タルカス
『タルカス』 | ||||
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エマーソン・レイク&パーマー の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
1971年1月-4月 ロンドン、アドビジョン・スタジオ | |||
ジャンル | プログレッシブ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
アイランド(オリジナル盤) WEA(リイシュー盤) アトランティック(オリジナル盤) Rhino(リイシュー盤) ワーナー・パイオニア(オリジナル盤) イーストウエスト・ジャパン→ビクター(リイシュー盤) | |||
プロデュース | グレッグ・レイク | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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ゴールドディスク | ||||
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エマーソン・レイク&パーマー アルバム 年表 | ||||
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『タルカス』 (Tarkus) は、イギリスにおいて1971年5月に、アメリカにおいて1971年6月14日に発売されたエマーソン・レイク&パーマー(ELP)のセカンド・アルバム。
解説
[編集]本作は『展覧会の絵』(1971年)、『恐怖の頭脳改革』(1973年)などと並び、ELPの代表作のひとつに数えられてきた。作詞とプロデュースはグレッグ・レイク、作曲はメンバー3人が担当した。
オリジナルLPのA面を占める20分を超える壮大な組曲である表題曲「タルカス」は、怪物タルカスが火山の中から現れ、地上のすべてを破壊し尽くし、海に帰っていくというストーリーを描いている。タルカスはアルバム・ジャケットにイラストで描かれている想像上の生物で、アルマジロのような体に戦車が合体した非常に風刺的な姿を持つ[注釈 1][注釈 2]。キース・エマーソンは「Tarkus とは帰宅途中に突然閃いた単語であり、特に意味は無く、辞書を調べてもわからなかった」と述べている[2]。タルカスの最後の戦い相手として登場する「マンティコア」は、人の顔とライオンの胴と蠍の尾を持つ怪物で、その名前とシルエットは、後にELPが設立するレーベル「マンティコア・レコード」の名前とロゴに使われた。
作詞を担当したレイクは、当初この組曲のコンセプトに興味を示さず、エマーソンに「ソロでやれば?」と冷たく言い放ったという。
この組曲のほぼ全編で使われている「ド・ファ・ソ・シb・ミb」のコードはELPのエマーソンの作品の多くで使われており、ELPらしさの象徴として知られている。
LPのB面は対照的に小品集とも呼べる内容である。「ジェレミー・ベンダー」は1974年[注釈 3]、「ビッチズ・クリスタル」と「タイム・アンド・プレイス」は1997年と1998年のツアー[注釈 4]で演奏された。「ジ・オンリー・ウェイ」の冒頭でパイプ・オルガン[注釈 5]の独奏でヨハン・ゼバスティアン・バッハの「トッカータとフーガヘ長調」(BWV 540)のトッカータ、中間部でピアノ・トリオに代わってバッハの「平均律クラヴィーア曲集」から「BWV 851 前奏曲 - 3声のフーガ ニ短調」が演奏される[3]。「限りなき宇宙の果てに」はエマーソンとカール・パーマーの共作で、ピアノを中心に据えたインストゥルメンタル。「アー・ユー・レディ・エディ」は本作のレコーディング・エンジニアのエディ・オフォード[注釈 6]をからかったロックン・ロールである。
2012年、新しいステレオミックスと5.1サラウンドミックスを含むリイシューが発売された[4]。
収録曲
[編集]作詞はレイク。作曲はカッコ内参照。
アナログA面
[編集]- タルカス - "Tarkus"
- 噴火 - "Eruption" (エマーソン)
- ストーンズ・オブ・イヤーズ - "Stones Of Years" (エマーソン、レイク)
- アイコノクラスト - "Iconoclast" (エマーソン)
- ミサ聖祭 - "Mass" (エマーソン、レイク)
- マンティコア - "Manticore" (エマーソン)
- 戦場 - "Battlefield" (レイク)
- アクアタルカス - "Aquatarkus" (エマーソン)
アナログB面
[編集]- ジェレミー・ベンダー - "Jeremy Bender" (エマーソン、レイク)
- ビッチズ・クリスタル - "Bitches Crystal" (エマーソン、レイク)
- ジ・オンリー・ウェイ - "The Only Way (Hymn)" (エマーソン、レイク)
- 限りなき宇宙の果てに - "Infinite Space (Conclusion)" (エマーソン、パーマー)
