Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
コンテンツにスキップ

内務大臣 (イギリス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イギリスの旗 イギリス
内務大臣
Home Secretary
現職者
イヴェット・クーパー(第99代)
Yvette Cooper

就任日 2024年7月5日
所属機関内閣
所在地ウェストミンスター
指名首相
キア・スターマー
任命国王
チャールズ3世
任期国王陛下の仰せのままに
創設1782年3月7日 (242年前) (1782-03-07)
初代第2代シェルバーン伯爵ウィリアム・ペティ
俸給年額 154,089 GBP (2022)[1]
ウェブサイトwww.gov.uk

国王陛下の内務大臣(こくおうへいかのないむだいじん、正式名称:His Majesty's Principal Secretary of State for the Home Department、通称: Home Secretary)は、イギリス内閣の閣僚である。内務省を統括する。

歴史

[編集]

18世紀初頭よりイギリスの国務大臣(Secretary of State)は、北部担当国務大臣南部担当国務大臣という地域で分けた区分になっており、前者が北方外交(北欧諸国オランダドイツ諸国ロシアなどとの外交)を担当し、後者が内務と南方外交(フランススペインイタリア諸国・トルコなどとの外交)を担当していた[2]。しかし当時のイギリスで外交上重要なのは北方外交のみであり、南方外交は重要ではなかった。そのため南方省は本土担当の専門省にすべきという意見が強まった[3]

1782年に成立した第2次ロッキンガム侯爵内閣から職務別の区分がなされるようになり、北部省は外務省、南部省は内務省に改組された。そしてその長として外務大臣と内務大臣がそれぞれ設置された[4][2]。以降内務大臣は警察、監獄、工場、鉱山に関する官吏を統制し、また国王の恩赦に関する大権を輔弼する役割を担うことになった[5]

しかし歴史的には警察に関する限り内務大臣の権限はさほど強くなかった。イギリスでは各地の参事会が任命に関与する治安判事指揮下のコンスタブル英語版集団(警察官)が治安維持するという中世以来の古い体制が長くはびこり続けていたためである。19世紀以降には警察を内務大臣の強力な指揮権下に置く中央集権化改革が必要との認識が高まり、1829年の首都警察法英語版によって大ロンドン地区には内務大臣指揮下の統一警官隊(スコットランドヤード)が創設された。しかしロンドン外の警察中央集権化改革は遅々として進まなかった。1964年警察法英語版でようやく(中世以来の古い警察体制を温存させつつ)中央集権化の第一歩が踏み出され、内務大臣の権限強化が図られた。ついで1994年警察法、1996年警察法英語版で内務大臣の更なる権限強化が果たされた[6]

1996年警察法は国務大臣(内務大臣)の権限として警察の運用・構成に関する規則制定権、警察への査察権、警察予算の統制権、特別警察官(一部の地域でのみ警察官の機能を果たす補助警官)や見習い警察官の任命権、委任された場合の警官懲罰権などを認めている[7]

歴代の内務大臣

[編集]

所属政党

18世紀

[編集]
肖像 爵位名・氏名 在任期間 政党 内閣(首相所属政党)
1 第2代シェルバーン伯爵
ウィリアム・ペティ
1782年3月27日
- 1782年7月10日
ホイッグ党 第2次ロッキンガム侯爵内閣ホイッグ党
2 トマス・タウンゼンド 1782年7月10日
- 1783年4月2日
ホイッグ党 シェルバーン伯爵内閣ホイッグ党
3 ノース卿
フレデリック・ノース
1783年4月2日
- 1783年12月19日
トーリー党 第1次ポートランド公爵内閣(トーリー党
4 第3代テンプル伯爵
ジョージ・ニュージェント=テンプル=グレンヴィル
1783年12月19日
- 1783年12月23日
ホイッグ党 第1次小ピット内閣(トーリー党
5 初代シドニー子爵英語版
トマス・タウンゼンド
1783年12月23日
- 1789年6月5日
ホイッグ党
6 初代グレンヴィル男爵[注釈 1]
ウィリアム・グレンヴィル
1789年6月5日
- 1791年6月8日
トーリー党
7 ヘンリー・ダンダス英語版 1791年6月8日
- 1794年7月11日
トーリー党
8 第3代ポートランド公爵
ウィリアム・キャヴェンディッシュ=ベンティンク
1794年7月11日
- 1801年7月30日
トーリー党
アディントン内閣(トーリー党)

