Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
コンテンツにスキップ

トランジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ルネ・ド・シャロンのトランジ

トランジフランス語: Transi)は、中世ヨーロッパの貴族や枢機卿などの墓標に用いられた、朽ちる過程の遺体の像やレリーフである。

概説

[編集]
ベルギーブッスワロン語版フランス語版英語版の16世紀のトランジ。"l’ome a moulons"(「ちりぢりなる人間」の意)と地元で呼ばれるジサンフランス語版(横臥彫刻)[1]。虫に喰われる様を意味する。

12世紀から16世紀のフランス語ではtransiは死者について使う名詞であり、その動詞形のtransirは「死にゆく」「通り過ぎる」という意味で用いられた[2]。元々はラテン語動詞transireに由来する。

中世からルネサンス期にかけてのヨーロッパで盛んに作られ、その多くは死後時間の経った死骸の姿で、体には穴があき、カエルなどが張りついていることが多い。 これらはメメント・モリ(死を想え)と呼ばれる教えにもとづいて、見た者に浮世のはかなさを説くものとなっている[3]

トランジには個人の墓碑以外に、「世のための見世物」となるモニュメント的な墓碑もある。高僧の墓碑では、傲慢の戒めや魂の救済のプロセスなど多数の警句やメッセージが込められ、普通の横臥像(ジサンフランス語版[1])や跪拝像と組み合わせた多層式墓碑が作られた[2]

トランジを作った人々は聖俗各界の要人や富裕層であり、生前の遺言によって死後に作られた。トランジの流行は14世紀の後半から16世紀までであり、ルネサンスの開花とともに消滅した。

脚注

[編集]
  1. ^ a b 松田徳一郎 2000.
  2. ^ a b 小池 1999, pp. 56–72.
  3. ^ 加賀野井 2012, pp. 76–78.

参考文献

[編集]
  • 小池寿子『死を見つめる美術史』ポーラ文化研究所、1999年。ISBN 978-4-938547-47-9 
  • 加賀野井秀一『猟奇博物館へようこそ : 西洋近代知の暗部をめぐる旅』白水社、2012年1月。ISBN 978-4-560-08186-0 
  • 松田徳一郎「gisant」『リーダーズ・プラス』研究社、2000年。ISBN 4767414350 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]