- タイム・アンド・プレイス - "A Time And A Place" (エマーソン、レイク、パーマー)
- アー・ユー・レディ・エディ - "Are You Ready Eddy?" (エマーソン、レイク、パーマー)
2010年日本盤ボーナス・トラック
[編集]- プレリュード・アンド・フーガ - "Prelude And Fugue" (フリードリヒ・グルダ、アレンジ: エマーソン、レイク、パーマー)
チャート
[編集]全英1位・全米9位を記録した。ELPとしては唯一のチャート1位獲得作品である。
組曲「タルカス」の編曲版
[編集]- 作曲家の吉松隆が編曲した管弦楽曲(以下、便宜上「吉松版」と呼称)が、2010年に発売された『タルカス〜クラシック meets ロック』に収録された。音源は2010年3月14日に東京オペラシティコンサートホールで行われた初演のライブ録音で、吉松と親交の深い藤岡幸夫が指揮する東京フィルハーモニー交響楽団による。「吉松版」は、2012年放送のNHK大河ドラマ『平清盛』で劇中音楽として使用された[注釈 7]ほか、2013年3月20日に東京オペラシティコンサートホールで行われた「吉松隆 還暦コンサート『鳥の響展』」でも披露された[注釈 8]。この還暦コンサートにはキース・エマーソンが来聴して、この模様を収録した『《鳥の響展》ライブ』のライナーノーツにはエマーソンと吉松の対談が掲載されている。
- 「吉松版」の初演でコンサート・マスターを務めた荒井英治が弦楽四重奏版を編曲した。荒井はプログレッシブ・ロックの熱狂的ファンである。この版は荒井が参加するモルゴーア・クァルテットのアルバムに所収されている。
- 2012年9月9日に放送された「題名のない音楽会」で、シエナ・ウインド・オーケストラと和太鼓奏者の林英哲との共演で、「吉松版」をもとにした吹奏楽版が放送された。
- イタリアの作曲家マウリツィオ・ピサーティ(英語: Maurizio_Pisati)はピアノとパーカッションのために編曲、さらにオリジナル曲を加え「ゾーン=タルカス」という組曲にした。ピアニストの黒田亜樹によるCDが出ている。
影響
[編集]- 成毛滋がつのだひろや高中正義と結成したフライド・エッグ[5]が、アルバム『ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン(Dr. Siegel's Fried Egg Shooting Machine)』[6](1972年)に「タルカス」のパロディ曲「オケカス(Oke-Kus)」を収録した。
- ブラジルにバンド「タルカス」がいて、ELPとは異なったシンフォニックなプログレッシブ・ロックを演奏している。
- 長野県山ノ内町渋温泉街にスナック「タルカス」がある。店主がELPのファンで、カウンターにはタルカスの置物がある。「アド街ック天国」でも紹介された。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ イギリスの画家兼グラフィック・デザイナーのWilliam Nealの作である。
- ^ LPの見開きジャケットに描かれた絵物語によると、タルカスは火山の噴火によって卵から生まれ、大砲をもつ翼竜やバッタなど3匹の生き物を大砲で撃ち倒した後、マンティコアと戦って蠍の尾で目を突き刺され、血を流しながら海に入って行った。戦いの勝敗やマンティコアの運命は不明。解説はない。
- ^ 『レディース・アンド・ジェントルメン』(1974年)に収録。
- ^ CD"Then and Now" (Eagle Entertainment 1001-2)に収録された。
- ^ St. Mark's Churchのパイプ・オルガンと記されている。
- ^ 後にイエスのプロデューサーとして名を馳せた。
- ^ 初演と同様、指揮は藤岡幸夫、管弦楽演奏は東京フィルハーモニー交響楽団であるが新録音だった。
- ^ やはり初演と同様、指揮は藤岡幸夫、管弦楽演奏は東京フィルハーモニー交響楽団だった。
出典
[編集]- ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.93
- ^ ライナーノーツより。
- ^ Macan (2006), pp. 160–161.
- ^ “Emerson, Lake & Palmer – Tarkus (2012, CD) - Discogs”. discogs.com. 10 January 2022閲覧。
- ^ “Discogs”. 2024年12月19日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2024年12月19日閲覧。
引用文献
[編集]- Macan, Edward (2006). Endless Enigma: A Musical Biography of Emerson, Lake and Palmer. Chicago and La Salle: Open Court. ISBN 978-0-8126-9596-0