19世紀

[編集]
肖像 爵位名・氏名 在任期間 政党 内閣(首相所属政党)
9 第3代スタンマーのペラム男爵
トマス・ペラム
1801年7月30日
- 1803年8月17日
ホイッグ党 アディントン内閣(トーリー党
10 チャールズ・フィリップ・ヨーク英語版 1803年7月30日
- 1804年5月12日
トーリー党
11 第2代ハークスベリー男爵
ロバート・ジェンキンソン
1804年5月12日
- 1806年2月5日
トーリー党 第2次小ピット内閣(トーリー党
12 第2代スペンサー伯爵
ジョージ・スペンサー
1806年2月5日
- 1807年3月25日
ホイッグ党 グレンヴィル男爵内閣(ホイッグ党
13 初代リヴァプール伯爵[注釈 2]
ロバート・ジェンキンソン
1807年3月25日
- 1809年11月1日
トーリー党 第2次ポートランド公爵内閣(トーリー党
14 リチャード・ライダー英語版 1809年11月1日
- 1812年6月8日
トーリー党 パーシヴァル内閣(トーリー党
15 初代シドマス子爵
ヘンリー・アディントン
1812年6月8日
- 1822年1月17日
トーリー党 リヴァプール伯爵内閣(トーリー党
16 ロバート・ピール 1822年1月17日
- 1827年4月10日
トーリー党
17 ウィリアム・スタージェス・ボーン英語版 1827年4月30日
- 1827年7月16日
トーリー党 カニング内閣(トーリー党
18 第3代ランズダウン侯爵
ヘンリー・ペティ=フィッツモーリス
1827年7月16日
- 1828年1月22日
ホイッグ党
ゴドリッチ子爵内閣(トーリー党
19 ロバート・ピール 1828年1月22日
- 1830年11月22日
トーリー党 第1次ウェリントン公爵内閣(トーリー党
20 第2代メルバーン子爵
ウィリアム・ラム
1830年11月22日
- 1834年7月16日
ホイッグ党 グレイ伯爵内閣(ホイッグ党
21 第4代ベスボロー伯爵
ジョン・ポンソンビー
1834年7月16日
- 1834年11月15日
ホイッグ党 第1次メルバーン子爵ホイッグ党
22 初代ウェリントン公爵
アーサー・ウェルズリー
1834年11月15日
- 1834年12月15日
保守党 第2次ウェリントン公爵保守党
23 ヘンリー・ゴールバーン英語版 1834年12月15日
- 1835年4月18日
保守党 第1次ピール内閣(保守党
24 ジョン・ラッセル卿 1835年4月18日
- 1839年8月30日
ホイッグ党 第2次メルバーン子爵内閣(ホイッグ党
25 初代ノーマンビー侯爵
コンスタンティン・フィップス
1839年8月30日
- 1841年8月30日
ホイッグ党
26 第2代準男爵
サー・ジェームズ・グラハム
1841年9月6日
- 1846年6月30日
保守党 第2次ピール内閣(保守党
27 第2代準男爵
サー・ジョージ・グレイ
1846年7月8日
- 1852年2月23日
ホイッグ党 第1次ラッセル内閣(ホイッグ党
28 スペンサー・ホレーショ・ウォルポール 1852年2月27日
- 1852年12月19日
保守党 第1次ダービー伯爵内閣(保守党
29 第3代パーマストン子爵
ヘンリー・ジョン・テンプル
1852年12月28日
- 1855年2月6日
ホイッグ党 アバディーン伯爵内閣(ピール派
30 第2代準男爵
サー・ジョージ・グレイ
1855年2月8日
- 1858年2月26日
ホイッグ党 第1次パーマストン子爵内閣(ホイッグ党
31 スペンサー・ホレーショ・ウォルポール 1858年2月26日
- 1859年3月3日
保守党 第2次ダービー伯爵内閣(保守党
32 トマス・ソセロン=エストコート英語版 1859年3月3日
- 1859年6月18日
保守党
33 第2代準男爵
サー・ジョージ・コーンウォール・ルイス英語版
1859年6月18日
- 1861年7月25日
自由党 第2次パーマストン子爵内閣(自由党
34 第2代準男爵
サー・ジョージ・グレイ
1861年7月25日
- 1866年6月28日
自由党
第2次ラッセル伯爵内閣(自由党)
35 スペンサー・ホレーショ・ウォルポール 1866年7月6日
- 1867年5月17日
保守党 第3次ダービー伯爵内閣(保守党
36 ゲイソン・ハーディ 1867年5月17日
- 1868年12月3日
保守党
第1次ディズレーリ内閣(保守党)
37 ヘンリー・ブルース 1868年12月9日
- 1873年8月9日
自由党 第1次グラッドストン内閣自由党
38 ロバート・ロー英語版 1873年8月
- 1874年2月20日
自由党
39 リチャード・クロス 1874年2月21日
- 1880年4月23日
保守党 第2次ディズレーリ内閣保守党
40 サー・ウィリアム・ヴァーノン・ハーコート 1880年4月28日
- 1885年6月23日
自由党 第2次グラッドストン内閣自由党
41 リチャード・クロス 1885年6月24日
- 1886年2月1日
保守党 第1次ソールズベリー侯爵内閣保守党
42 ヒュー・チルダース 1886年2月6日
- 1886年7月25日
自由党 第3次グラッドストン内閣自由党
43 ヘンリー・マシューズ 1886年8月3日
- 1892年8月15日
保守党 第2次ソールズベリー侯爵内閣保守党
44 ハーバート・ヘンリー・アスキス 1892年8月18日
- 1895年6月25日
自由党 第4次グラッドストン内閣(自由党
ローズベリー伯爵内閣(自由党)
45 第5代准男爵
サー・マシュー・ホワイト・リドリー英語版
1895年6月29日
- 1900年11月12日
保守党 第3次ソールズベリー侯爵内閣(保守党

