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オオアリクイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オオアリクイ
オオアリクイ
オオアリクイ Myrmecophaga tridactyla
保全状況評価[1][2][3]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 有毛目 Pilosa
亜目 : アリクイ亜目 Vermilingua
: アリクイ科 Myrmecophagidae
: オオアリクイ属 Myrmecophaga
Linnaeus, 1758[4][5]
: オオアリクイ M. tridactyla
学名
Myrmecophaga tridactyla
Linnaeus, 1758[4][5]
和名
オオアリクイ[6][7][8]
英名
Giant anteater[5]
Giant ant-eater
分布域
青:現存、オレンジ:絶滅した可能性の高い地域

オオアリクイ(大蟻食、Myrmecophaga tridactyla)は、有毛目アリクイ科オオアリクイ属に分類されるアリクイ。本種のみでオオアリクイ属を構成する(単型)。オオアリクイ属はアリクイ科の模式属

分布

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アルゼンチンエクアドルガイアナコロンビアスリナムニカラグアパナマパラグアイペルーブラジル仏領ギアナベネズエラボリビアホンジュラス[3]

アルゼンチンの一部(エントレ・リオス州コルドバ州)、ウルグアイエルサルバドルグアテマラ、ブラジルの一部(エスピリトサント州サンタカタリーナ州リオグランデ・ド・スル州リオデジャネイロ州)、ベリーズでは絶滅したと考えられている[3]

形態

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体長100 - 120センチメートル[8][9]。尾長65-90センチメートル[8][9]体重18 - 39キログラム[8][9]。吻端を除いた全身が粗く長い体毛で被われる。尾の体毛は30センチメートルに達する[8]。体毛のほとんどは黒または暗褐色で、尾は褐色[5]。喉や胸部から肩にかけて白く縁取られた黒い斑紋が入る[8][9]。前肢は白く、端に黒い帯模様がある[5]。頭と尾を似た形にすることで後述の天敵を惑わして身を守っているとされる[10]

吻端は非常に長く、嗅覚も発達している。舌は細長く、最大で61センチメートルに達する[8]。舌は唾液腺から分泌された粘着質の唾液で覆われる。眼や外耳は小型だが[9]、聴覚は発達している。前肢の指は5本で、湾曲した4本の大きな爪があり特に第2、第3指で顕著[6]。第5指は退化し、外観からはわからない[6]

代謝能力は低く、体温は32.7℃[6]

分類

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2003年に発表されたミトコンドリアDNA16S rRNAの分子系統解析では、本属とコアリクイ属Tamanduaは12,900,000年前に分岐したという解析結果が得られた[11]

3亜種に分類されている[6]。以下の分類はGardner (2005) およびGaudin et al. (2018) に従う[4][5]

  • Myrmecophaga tridactyla tridactyla Linnaeus, 1758
  • Myrmecophaga tridactyla artata Osgood, 1912
  • Myrmecophaga tridactyla centralis Lyon, 1906

生態

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低地にある草原サバンナリャノなど)、沼沢地、開けた森林などに生息する[8][9]。地表棲。単独で生活する[8]。昼間に活動することもあるが、人間による影響がある地域では夜間に活動する[8]。地面に掘った浅い窪みで1日あたり14-15時間は休む。寝る時は体を丸め、尾で全身を隠すように覆う。移動する時は爪を保護するため、前肢の甲を地面に付けて歩く[9]。泳ぎは上手い。外敵に襲われると尾を支えにして後肢だけで立ちあがり、前肢の爪を振りかざし相手を威嚇する[8]。それでも相手が怯まない場合は爪で攻撃したり相手に抱きつき締めあげる[8]天敵としてはジャガーピューマアメリカワニなどが挙げられる[8]

食性は動物食で、主にアリシロアリを食べるが、昆虫の幼虫、果実などを食べることもある[8][9]。匂いを頼りに巣を探して前肢の爪で破壊する。その後、舌を高速で出し入れ(1分間に150回)して捕食する。1日で約30,000匹のアリやシロアリを食べると推定されている[8]。1つの巣から捕食する量は少なく、1回の捕食に費やす時間も平均で1分ほど[9]。複数の巣を徘徊し、採食を行う。1回の捕食量が少ないことや複数の巣を徘徊することで行動圏内の獲物を食べ尽くさないようにしていると考えられている[9]。直接飲水することもあるが、水分はほとんど食物から摂取する。また、お腹の調子を整える目的で、不定期に土を舐める習性を持つ[12]。属名Myrmecophagaは「蟻食い」の意。

