ティテュオス
ティテュオス(古希: Τιτυός, Tityos)は、ギリシア神話に登場する巨人である。オルコメノス[1]、あるいはミニュアースの娘エラレーとゼウスの子[2]。あるいは大地母神ガイアの子[3][4][5]。娘のエウローペーは海神ポセイドーンとの間にエウペーモス(アルゴナウタイの1人)を生んだ[6][7]。
女神レートーに対する狼藉のために冥府で罰を受けているとされ、その様子が英雄オデュッセウスや[8]、アイネイアースによって目撃されている[9]。
神話
[編集]ティテュオスは母エラレーの胎内にいたころから巨大な身体の持主で、ゼウスはヘーラーを恐れてエラレーを大地の下に隠し、ティテュオスのみを大地の中から出した[1]。そのため大地によって再び生み出された子といわれる[10]。
一説にティテュオスはヘーラーの命令で、ゼウスの子を身ごもったまま大地を放浪するレートーを襲ったが、ゼウスの雷に撃たれて死んだ[5]。
しかしより一般的な話では、ティテュオスはデルポイに向かうレートーの姿に欲情し、無理やりレートーの手を引いたが、レートーはアポローンとアルテミスに助けを求めたので、ティテュオスは両神の矢によって射殺された[1]。しかし彼を殺したのはアルテミスであるとも[11]、少年神アポローンであるともいわれる[12]。
この行為によってティテュオスは冥府で罰を受けており、身動きできず、巨大な身体を横たえ、2羽のハゲタカがティテュオスの肝臓を喰らっているとされる[8]。ヒュギーヌスによると、彼の肝臓を喰らっているのは1匹の竜で、月が昇ると肝臓は再生するので[5]、罰が永遠に続くという。
ホメーロスは、ラダマンテュスがティテュオスに会いに行くためにエウボイア島まで航海したと述べているが、詳しい伝承は伝えていない[13]。ストラボンは、エウボイア島の某所にティテュオスの母エラレーの名前にちなんで名づけられたエラリオンと呼ばれる洞窟があり、ティテュオスの英雄廟について教えてくれると述べている[14]。
ギャラリー
[編集]-
ホセ・デ・リベーラ『ティテュオス』(17世紀)プラド美術館所蔵
脚注
[編集]- ^ a b c アポロドーロス、1巻4・1。
- ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』P.155b。
- ^ 『オデュッセイアー』7巻324行。
- ^ 『オデュッセイアー』11巻576行。
- ^ a b c ヒュギーヌス、55話。
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第4歌43行-46行。
- ^ ロドスのアポローニオス『アルゴナウティカ』1巻179行-181行。
- ^ a b 『オデュッセイア』11巻576行-579行。
- ^ ウェルギリウス『アエネアース』6巻595行-600行。
- ^ ロドスのアポローニオス『アルゴナウティカ』1巻762行。
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第4歌90-92行。
- ^ ロドスのアポローニオス『アルゴナウティカ』1巻760行-761行。
- ^ 『オデュッセイアー』7巻323行-324行。
- ^ ストラボン、9巻3・14。
参考文献
[編集]- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- 『オデュッセイア/アルゴナウティカ』松平千秋・岡道男訳、講談社(1982年)
- ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- ホメロス『オデュッセイア(上)』松平千秋訳、岩波文庫(1994年)
- カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』植田兼義訳、中公文庫(1985年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年)