20世紀

[編集]
肖像 爵位名・氏名 在任期間 政党 内閣(首相所属政党)
46 チャールズ・リッチー英語版 1900年11月12日
- 1902年7月12日
保守党 第3次ソールズベリー侯爵内閣(保守党
47 エレタス・エイカーズ=ダグラス英語版 1902年7月12日
- 1905年12月5日
保守党 バルフォア内閣(保守党
48 ハーバート・グラッドストン 1905年12月11日
- 1910年2月19日
自由党 キャンベル=バナマン内閣(自由党)
アスキス内閣(自由党)
49 ウィンストン・スペンサー=チャーチル 1910年2月19日
- 1911年10月24日
自由党
50 レジナルド・マッケナ 1911年10月24日
- 1915年5月27日
自由党
51 サー・ジョン・サイモン 1915年5月27日
- 1916年1月12日
自由党 アスキス挙国一致内閣(自由党)
52 ハーバート・サミュエル 1916年1月12日
- 1916年12月7日
自由党
53 初代ケイヴ子爵[注釈 3]
ジョージ・ケイヴ英語版
1916年12月11日
- 1919年1月14日
保守党 ロイド・ジョージ挙国一致内閣自由党
54 エドワード・ショート英語版 1919年1月14日
- 1922年10月23日
自由党
55 ウィリアム・ブリッジマン英語版 1922年10月25日
- 1924年1月22日
保守党 ボナー・ロー内閣(保守党
第1次ボールドウィン内閣(保守党)
56 アーサー・ヘンダーソン 1924年1月23日
- 1924年11月4日
労働党 第1次マクドナルド内閣(労働党
57 初代準男爵
サー・ウィリアム・ジョインソン=ヒックス英語版
1924年11月7日
- 1929年6月5日
保守党 第2次ボールドウィン内閣(保守党
58 ジョン・ロバート・クラインス 1929年6月8日
- 1931年8月26日
労働党 第2次マクドナルド内閣(労働党
59 サー・ハーバート・サミュエル 1931年8月26日
- 1932年10月1日
自由党 マクドナルド挙国一致内閣(挙国労働機構
60 第2代準男爵
サー・ジョン・ギルモア英語版
1932年10月1日
- 1935年6月7日
統一党英語版
61 サー・ジョン・サイモン 1935年6月7日
- 1937年5月28日
挙国派自由党英語版 第3次ボールドウィン内閣(保守党
62 第2代準男爵
サー・サミュエル・ホア英語版
1937年5月28日
- 1939年9月3日
保守党 チェンバレン内閣(保守党
63 サー・ジョン・アンダーソン英語版 1939年9月4日
- 1940年10月4日
無所属
(挙国一致政府英語版)
チェンバレン戦時内閣(保守党
チャーチル戦時内閣(保守党
64 ハーバート・モリソン 1940年10月4日
- 1945年5月23日
労働党
65 サー・ドナルド・サマーヴィル英語版 1945年5月25日
- 1945年7月26日
保守党 第2次チャーチル暫定内閣(保守党
66 ジェイムズ・シューター・イーデ英語版 1945年8月3日
- 1951年10月26日
労働党 アトリー内閣(労働党
67 サー・デイヴィッド・マクスウェル・ファイフ 1951年10月27日
- 1954年10月19日
保守党 第3次チャーチル内閣(保守党
68 グウィリム・ロイド・ジョージ 1954年10月19日
- 1957年1月14日
挙国派自由党英語版
イーデン内閣(保守党
69 ラブ・バトラー 1957年1月14日
- 1962年7月13日
保守党 マクミラン内閣(保守党
70 ヘンリー・ブローク英語版 1962年7月14日
- 1964年10月16日
保守党
ダグラス=ヒューム内閣(保守党
71 サー・フランク・ソスキス英語版 1964年10月18日
- 1965年12月23日
労働党 第1次~第2次ウィルソン内閣(労働党
72 ロイ・ジェンキンス 1965年12月23日
- 1967年11月30日
労働党
73 ジェームズ・キャラハン 1967年11月30日
- 1970年6月19日
労働党
74 レジナルド・モードリング英語版 1970年6月20日
- 1972年7月18日
保守党 ヒース内閣(保守党
75 ロバート・カー英語版 1972年7月18日
- 1974年3月4日
保守党
76 ロイ・ジェンキンス 1974年3月5日
- 1976年9月10日
労働党 第3次~第4次ウィルソン内閣(労働党
キャラハン内閣(労働党
77 マーリン・リース英語版 1976年9月10日
- 1979年5月4日
労働党
78 ウィリアム・ホワイトロー 1979年5月4日
- 1983年6月11日
保守党 第1次~3次サッチャー内閣(保守党
79 レオン・ブリタン 1983年6月11日
- 1985年9月2日
保守党
80 ダグラス・ハード 1985年9月2日
- 1989年10月26日
保守党
81 デイヴィッド・ワディントン英語版 1989年10月26日
- 1990年11月28日
保守党
82 ケネス・ベイカー英語版 1990年11月28日
- 1992年4月10日
保守党 第1次~2次メージャー内閣(保守党
83 ケネス・クラーク英語版 1992年4月10日
- 1993年5月27日
保守党
84 マイケル・ハワード 1993年5月27日
- 1997年5月2日
保守党
85 ジャック・ストロー 1997年5月2日
- 2001年6月8日
労働党 第1次ブレア内閣(労働党

