ジャガー・XF
ジャガー・XF(英:Jaguar XF )はイギリスの自動車メーカー、ジャガーにより製造・販売されるEセグメントセダン型乗用車である。
概要
[編集]2007年9月に行われたフランクフルトモーターショーで初公開され、同年秋には2009年モデルとして欧州市場での販売が開始された。販売面ではSタイプの後継車とされているが、デザインは2007年1月に発表されたコンセプトカーの「C-XF」をベースとしており、デザインの大幅な路線変更が行われている。
開発はイギリス コヴェントリーのジャガー開発センターで行われ、製造は同国バーミンガムの先進生産センターで行われる[1]。
コンセプトカー
[編集]2007年1月に行われた北米国際オートショーでは、市販を前提としたXFのプロトタイプコンセプトカー、「C-XF」が発表された。最高出力426PS、最大トルク50.9kgf・mの4.2L スーパーチャージャー付V型8気筒エンジンが搭載され、6速ATが組み合わせられた。
デザインは同社のXKも手掛けたイアン・カラムらにより行われた。クーペ風のデザインがとられており、全席バケットシートの独立4座レイアウトとなっている[2]。スポーティな外観を採用しながら、Sタイプ比でトランクルームや後席ヘッドルームの拡大を行うなどして、当時のジャガーよりも万人受けするモデルとすることが狙われた[3]。エクステリアデザインは後に発売されるXFのベースとなっているが、一方でインテリアデザインについては実験的なもので、斬新なデザインがとられており[4]、ダイヤル式シフトレバーなど一部は市販版にも採用された。
デザインの大幅な変革が行われているものの、一方でフロントグリルは初代XJを、ボンネットはEタイプを、リアピラー周辺はXKをそれぞれモチーフとしており、またジャガー伝統の丸目4灯前照灯を採用するなど、歴代ジャガーのエッセンスが随所に取り入れられている[5]。
初代
[編集]ジャガー・XF X250 | |
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前期(3.0ラグジュアリー) | |
後期(XFR) | |
豪州仕様車 室内 | |
概要 | |
販売期間 | 2008年- |
ボディ | |
乗車定員 | 5人 |
ボディタイプ | 4ドアセダン |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン |
ガソリンエンジン 2.0L直列4気筒 ターボ 204PT型 3.0L V型6気筒スーパーチャージャー 306PS型 3.0L V型6気筒FB型 4.2L V型8気筒 HB型 5.0L V型8気筒508PN型 4.2L V型8気筒スーパーチャージャー 1B型 5.0L V型8気筒スーパーチャージャー 508PS型 ディーゼルエンジン 2.7L V型6気筒AJ-V6D 2.7 3.0L V型6気筒AJ-V6D GEN III |
最高出力 |
204PT型 177kW (240PS) /5,500rpm 306PS型 250kW (340PS) /6,500rpm FB型 179kW (243PS) /6,800rpm HB型 224kW (304PS) /6000rpm 508PN型 283kW (385PS) /6,500rpm 1B型 306kW (416PS) /6,250rpm 508PS型 346kW (470PS) /6,000-6,500rpm 375kW (510PS) /6,000-6,500rpm AJ-V6D 2.7 152kW (207PS) /4,000rpm AJ-V6D GEN III 177kW (240PS) /4,000rpm 202kW (275PS) /4,000rpm |
最大トルク |
204PT型 340N·m /1,750rpm 306PS型 450N·m /2,500rpm FB型 300N·m (30.6kgf·m) /4,100rpm HB型 421N·m (42.9kgf·m) /4,100rpm 508PN型 515N·m (52.5kgf·m) /3,500rpm 1B型 560N·m (57.1kgf·m) /3,500rpm 508PS型 575N·m (58.6kgf·m) /2,500-5,500rpm 625kW (63.8kgf·m) /2,500-5,500rpm AJ-V6D 2.7 435N·m (44.4kgf·m) /1,900rpm AJ-V6D GEN III 500N·m (51.0kgf·m) /2,000rpm 600N·m (61.2kgf·m) /2,000rpm |
