アズキナシ
アズキナシ | |||||||||||||||||||||||||||
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福島県会津地方 2011年5月
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Aria alnifolia (Siebold et Zucc.) Decne. (1874)[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
アズキナシ(小豆梨) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Korean Whitebeam |
アズキナシ(小豆梨[7]、学名: Aria alnifolia)はバラ科アズキナシ属の落葉高木。山地に生える。別名にカタスギ[8]、ハカリノメ(秤の目)[9][10]。同科のナナカマド属に含められる場合もある。
名称
[編集]和名アズキナシの由来は、一説には果実が小さくアズキ(小豆)大ほどの大きさであること、表面にはナシのような白色の皮目があるところから来ている[11][9]。あるいは、実の形がアズキによく似ていて、花がナシの花に似ているところからきているという説もある[12]。
別名のハカリノメは、若い枝に秤の目盛りのような皮目があることに由来する[11][13]。その他の別名に、オオバアズキナシ[2]、シラゲアズキナシ[3]、ハカリノメ[4]、マルバアズキナシ[6]などがある。ハカリノメの名は、この樹の若枝が、帯紫色地に小さな白い斑点(皮目)が散らばっている様子からきている[12]。地方によっては、カマツカ[注 1]、シロブナ、ヤマナシなどの名もある[14]。林業上ではカタスギという名でもよばれている[12]。
分布と生育環境
[編集]日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し[9][13]、低山地の乾燥した尾根筋などに生育する[11]。北海道では平野から山地までの全域、本州以南では山地に限られる[15]。世界では、千島、朝鮮、中国東北部、ウスリー地方に分布し、こうした地域では低地の平野でも見られる[14]。山野ではまばらに自生し、まとまった林はつくらないのは、野鳥が果実を食べて運ばれて、糞と一緒に種子が散布されるからだと考えられている[16]。
形態・生態
[編集]落葉広葉樹の中高木[11][9]。樹高は18 - 20メートル (m) 、幹径は70センチメートル (cm) ほどに達する[12]。樹皮は灰黒褐色でざらつき、老木では縦に細長い裂け目が入る[13]。若い枝は紫黒色で、小斑点状の白色の皮目があり[12]、ほぼ無毛だが、枝先の冬芽付近に毛が残ることがある[13]。短枝もよくできる[13]。
葉は単葉で互生し、葉身は卵形または倒卵形で、長さ5 - 10センチメートル (cm) 、幅3 - 7 cm、先端は短くとがり、基部は円形になる[17]。葉縁にはやや粗い重鋸歯がある[12][7]。葉の裏面に突出する側脈が目立ち、8 - 10対あり、ほぼ直線状に斜上し縁に達する。また葉裏の主脈上には軟毛がある[12]。葉柄は長さ1 - 2 cmあり、赤みを帯び、軟毛が生える。秋には紅葉し、黄色から橙色に色づき、条件がよいと赤みを帯びるが、褐色になるのが早い[7]。
花期は5 - 6月[9][13]。新しい枝先に複散房花序を出して、直径1.3 - 1.6センチメートル (cm) [16]の白色の花を5 - 20個つける[9]。花柄は長さ1 - 1.5 cmある。萼片は長さ2 - 3ミリメートル (mm) 、花弁は円形で平開し、5枚つく。雄蕊は20個、花柱は2個あり心皮は合着する。全体としてナシの花に似ていて、直径はやや小さい[16]。
果期は10月ごろ[9]。果実はまばらで細い柄につく[16]。ナシ状果で、長さ8 - 10 mm、幅6 - 8 mmの楕円形になり、赤く熟す[9]。実は球形よりは楕円形のものが多く、初めは明るい赤色で、のちに小豆色になる[16]。頂部には萼筒の頂部が落ちた痕が円く目立つ[16]。実は野鳥の餌となり、冬を越して春先まで枝に残っていることが多い[16]。実の中には種子がふつう4個入っており、長さ5 - 6 mm、幅2 - 3 mmの半球形になる[16]。
冬芽は長卵形で紅紫褐色をしており、4-6枚の芽鱗に包まれている[13]。枝先に頂芽、枝には側芽が互生し、頂芽は側芽より大きい[13]。葉痕は突き出した半円形や三日月形で、維管束痕が3個付き、葉痕の下部が紅紫色のときもある[13]。
利用
[編集]植栽樹として庭木に利用される。春の白い花、秋の紅葉などが楽しめ樹種で[18]、葉が小さくてかわいらしく、繊細で涼しげな雰囲気をもち、生長が遅いことから人気がある[11]。日なたから半日陰地で育てるが[11]、西日を嫌う性質があるため、東南方向の庭の植栽に適している[18]。栽培する土壌の質は、適度な湿度を持った砂土から砂壌土にして、根を深く張る[11]。植栽適期は、11月 - 1月とされる[9]。寒冷地向きの樹木で、剪定は12 - 2月とされているが、寒冷地向きの樹木であることから、風通しを良くする程度に枝葉を間引く[11]。