21世紀

[編集]
肖像 爵位名・氏名 在任期間 政党 内閣(首相所属政党)
86 デイヴィッド・ブランケット英語版 2001年6月8日
- 2004年12月15日
労働党 第2次~3次ブレア内閣(労働党
87 チャールズ・クラーク英語版 2004年12月15日
- 2006年5月5日
労働党
88 ジョン・リード 2006年5月5日
- 2007年6月27日
労働党
89 ジャッキー・スミス 2007年6月28日
- 2009年6月5日
労働党 ブラウン内閣労働党
90 アラン・ジョンソン 2009年6月5日
- 2010年5月11日
労働党
91 テリーザ・メイ 2010年5月12日
- 2016年7月13日
保守党 第1次~2次キャメロン内閣保守党
92 アンバー・ラッド 2016年7月13日
- 2018年4月29日
保守党 第1次メイ内閣保守党
第2次メイ内閣保守党
93 サジド・ジャヴィド 2018年4月30日
- 現職
保守党
94 プリティ・パテル 2019年7月24日
- 2022年9月6日
保守党 ジョンソン内閣保守党
95 スエラ・ブレイバーマン英語版 2022年9月6日
- 2022年10月19日
保守党 トラス内閣保守党
96 グラント・シャップス英語版 2022年10月19日
- 2022年10月25日
保守党
97 スエラ・ブレイバーマン英語版 2022年10月25日
- 2023年11月13日
保守党 スナク内閣保守党
98 ジェームズ・クレバリー 2023年11月13日
- 2024年7月5日
保守党
99 イヴェット・クーパー 2024年7月5日
- 現職
労働党 スターマー内閣労働党

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 在職中の1790年にグレンヴィル男爵に叙爵される。
  2. ^ 在職中の1808年にリヴァプール伯爵に叙爵される。
  3. ^ 在職中の1918年にケイヴ子爵に叙爵される。

出典

[編集]

参考文献

[編集]
  • 今井宏 編『イギリス史〈2〉近世』山川出版社〈世界歴史大系〉、1990年。ISBN 978-4634460201 
  • 神戸史雄『イギリス憲法読本』丸善出版サービスセンター、2005年。ISBN 978-4896301793 
  • ジョン・マリオット英語版 著、占部百太郎 訳『英国の憲法政治慶応義塾出版局、1914年。ASIN B0098TWQW4https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/980830 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]