変速機 |
6速AT 8速AT |
サスペンション | |
前 | ダブルウィッシュボーン式 |
後 | マルチリンク式 |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,910mm |
全長 |
4,961mm(2009年モデル) 4,970mm(2010年モデル) |
全幅 |
1,877mm(2009年モデル) 1,875mm(2010年モデル) |
全高 | 1,460mm |
車両重量 |
XF 3.0 1,750kg XF V8 1,800-1,842kg XFR 1,960kg |
系譜 | |
先代 | Sタイプ |
メカニズム
[編集]当初、ガソリンエンジンにはV型6気筒 3L NAのFB型、V型8気筒4.2L NAのHB型、および同4.2L スーパーチャージャー付の1B型の3種類がラインアップされた。また、ディーゼルエンジンとしてV型6気筒2.7L AJ-V6D型ツインターボエンジンも用意されるが、ガソリン、ディーゼルともSタイプからのキャリーオーバーである。
2009年3月より販売が開始された2010年モデルからは、V8エンジンがジャガーの完全独自開発となる直噴 5L NAの508PN型および同スーパーチャージャー付の508PS型エンジンに変更された。このエンジンはジャガーのV8エンジンでは12年ぶりの完全新設計であり、過給機付エンジンはイートン製スーパーチャージャーを採用している。なお、508PS型は508PN型をベースとしており、85%の部品を共有している[6]。ディーゼルエンジンについても3.0LのAJ-V6D GEN IIIエンジンに変更されたが、最高出力が240PSと275PSの2種類のスペックが用意され、後者は「ディーゼルS」と称される。
2012年12月より発売が開始された2013年モデルからはダウンサイジングコンセプトが導入され、LuxuryおよびPremium Luxuryに直列4気筒 2.0L ターボの204PT型およびV型6気筒 3.0L スーパーチャージャーの306PS型が用意された。
トランスミッションには全車マニュアルモード付6速ATが採用され、「ジャガードライブセレクター」と呼ばれるダイヤルおよびパドルシフトでの操作が行われる。2013年モデルからは電子制御8速ATが採用された。
ボディは鋼板製であり、エンジンフードにはアルミニウム合金が採用された[7]。また、高炭素鋼やボロンスチールなども採用され、発売当時クラス最高の捩り剛性を実現した[8]。
サスペンションはXKに採用されたものをベースとしており、ブレーキディスクもXKと共通のものが採用された[7]。
デザイン
[編集]エクステリアデザインは先に発表されていたコンセプトカーの「C-XF」をベースとしており、クーペ風のボディラインを採用することで、当時のジャガーの「古臭い」というブランドイメージの払拭と、顧客層の若年化とが図られている[9]。デザインに際しては、ボンネットの位置を低くしながら衝突安全性も両立するために、衝突時にボンネットが持ち上がる「デプロイアブルボンネットシステム」が採用された[10]。ボディサイズについても、先代とされるSタイプから全長、全高、全幅いずれも拡大されているが、ホイールベース長は不変となっている。
設計に際しては数値流体力学が用いられ、それによりジャガーの量産車としては最高のCd値0.29およびフロント・リアゼロリフトを達成している[11]。
インテリアでは、エンジン始動とともにシフトセレクターが出現し、エアコンの吹き出し口が開くという演出がなされている。
デビューから約3年10ヶ月が経過した2011年4月のニューヨーク国際オートショーにおいて、初の大がかりな改良を施した2012年モデルが初公開された。フロントマスクは前照灯やグリル、バンパー、ボンネットなどのフロント周りのデザインを一新し、2009年の7月に登場した4代目XJを連想させるデザインとなった。インテリアも、前後シートやダッシュボードのデザインを変更。ダッシュボード中央には、7インチの新型ディスプレイを採用し、各種スイッチの操作性も引き上げられている。同年7月には、オーストラリアのオーストラリアン・インターナショナル・モーターショーでも公開された。