材はかたくて有用になり、建築材や家具材、靴型、ろくろ材などに使われた[14][10]。また、樹皮からは染料を取る[10]。
近縁種
[編集]- フギレアズキナシ Micromeles alnifolia var. lobulata
- 本州以南から九州の対馬まで分布。葉の縁が浅く裂けている[14]。
- オクシモアズキナシ Sorbus alnifolia var. submollis
- 葉の下面に軟毛が密生する[14]。アズキナシとは分類が異なるナナカマド属に分類される。
- オオバアズキナシ Sorbus alnifolia f. macrophylla
- 朝鮮半島に分布し、葉が特に大きい[14]。(アズキナシ Micromeles alnifolia のシノニム)
- マルバアズキナシ Sorbus alnifolia f. tiliifollia
- 実がやや大形[14]。(アズキナシ Micromeles alnifolia のシノニム)
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Aria alnifolia (Siebold et Zucc.) Decne. アズキナシ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月18日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus alnifolia (Siebold et Zucc.) K.Koch f. macrophylla (Nakai) A.I.Baranov アズキナシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月18日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus alnifolia (Siebold et Zucc.) K.Koch f. hirtella (Nakai) A.I.Baranov アズキナシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月18日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus alnifolia (Siebold et Zucc.) K.Koch アズキナシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月18日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Micromeles alnifolia (Siebold et Zucc.) Koehne アズキナシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月18日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sorbus alnifolia (Siebold et Zucc.) K.Koch f. tiliifollia (Decne.) Sugim. アズキナシ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月18日閲覧。
- ^ a b c 林将之 2008, p. 36.
- ^ アズキナシ (カタスギ) 北海道森林管理局 2021年3月24日閲覧
- ^ a b c d e f g h i 山﨑誠子 2019, p. 102.
- ^ a b c 新村出 編『広辞苑』(第六版)岩波書店、2008年1月11日、51頁。
- ^ a b c d e f g h 正木覚 2012, p. 35.
- ^ a b c d e f g 辻井達一 1995, p. 203.
- ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 163
- ^ a b c d e f g 辻井達一 1995, p. 205.
- ^ 辻井達一 1995, pp. 204–205.
- ^ a b c d e f g h 辻井達一 1995, p. 204.
- ^ 辻井達一 1995, pp. 203–204.
- ^ a b 山﨑誠子 2019, p. 103.
参考文献
[編集]- 正木覚『ナチュラルガーデン樹木図鑑』講談社、2012年4月26日、35頁。ISBN 978-4-06-217528-9。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、163頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、203 - 206頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月27日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 山﨑誠子『植栽大図鑑[改訂版]』エクスナレッジ、2019年6月7日、102 - 103頁。ISBN 978-4-7678-2625-7。