IEC 60086
IEC 60086 は、国際電気標準会議 (IEC) が定めた一次電池に関する規格である。以下の文書からなる。
- IEC 60086-1 PRIMARY BATTERIES - PART 1: GENERAL
- IEC 60086-2 PRIMARY BATTERIES - PART 2: PHYSICAL AND ELECTRICAL SPECIFICATIONS
- IEC 60086-3 PRIMARY BATTERIES - PART 3: WATCH BATTERIES
- IEC 60086-4 PRIMARY BATTERIES - PART 4: SAFETY STANDARD FOR LITHIUM BATTERIES
- IEC 60086-5 PRIMARY BATTERIES - PART 5: SAFETY OF BATTERIES WITH AQUEOUS ELECTROLYTE
日本では、「JIS C 8500 一次電池通則」(IEC 60086-1に相当)などとして国家規格化されている。
記号
[編集]IEC 60086-1 と JIS C 8500 で、電池の形状・寸法・電池系などを表す記号が定められている。以下では、規格以外の情報も適宜補足する。
層数
[編集]積層電池(内部で複数の電池が直列につながれている電池)は、内部の電池の数を表す数字で始まる。単電池は何も付けない。
電池系
[編集]ラテン文字1文字(一部2文字)で、電池系(電池の化学構造)を表す。表は、参考に二次電池の記号も記す。 公称電圧は電池系で決まるが、実際の電圧は公称電圧より高い電圧で始まり、徐々に降下する。積層電池なら電圧は層数倍になる。
一般的なリチウム電池は二酸化マンガンリチウム電池 (C) だが、単3形・単4形の「リチウム乾電池」は硫酸鉄リチウム電池 (F) である。オキシライド乾電池はニッケル系一次電池 (Z) に分類される。
記号 | 電池系 | 正極 | 電解液 | 負極 | 公称電圧 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一次電池 | なし | マンガン乾電池 | 二酸化マンガン | 塩化亜鉛水溶液 | 亜鉛 | 1.5 |
A | 空気電池 | 酸素 | 塩化アンモニウム・塩化亜鉛水溶液 | 亜鉛 | 1.4[1][2] | |
B | フッ化黒鉛リチウム電池 | フッ化黒鉛 | 非水系有機電解液 | リチウム | 3.0 | |
C | 二酸化マンガンリチウム電池 | 二酸化マンガン | 非水系有機電解液 | リチウム | 3.0 | |
E | 塩化チオニルリチウム電池 | 塩化チオニル | 非水系有機電解液 | リチウム | 3.6 | |
F | 硫化鉄リチウム電池 | 硫化鉄 | 非水系有機電解液 | リチウム | 1.5 | |
G | 酸化銅リチウム電池 | 酸化銅(II) | 非水系有機電解液 | リチウム | 1.5 | |
L | アルカリ乾電池 | 二酸化マンガン | アルカリ水溶液 | 亜鉛 | 1.5 | |
P | 空気亜鉛電池 | 酸素 | アルカリ水溶液 | 亜鉛 | 1.4 | |
S | 酸化銀電池 | 酸化銀 | アルカリ水溶液 | 亜鉛 | 1.55 | |
Z | ニッケル系一次電池 | オキシ水酸化ニッケル | アルカリ水溶液 | 亜鉛 | 1.5 | |
二次電池 | H | ニッケル水素電池 | ニッケル酸化物 | アルカリ水溶液 | 水素吸蔵合金 | 1.2 |
K | ニッケルカドミウム電池 | ニッケル酸化物 | アルカリ水溶液 | カドミウム | 1.2 | |
IC | リチウムイオン電池 | リチウム複合酸化物 | 非水系有機電解液 | 炭素 | 3.7 | |
PB | 鉛蓄電池 | 二酸化鉛 | 希硫酸 | 鉛 | 2.0 |
形状
[編集]ラテン文字1文字で形状を表す。
寸法
[編集]数字の列で寸法を表す。正式に規格で定められているのは上限で、下限は参考値となっている。いくつかの寸法は、固有の記号が決められている。
固有の記号には、以下のようなものがある。
記号 | 寸法 | 通称 | |||
---|---|---|---|---|---|
直径 | 長さ | 日本 | アメリカ | ヨーロッパ | |
R03 | 10.5 | 44.5 | 単4形 | AAA | micro |
R1 | 12 | 30.2 | 単5形 | N | lady |
R6 | 14.5 | 50.5 | 単3形 | AA | mignon |
R14 | 26.2 | 50 | 単2形 | C | baby |
R20 | 34.2 | 61.5 | 単1形 | D | mono |
R41 | 7.9 | 3.6 | (ボタン形) | ||
R43 | 11.6 | 4.2 | |||
R44 | 11.6 | 5.4 | |||
R48 | 7.9 | 5.4 | |||
R54 | 11.6 | 3.05 | |||
R55 | 11.6 | 2.05 | |||
R70 | 5.8 | 3.6 | |||
R-1/3N | 11.6 | 10.8 | (リチウム 電池) | ||
R123A | 17 | 34.5 | |||
6F22 | 48.5×26.5×17.5 | 9V形 006P形 |
9V | 6F22 |
- 廃れた規格が多いため、数字は飛び飛びになっている。
- R1 - R20(単5形 - 単1形)は、細い順になっている(「単○形」の数字は容量順なので順序が一致しない)。1より細い電池は、番号が足りなくなったため、R03などとなった。
- それ以降は申請順のため、記号とサイズの間に規則的な関係はない。
固有の記号が定められていない寸法は、数値で表す。形状がR(円形)の場合、ミリメートルを単位とした直径と、0.1ミリメートルを単位とした長さ(または厚み)を続け、3 - 5桁の数字で表す。たとえば、2032なら、直径20ミリメートル、厚み3.2ミリメートルである。
直径と厚みは、以下の値が定められている。ただし、数値は切捨てで表示するため、いくつかは規格の寸法と表示する寸法が異なっている。実際の寸法をカッコ内に記す。
- 直径 - 4(4.8)、5(5.8)、6(6.8)、7(7.9)、9(9.5)、10、11(11.6)、12(12.5)、16、20、23、24(24.5) ミリメートル
- 厚み - 1.2、1.6、2.0、2.5、3.0、3.6、5.0 ミリメートル
グレード
[編集]マンガン乾電池の単1形 - 単3形に限り、この後にさらに1文字のラテン文字が続き、グレードを表す。
日本で生産されているのはPとPUである。
例
[編集]- LR6は、単電池、アルカリ電池、円形、単3型である。
- CR2026は、単電池、二酸化マンガンリチウム電池、円形、直径20ミリメートル、厚み2.6ミリメートルである。
- 6F22は、6層電池、マンガン電池、平形、9V形である。
出典
[編集]- ^ 梅尾良之著、『新しい電池の科学』、講談社、2006年9月20日第1刷発行、ISBN 4062575302
- ^ INTERNATIONAL STANDARD IEC 60086-1(pdf、Tenth edition 2006-12、2011年9月26日参照)