女子大学文学部附属中等教育学校(現:奈良女子大学附属中等教育学校)が最初である。2003年度(平成15年度)には一般生や帰国子女等が多数在籍する公立の中等教育学校である芦屋国際中等教育学校芦屋市に開設されるなど、以後全国で着々と設置が進んでいる。

一方、私立で初の中等教育学校として開校した創世中等教育学校は、大幅な定員割れを理由に2009年度(平成21年度)からの募集停止を決めた。東北地方初の中等教育学校として設立された秀光中等教育学校も、後期課程に進学せず系列校[8]に進学するケースが増えたため、2020年度に解体し従前の併設型中高一貫校[9]に戻る見通しである。

教育の目標

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学校教育法の第51条の3に中等教育学校における教育について次のように定められている。

  1. 国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。
  2. 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な技能に習熟させること。
  3. 社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、個性の確立に努めること。

この目標は、高等学校における教育の目標と同一である。前期課程においては、中学校における教育の目標が準用される。

教育課程

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前期課程では中学校に関する規定が、後期課程では高等学校に関する規定がそれぞれ準用される。

『中学校学習指導要領』、『高等学校学習指導要領』も適用されている。一部に、中等教育学校のみに適用される教育課程を定めた規定がある。また、中等教育学校に適用される特例がある。中学校と高等学校の内容を一部入れ替えて学習を行うことができる。これにより、中学校と高等学校で重複した内容を整理して学習したり、前期課程で一部高等学校の内容を学習することができる(文部科学省ホームページより)。

中等教育学校の一覧

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国立学校

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東京都
奈良県
兵庫県
広島県

公立学校

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北海道
宮城県
茨城県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
兵庫県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
愛媛県
福岡県
宮崎県

私立学校

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茨城県
栃木県
埼玉県
千葉県
神奈川県
長野県
愛知県
三重県
滋賀県
大阪府
奈良県
岡山県
愛媛県
福岡県


廃止された学校

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私立学校

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宮城県
群馬県

各国の中等教育学校

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イギリス

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イギリスにおいてはパブリックスクールが存在し、多くはボーディングスクールであり、13–18歳の年齢に教育を施す。

ドイツ

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ドイツの教育制度。灰色が基礎学校、緑がギムナジウム、赤が実科学校、黄が基幹学校

ドイツにおいてはギムナジウム (Gymnasium) が相当する。

ドイツの教育制度では、6-10歳の基礎学校Grundschule, 4年制)修了後の進路が、以下3つの学校種に分かれる[12]

  • ギムナジウム - 大学進学準備教育を提供する9年制学校(10-19歳)。
  • 実科学校 - 卒業後全日制職業教育学校 (Berufsfachschule) へ進学し中級職業専門家になろうとする者が進学する、6年制学校(10-16歳)。
  • 基幹学校 (Hauptschule) - 卒業後職業教育を受けようとする者が進学する5年制学校(10-15歳)。

これらの3つの学校においては、最初の2年間は観察指導段階 (Orientierungsstufe) が設けられ、生徒の学校進路を決定する際に、第5学年および第6学年において生徒の適性を見極めた上で、生徒の学校進路を選択するために設けられたものであり、この観察指導段階は初等教育段階には含まれない。

オーストリア

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オーストリア共和国では、4年制(6-10歳)の基礎学校 (Grundschule) を修了した後のキャリアは2つに分かれる[13]

  • 基幹学校 (Hauptschule) - 卒業後職業訓練を受ける者や職業教育学校へ進学しようとする者が進学する、4年制学校(10-14歳)
  • 普通教育中等学校 (Allgemeinbildende Höhere Schule, AHS) - 大学進学準備教育を提供する、8年制学校(10-18歳)。

そのうちAHSは、ISCED-2および3Aのギムナジウムであり、実科ギムナジウム、経済実科ギムナジウムに大別される。

AHSへの進学については、日本の中学受験とは大きく異なり、基礎学校の最終学年での生徒の成績や興味・関心を考慮して、学校から教育権者(親権者・未成年後見人)に所見が出される。一般的にはドイツ語と数学の成績が良好である必要があるものの、基礎学校からの所見とは異なり、AHSへの進学を希望する場合に限り、入学試験が行われる。

オランダ

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オランダの教育制度

オランダの教育では、4歳-12歳までの8年制の初等学校(2年制保育を含む幼小一貫教育)を修了した後の進路は以下に分かれる[14][15]

  • 職業的中等教育 (VMBO), ISCED-2
  • 高等一般教育 (HAVO), ISCED-3A
  • 大学準備中等教育 (VWO), ISCED-3A

うちVWOには、次の3つのタイプの学校に分類される。①ギリシャ語とラテン語を学習しない「アンテネウム」(Atheneum)、②ギリシャ語とラテン語が必修科目である「ギムナジウム」(Gymnasium)、③ギリシャ語とラテン語が選択科目である「リセウム」(Lyceum) である[16]