ラインナップ
[編集]グレードは「ラグジュアリー」、「プレミアムラグジュアリー」、「ポートフォリオ」、「XFスーパーチャージド(SV8)」、「XFR」の5種類が用意される。なお発売時には「XFR」を除く4グレード展開で、「XFR」は2010年モデルから追加された。
最廉価グレードの「ラグジュアリー」には3.0L NA、4.2L NAおよびディーゼルエンジン搭載車が用意され、その上級グレードとなる「プレミアムラグジュアリー」には「ラグジュアリー」のエンジンラインアップに加え、5.0L NAエンジン搭載車も用意される。NAおよびディーゼルのラインアップとしては最上級グレードとなる「ポートフォリオ」には、3.0L NAおよび5.0L NA、3.0Lディーゼル搭載車のみが用意される。
XFスーパーチャージドは当初4.2L スーパーチャージャー付きエンジンを搭載し、一部市場では「SV8」として販売された。スーパーチャージャーエンジンの排気量が5.0Lに変更された後は、XFRに搭載されるものを最高出力470PSまでデチューンしたものが搭載され、「スーパーチャージド」として販売される。
最上級グレードとなる「XFR」には最高出力510PSを誇る5.0Lスーパーチャージャー付きエンジンが搭載される。エクステリアデザインも他のグレードとは差別化がなされており、専用のフロントマスク、エンジンフード、サイドスカートや4本出しマフラーなども採用されている。メカニズム面ではブレーキが強化され[12]、20インチアルミニウムホイールが装着されている。
2012年12月より発売が開始された2013年モデルからは、グレードが2.0 Luxury、2.0 Premium Luxury、3.0 Premium Luxury、XFRの4つに整理された。
年表
[編集]- 2007年
- 1月 - 北米国際オートショーで「C-XF」コンセプトが発表。
- 9月 - フランクフルトモーターショーで発表。
- 秋 - 欧州市場で販売開始[7]。
- 2008年5月16日 - 日本で販売開始。
- 2009年
- 3月 - 2010年モデルの販売を開始。
- 6月17日 - 日本で2010年モデルを販売開始。
- 2011年
- 4月20日 - ニューヨーク国際オートショーで、フェイスリフトが施された2012年モデルが発表された[13]。
- 11月5日 - 日本で2012年モデルの販売を開始。
- 2012年
- 3月 - サロン・アンテルナショナル・ド・ロトでワゴン版の「スポーツブレーク」が発表された[14]。
- 12月11日 - 日本で2013年モデルの販売を開始。
- 2013年
- 3月6日 - サロン・アンテルナショナル・ド・ロトでXFR-Sが発表された。
- 11月6日 - 日本で2.0Lモデルにアイドリングストップ機構が搭載された[15]。
受賞
[編集]- C-XFコンセプト
- フリート・ワールド「エディター特別賞」
- 2007年
- オートカー オートカー・アワード「デザイン賞」
- 2008年
- What Car? カー・オブ・ザ・イヤー
- 「カー・オブ・ザ・イヤー」
- 「ベスト・エグゼクティブ・カー」
- What Diesel? カー・オブ・ザ・イヤー
- 「カー・オブ・ザ・イヤー」
- 「ベスト・エグゼクティブ・カー」
- 2009年
- What Car? カー・オブ・ザ・イヤー「ベスト・エグゼクティブ・カー」
- What Diesel? カー・オブ・ザ・イヤー「ベスト・エグゼクティブ・カー」
- Fleet World Honours「ベスト・エグゼクティブ・カー」
- 2010年
- What Car? カー・オブ・ザ・イヤー「ベスト・エグゼクティブ・カー」
-
スポーツブレーク
2代目
[編集]ジャガー・XF X260 | |
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フロント | |
リヤ | |
概要 | |
販売期間 | 2015年- |
ボディ | |
乗車定員 | 5人 |
ボディタイプ | 4ドアセダン、ステーションワゴン |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン |
直列4気筒2.0L直噴ターボ V型6気筒3.0Lスーパーチャージャー 直列4気筒2.0L直噴ディーゼル |
変速機 | 8速AT |
サスペンション | |
前 | ダブルウィッシュボーン式 |
後 | インテグラルリンク式 |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,960mm |
全長 | 4,965mm |
全幅 | 1,880mm |
全高 | 1,455mm |
エクステリアデザインは基本的にキープコンセプトだが、先代比で全長を10mm短く、全高を5mm低くする一方、ホイールベースを50mm延長して居住性を高めた。
今回は新規導入されたジャガー・XEとの共通アーキテクチャーとなっており、アルミニウムの使用比率をボディ全体の75%に引き上げた新開発のモノコック・ボディ構造を採用した結果、先代比で最大190kgの軽量化を実現すると同時に、ねじり剛性も最大28%向上させている。
エンジンは先代から更なるダウンサイジングが図られ、トップはV型6気筒直噴3.0Lのスーパーチャージャーとなる。メインにはその3.0Lが据えられる一方で、2.0L直噴ターボやXEにて搭載済の新開発2.0L直噴ディーゼルエンジン「INGENIUM」も用意される。
足回りに関してはフロントはダブルウィッシュボーン式を継承するものの、リヤはXEと同じインテグラルリンク式を新たに採用している。
ジャガーブランド初の装備として、アダプティブLEDヘッドライトを備える。
新たなる安全装備として、レンジローバーから転用された「オール・サーフェス・プログレス・コントロール(ASPC)」と名付けられたクルーズコントロールを搭載。機構的には4輪を独立して駆動力と制動力を制御するものである。
センタークラスターには10.2型モニターの「InControl Touch Pro」と呼ばれるスマートフォン感覚で操作できるインフォテイメントシステムを備えた。さらに、メーター内には12.3型のTFTインストルメント・クラスターを搭載し、ここでナビゲーションの一連の動作を確認できる。
2023年モデルでは、XEとXFに2.0L直列4気筒INGENIUMターボチャージド・ガソリンの最高出力を300psにまで引き上げたグレードの300スポーツP300を追加[16]。
-
直列4気筒2.0L直噴ディーゼルエンジン
脚注
[編集]- ^ “ジャガーの新型サルーン、XF”. Response.
- ^ “ジャガーが次期Sタイプのコンセプトカーを発表”. ホビダス・オート
- ^ “【ジャガー C-XF 日本発表】ジャガーブランドの若返り策?”. Response.
- ^ “【ジャガー C-XF 日本公開】面白い造りのインテリア”. Response.
- ^ “【ジャガー C-XF 日本公開】コンセプトを日本初公開 量産予告”. Response
- ^ “ジャガー XF / XK 2010年型…100%オールニューのエンジン”. Response.
- ^ a b c “ジャガー&ランドローバージャパン、内装の上質感高めた新型「XF」発売”. Tech-On!
- ^ “新世代スポーツサルーンのジャガーXFが発売”. ホビダス・オート
- ^ “【ジャガー XF 日本発表】イメージ一新”. Response.
- ^ “【ジャガー XF 解説】ドラマティックなスタイリング”. Response.
- ^ “Sタイプ後継の新世代サルーン、ジャガーXFが発表”. ホビダス・オート
- ^ “【デトロイトモーターショー09】ジャガーXFに最強モデル”. Response.
- ^ “【ニューヨークモーターショー11】ジャガー XF に2012年モデル…XJ の顔つきに”. Response.
- ^ “【ジュネーブモーターショー12】ジャガー XFスポーツブレーク…ワゴンと呼ばない理由”. Response.. (2012年3月18日)
- ^ “「ジャガーXF」2リッターモデルの燃費がアップ”. 2013年11月6日閲覧。
- ^ 「ジャガーXE、XF、XFスポーツブレーク 2023年モデル受注開始 スポーティーな2Lターボ/300psグレード追加」『』AUTOCAR JAPAN、2022年10月8日。
関連項目
[編集]外部リンク
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