繁殖様式は胎生。発情期間は50 - 60日周期[12]、妊娠期間は142 - 190日[8]。交尾は雄が雌の腰に前肢を引っ掛けて横倒しにしてから行う。交尾後の雄は子育てに参加せず、雌のみが単独で行い[13]、1回に1頭の幼獣を後肢だけで直立しながら産む[8]。授乳期間は約6か月[9]。幼獣は生後1か月ほどで歩行できるようになる。生後6-9か月は母親の背中につかまって過ごす[8]。生後3年で性成熟する[9]。寿命は約16年と考えられているが[8]、飼育下では約25年ほどとなり、31年生きた記録も存在する[12]

人間との関係

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食用とされたり、皮革が利用されることもある[3]。薬用になると信じられている地域もある[3]

生息地の破壊、攻撃的な動物と誤解されての駆除、毛皮用や娯楽としての狩猟などにより生息数は減少している[8][9]。2014年現在は過去10年で生息数が30 %以上減少したと推定されている[3]。1975年のワシントン条約発効時から附属書IIに掲載されている[2]

一方で、危機を感じた際には、前足にあるカギ爪をふりかざして防衛行動に出ることがあり、2014年にはブラジルで猟師2名が死亡した例がある[14]

中南米の一部に約5,000頭が生息するのみの状況、と2014年7月28日付のフランス通信社は伝えている[14]

飼育

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日本

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日本では1933年東京都上野動物園で飼育が始まり、2001年には全国の動物園で32頭が飼育されていたが、2022年には15頭と減少し[13]2024年では東京都江戸川区自然動物園神奈川県よこはま動物園ズーラシア静岡県日本平動物園愛知県東山動植物園兵庫県神戸市立王子動物園沖縄県沖縄こどもの国で展示されている[15]

日本の展示場は狭い施設が多く、ストレス軽減や退屈させないために、福祉の観点から環境エンリッチメントが採用されているケースが多い。餌は主に、馬肉やイナゴ、ドッグフード、卵黄、粉ミルク等をペースト状にした物が与えられている。夏場は水浴びを好み、水浴中に前肢と後肢で20分ほど時間をかけて全身を掻くため、飼育員がホースなどで水をかけて介助することもある。基本は単独行動であるため、繁殖目的のお見合い以外で2頭以上が同じ展示場で過ごすことはない[13]

画像

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出典

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  1. ^ CITES (2017). Appendices I, II and III <https://cites.org/eng> valid from 4 October 2017. (Accessed 23/11/2018)
  2. ^ a b UNEP (2017). Myrmecophaga tridactyla. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 23/11/2018)
  3. ^ a b c d e f Miranda, F., Bertassoni, A. & Abba, A.M. 2014. Myrmecophaga tridactyla. The IUCN Red List of Threatened Species 2014: e.T14224A47441961. doi:10.2305/IUCN.UK.2014-1.RLTS.T14224A47441961.en. Downloaded on 23 November 2018.
  4. ^ a b c Alfred L. Gardner (2005). “Order Pilosa”. In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.). Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. pp. 100-103. http://www.departments.bucknell.edu/biology/resources/msw3/browse.asp?id=11800037 
  5. ^ a b c d e f Timothy J Gaudin, Patrick Hicks, Yamil Di Blanco; Myrmecophaga tridactyla (Pilosa: Myrmecophagidae), Mammalian Species, Volume 50, Issue 956, 12 April 2018, Pages 1–13, doi:10.1093/mspecies/sey001.
  6. ^ a b c d e Christopher R. Dickman 「アリクイ」伊澤紘生訳『動物大百科 6 有袋類ほか』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社1986年、44-47頁。
  7. ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 小原秀雄 「オオアリクイ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社2001年、141-142頁。
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 『絶滅危惧動物百科3 ウサギ(メキシコウサギ)-カグー』 財団法人自然環境研究センター監訳、朝倉書店、2008年、16-17頁。
  10. ^ 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P8 。
  11. ^ Maria Claudene Barros, Iracilda Sampaio, Horacio Schneider, "Phylogenetic analysis of 16S mitochondrial DNA data in sloths and anteaters," Genetics and Molecular Biology Volume 26, Number 1, 2003, Pages 5–11.
  12. ^ a b c 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P9 。
  13. ^ a b c 『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P10 。
  14. ^ a b “オオアリクイの襲撃で死亡例、遭遇リスク増に懸念 ブラジル”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年7月28日). https://www.afpbb.com/articles/-/3021675?ctm_campaign=txt_topics 2014年7月28日閲覧。 
  15. ^ https://www.ariescom.jp/entry/giantanteater

関連項目

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