VWOおよびHAVOが日本の中等教育学校(私立中高一貫校を含む)に相当する。しかし日本の中等教育学校(中高一貫教育を提供する私立中学校および私立高等学校を含む)とは大きく異なり、最初の3年間は、VWO, HAVO, MAVO, LBO のすべてに「基礎教育課程」が導入され、3年間で3000単位時間(総授業時間数の80%、1単位時間は50分)の必修科目を履修する。必修科目は、オランダ語、英語、現代外国語(ドイツ語またはフランス語)、数学、物理、化学、生物、地理、歴史、政治、経済、工学、芸術(音楽、美術、ダンス、演劇の中から2科目選択)、自立のための生活技能、体育である。総授業時間数の20%についてはラテン語、宗教などの選択科目に充てられている。

脚注および参照

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  1. ^ おおたとしまさ著『中学受験という選択』(日本経済新聞出版社2012年11月8日発行)の「第1章 「脱ゆとり」でも中学受験」の「東京都では4人に1人以上が国立・私立中学に進学」(pp.18-22) の「図表1 2012年度中学1年生の生徒数」(p.19) によれば国立または私立の中学校に全国平均で8.0%が在学している統計値が表示されている。
  2. ^ 令和元年度学校基本調査について(報道発表) (PDF:2146KB) PDF”. 文部科学省. 2019年8月24日閲覧。
  3. ^ 『解説 教育六法 1999 平成11年版』(三省堂、1999年2月発行)の学校教育法(1998年6月当時)第51条の2によれば、「中等教育学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、中等普通教育並びに高等普通教育及び専門教育を一貫して施すことを目的とする。」と規定された。当時の学校教育法における中等普通教育とは中学校(前期中等教育)段階の普通教育を、当時の学校教育法における高等普通教育とは高等学校(後期中等教育)段階の普通教育をそれぞれ意味する。
  4. ^ 教育職員免許法第3条第4項には、「中等教育学校の教員(養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭、養護教諭、養護助教諭並びに栄養教諭を除く。)は、第1項の規定にかかわらず、中学校の教員の免許状及び高等学校の教員の免許状を有する者でなければならない。」と規定されている。
  5. ^ 教育職員免許法附則第17項には、「中学校の教諭の免許状又は高等学校の教諭の免許状を有する者は、当分の間、第3条第1項、第2項及び第4項の規定にかかわらず、それぞれ中等教育学校の前期課程における教科又は後期課程における教科の教授又は実習を担任する主幹教諭、指導教諭、教諭又は講師となることができる。」と規定されている。
  6. ^ 調査結果の概要(初等中等教育機関、専修学校・各種学校) (PDF:1163KB)”. 文部科学省. 2019年8月24日閲覧。
  7. ^ 『あなたの子どもが進む新しい道 公立中高一貫校に入る! 2012年入試用』(学研教育出版、2011年5月発行)の「Part1 なぜ人気? 公立中高一貫校」の14ページには「私立の中高一貫校に近いタイプの「中等教育学校」(高校からの外部募集を行わない完全中高一貫校)」と、「Part2 公立中高一貫校ってどんな学校?」の20ページには「「中等教育学校」と「併設型」が中学入試時に選抜を行う私立の中高一貫校に近いタイプになります。」と、それぞれ記載されている。
  8. ^ 仙台育英学園高等学校フレックスコース
  9. ^ 仙台育英学園秀光中学校、仙台育英学園高等学校秀光コース
  10. ^ 校長室より | 宇和島南中等教育学校”. uwajimaminami-h.esnet.ed.jp. 2024年2月17日閲覧。
  11. ^ 令和2年度第1回宮城県私立学校審議会 本審議会議事録
  12. ^ 天野正治結城忠別府昭郎編『Die Bildung in der Bundesrepublik Deutschland ドイツの教育』(東信堂、1998年7月初版発行)の「第7章 多様な中等教育と第二の教育の道」(pp.114-132)
  13. ^ ISCED MAPPINGS - Austria”. UNESCO. 2015年11月4日閲覧。
  14. ^ この小項目においては文部省編『教育調査第122集 諸外国の学校教育 欧米編』(1995年11月発行)の「オランダ」(pp.83-92) に基づいて記載する。
  15. ^ オランダの中等教育学校に相当するVWOおよびHAVOに関しては、新海英行寺田盛紀的場正美編『現代の高校教育改革-日本と諸外国-』(大学教育出版、1998年8月初版発行)の「第2部 外国の中等教育改革の諸相」の「第9章 オランダの初等・中等学校におけるクロスカリキュラム」(ハンス・ホーグホフ執筆)による。
  16. ^ 新海英行寺田盛紀的場正美編『現代の高校教育改革-日本と諸外国-』(大学教育出版、1998年8月初版発行)の「第2部 外国の中等教育改革の諸相」の「第9章 オランダの初等・中等学校におけるクロスカリキュラム」(ハンス・ホーグホフ執筆)のp.166による。次の次の段落およびその次の段落の列挙科目についても同様である。

関連項目

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関連文献

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外部リンク

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